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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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初登庁の日

引越しも無事片付き、今日からはいよいよ仕事が始まる。養父からは王太子の元へ行けば後は他の者が教えてくれる手筈だと言われて王宮に来たものの、殿下の居場所がわからない。身近にいた警備兵に身分証を見せ部屋を尋ねるとすぐに事務方を呼んで案内するよう頼んでくれた。警備兵に礼を言うと一瞬驚いた顔をして会釈をしてくれた。事務官のフルタムと名乗る女性が


「ここでは、魔法師は警備兵に礼など言わないのですよ通常。王宮勤めの魔法師は魔法魔術学校のトップクラスか貴族の魔力持ちがコネで入っていますからね。」


と、事務的に言う。


「そういえば、アルベリヒ王太子殿下付きの様ですが、所属が未定になっていますね。」


書類を見ながら話しかけられる。


「えーっと、どういう意味なんでしょう?もしかして人員は足りてるとか・・・」


「いえ、王太子様ともなればいくら人員があっても足りないくらいです。ただ、登庁日に未定とは・・・。向こうの事務官のミスかもしれません。あ、それから。」


人気がまばらになった廊下の隅で振り返りそれまでよりもより静かな口調で忠告を受けた。


「貴方は、魔法魔術学校を15で卒業資格を取得。その後2年は、屋敷預かりの身で力をコントロールし、その魔力も桁外れな上、卒業後はウルリヒへの留学。更にご両親は魔法魔術技師長と特別国家A級魔法癒術技師、とくればこの先貴方を妬みいわれのない恨みを買う事も当然想定されます。私がこの未定に気を取られるのはそのためです。よろしいですか?先程、警備兵に礼をしたように初心を忘れず決してご自分の立場身分におごることのないよう、周りに何を言われても感情的にならぬようお仕事に励んでください。」


そう言うとまた歩き始める。妬み?今までの自分に縁のない言葉に違和感を覚えながらも付いて行く。


「あの、王太子付きになるとどんな仕事があるんでしょう?」


「・・・そうですね、ガウスさんは魔法師ですから殿下の警護ですとか、あとは殿下が身につける魔具を研究ですとか。私は普通の事務官ですので魔法師の方の仕事内容は詳しくないんです。魔法師のお仕事は個人個人で魔力の差もありますし、そもそも魔力持ちの方と我々普通の人間の仕事内容は根本から違いますので内密なんです。殿下の事務官に会われたらその辺りを書いた誓約書にサインもしなきゃいけないと思います、大変ですよ魔法師の方は。あ、着きました。あの扉の中が事務室になっています。ここからはお一人で大丈夫ですよね?」


「あ、はい。あのありがとうございました。」


お礼を述べると無表情だったフルタムが微笑んだ。


「色々あるでしょうが頑張って下さい。」


初めての職場、初めての仕事に緊張していたルディはこの笑顔に少しホッとした。

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