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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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侯爵家の秘密

ウェスティン侯爵家のパーティーの後、ヨハンナは父に呼ばれその日起きた出来事を伝えられた。彼女は王太子の命令通り屋敷を出ず、行く末を案じながら見守る日が始まった。王宮内では王太子を筆頭に宰相ら主だった役職の貴族が集まり元侯爵夫人とその子息である二人の息子についての事柄を話し合う会議が始まりバイラル秘書官は今まで以上に多忙になっていた。


第二王子オーランドの指揮の元、バーバラ元侯爵夫人の数ある愛人関係、また昔そうだった貴族や商人、使用人まで調べ上げられ彼女の二人の息子がウェスティン侯爵の血筋でない事を調べ上げられた。そして侯爵はまず自分から出向きヨハンナもバーバラも知らない秘密を王太子に打ち明けた。


「隠し子がいるというのか?」


予想はしていたが本人が告白に来るとは思ってはいなかった。それは、会議に忙しくほんの隙を突いたひと時の休息の時間に無理を承知で訪れた侯爵本人がまず打ち明けておきたいと言ってきた。話によるとバーバラとの結婚以前に落ちぶれた男爵家の娘を侍女として雇っていた、その娘と一緒になりたいという願いはあと少しで叶うはずが横から伯爵家の養女になったバーバラが入り込み巧みな話術で両親に取り入り侯爵夫人の座を手に入れたのだ。侍女として仕えていた娘はバーバラとの婚約が決まると屋敷を去り実家へと戻ったが何しろ名ばかりの男爵家の様なもの、彼女は新しい仕事先を見つけ働きに出ていた。


ヨハンナが生まれるとバーバラはそれまでと違い自由奔放に過ごす様になり侯爵も彼女の存在は公式な場でのパートナーとして扱う程度で元々冷めていた結婚が更に気持ちは離れていった。そこへ、彼女の長男が誕生したが夫妻にそのような出来事が起こる覚えがあるわけがなく、産まれた男児に一度は喜んだ侯爵の両親だがその子を一目見て息子の子ではないと悟ったのだろう。そして、バーバラの策略に気づいた彼らは息子にも知らせず男爵令嬢を探し出し、小さな屋敷を用意しそこに住まわせた。そしていまもその娘を想い続ける息子にそのことを告げ更にバーバラとの婚姻をさせたことを詫び秘密裏に息子と男爵令嬢との逢瀬を黙認しバーバラに気づかれないよう細心の注意を払った。その一年後男爵令嬢は男児にを産む。正真正銘侯爵の血を引く息子だった。


しかし、この事がバーバラに知れると何をされるが分からないと考えた侯爵たちは息子が一歳を迎えるのを待ち長旅に耐えれる様になると娘ヨハンナ・ベルの侍女とその息子として異国へと送り出したのだ。ヨハンナは父の愛人という立場にあるとは知らず男爵令嬢によく懐き母の様に慕った。また、自分と似た髪色をした腹違いの弟をそうとは知らず可愛がった。こうしてヨハンナは異国の寄宿舎に入ってからも休みには二人の待つ小さな家に帰り安定した子供時代を過ごし学校では教養と礼儀作法を身に付けたのだ。


「で、その親子は今どうしている?」


「私の両親が用意した屋敷に戻り暮らしております。」


「バーバラ元夫人との離婚も成立し阻むものはなくなったな。望めば婚姻は認められるだろう。」


「はい、しかしまだヨハンナに報告しておりませんし。あれは母親をたいそう嫌っておりました、そこへ私まで裏切っていたとしれば・・・」


「それは、そちらの家族の問題だ。自分で片を付けてくれ、しかし息子がいるなら跡取りの問題はなさそうだな。とにかくこの事はもちろん議題に上げる。ヨハンナは見たところ賢い娘だ、すぐは無理だとしても解ってくれるのではないか?」


侯爵は犯した唯一の罪を告白し、後は査問会に一任すると告げ下がって行った。


「・・・〜あ〜あ、会議会議でやっと一息付きに来たのにゆっくりできんかったな。」


ソファから立ち上がり伸びをしながらアルベリヒが愚痴を言う。


「ですが、貴重な証言を本人から告げに来て下さったのですから。オーランド殿下方のお仕事が一つ減りましたわ、さあこちらをどうぞ召し上がって下さいませ。」


「ん?なんだこれは。」


「ハプトマン嬢がお忙しい殿下方の為に特性ハーブティーをブレンドして下さいました。私も頂きましたが疲れがよく取れましたので。」


差し出された茶器を無作法に立ちったまま飲み干す。


「ふん、味は悪くないな。効果があれば尚良いが、では行ってくる。」


茶器をバイラルに返しそのまま上着を着ながら部屋がを出る。


「いってらっしゃいませ。」


バイラルは頭を下げ見送った。


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