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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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仲直り

思い返せば二人でこうやって喧嘩したのは初めてだと思う。それもそうだ、カリンは5歳でシュヴァリエ公爵家に引き取られて僕専属の侍女と言われてからひたすら尽くしてくれてきた。歳は7つの差だからちょっと歳の離れた兄妹って感じでもあるけど、いつも一歩引いて主従の関係を貫いてくれていた。そのカリンと初めての喧嘩、それもあんな場所で・・・。ヴィルヘルミナは必ずはアナスタシアに報告するだろう・・・嗚呼、大人気なかったな、とルディは頭を痛めた。


ー何であんなに叱っちゃったんだろう?とにかく、鉱山内でカリンが髪を切り落とした時、あの短刀を取り上げるのが間に合わなかったのが腹立たしくて・・・。あれ?なんかおかしいな、それからあの綺麗な銀の髪を小鬼族に惜しげも無く差し出すカリンになんかイラっときて・・・そうだよ。指輪や耳飾りなんか幾らでも作ってあげるのに、何だってこう勝手に行動するんだろうー



ー叱られた・・・指輪の代わりなんか作れるって言われた。ルディ様はわかってない、私がどんなに大事にしてるか・・・ん?何でそんなに大事に思うんだろう。第一これを作ったのはルディ様だからどうしようがルディ様の意思に従わなければいけなかったんだ・・・でも、だって!光る物が好きって言われて沢山装飾品つけて行ったのに、よりによってこの対の魔具を欲しがられてあの時なんか、カチンときてしまった。あれ?なんでだろう。あ〜あ、呆れてるだろうなルディ様。私、どうなるんだろう・・・う、なんかまた視界がぼやけて・・・ー


「ごめんなさい。」


「え?」


「ごめんなさい、ルディ様。ごめんなさ〜い」


困った、どうしよう涙が止まらないどうしようと、泣きながらカリンは考えるルディに見放されたら、もういらないっていわれたら・・・さっきはヴィルヘルミナの前だからあまり言われなかったが離れに帰ったらハヴェルンに帰れとか言われるかもしれない・・・。


ーやだ、嫌だそんなのー


まだ王宮内の廊下で突然立ち止まり年相応の子どもらしく泣き出したカリンにルディはギョッとした。


「え?ち、ちょっとカリンどうしたの⁈」


普段ここまで感情を露わにするのを見たことがない、とにかく泣き止んでもらわないと困ると声をかければかけるほど泣き声が大きくなる。次第に人目も集まってきた。こうなれば仕方ない、ルディはカリンの膝の裏と背中を抱えるとその場で移動術を使った。泣いているカリンは何をされたかわかってないようだ、ルディに抱きかかえられたまま離れ近くの温室に二人は移動した。


「カリン!カリンってば!」


「え?あれ、ルディ様お顔が近いですよ。」


はああぁぁ〜っと盛大な溜息をついた主を見て更に不思議そうな顔をする。


「落ち着いた?」


「はっ!す、すみません私こんな場所で・・・って、あら?ここ、どこですか?」


ルディはそのままカリンを抱えて温室内のベンチにカリンを腰掛けさせた。

そしてカリンの両肩を掴んでふるふると震えている。


「くっ・・・は、あはは。」


突然笑い出したルディに戸惑うカリンだが落ち着いて周りを見ればどうやら離れ近くの温室である。なぜいつの間に?そして目の前の主はまだ笑っている。


「あ〜あ、負けたよカリン。アルベリヒ殿下の言う通りだ、君はハヴェルン一の怒らせると怖い子だよ。」


「なんですかそれ!アルベリヒ様ってば私の事そんな風に⁉︎」


さっきまで泣いていたのが今度は自国の王太子に腹を立てている。頬の涙の跡を拭ってやりながら問いかける。


「なんであんなに突然ないたのさ?」


上目遣いでルディの金の瞳を見る。そこには怒りや呆れはないただ優しく見下ろしている。


「もう、お側に置いていただけないと思ったのです。私が馬鹿な事をしたので・・・。」


「なんで、君を手放すわけないじゃないか。」


「でも!やっぱりルディ様がお叱りになるのは正しいです。この魔具はルディ様が作られたものですから・・・これを渡すのがきっと正しかったんです。」


見上げていた瞳がしょんぼりと地面を見つめ始めた。なんだ、そうか。僕が叱ったから色々考えて自分が暇を出される所まで先走っちゃったのか。


「ねぇ、カリン。」


「はい。」


「この対の魔具は確かに僕が作って片方は君にあげたんだ。だから、君が手放したくなければそれも正しいよ。それに、それくらい大切に思ってくれてるなんて嬉しかったよ。」


「でも・・・」


「うん。君の髪は残念に思ってる、ずっと見てきたからね。そういう意味では君の髪はその指輪を大事に思うのと同じくらい僕にとって大切なものだったんだ。しかも、ただ切り落としただけじゃない小鬼族の物になったんだよ。まあ、結果的には良かったみたいだけど。とりあえずさ、言いたいことがあるんだ。」


ルディは屈んで目線をカリンに合わせその両手を取った。


「ごめん。」「ごめんなさい」


ほぼ同時にお互いは謝った。それからふっと、二人でくすくす笑う。


「やっと笑った」


カリンの肩で切り揃えられた髪をくしゃくしゃと撫で回しルディが笑う。カリンはその仕草も嬉しくてますます笑った。


「成年の儀までには結い上げれるよう伸びるといいね。」


「はい!」


二人は仲良く手を繋ぎ温室から離れに帰って行った。もちろん、一部始終ヴィルヘルミナ侍女隊に見られていたのは二人は知らない。

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