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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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ウェスティン侯爵令嬢

ウェスティン侯爵家は華やかに飾り付けられていた。大広間を見れば上位貴族階級が主だって招かれているようだ。カリンとルディはなんで自分達まで招かれたのか疑問だったが、受付を済ませ侍女にまず侯爵夫妻のところに案内された後なんとなくわかった。一つは噂に上ったカリンを見定めること、それから王太子付きの魔法師とお近づきになるのが目的のようだ。


「ガウス国家魔法魔術技師、ハプトマン嬢。今宵は娘の誕生祝いにわざわざ起こしいただきありがとう。気軽なパーティーだ、楽しんでいってくれたまえ。」


「お招きありがとうございます侯爵。まずはご令嬢にお祝いを述べたいのですが。」


「それなら私が案内しますわガウス国家魔法魔術技師殿。こちらがハプトマン嬢ですのね。なんて愛らしい娘さんでしょう、さあこちらですわ。」


夫人はカリンを頭から足元まで舐めるように見るとどうやらまだ未成年であり、確かに愛らしいが今宵の敵ではないといった感想を持ったらしい。夫人に案内された先には椅子に腰掛けた赤茶の髪を娘らしく結い上げクリーム色の生地に小花柄の模様を散らした柄で裾へ行くほど華やかで柄も大きくなっているドレスで着飾られたウェスティン侯爵令嬢がいた。身に付けた宝飾品も高級だろうがけして主張していない、灰色の瞳は憂いを帯びておりまさに清楚という言葉が似合う女性だった。母親に客人を紹介されると椅子から立ち上がり礼をとった。


「お噂はかねがねお聞きしておりますわ。ガウス国家魔法魔術技師様、今宵は私のためにお越しいただきありがとうございます。そちらが今、王宮で噂の子鹿ちゃんですのね?本当に愛らしいお嬢さんですこと。私とも是非仲良くしていただきたいですわ。」


「本日はお招きありがとうございます、ヨハンナ・ベル様。お誕生日おめでとうございます。私はアレクシア・カーテローゼ・ハプトマンでございます。カリンとお呼びくださいませ。」


「カリンね。私は長い間外国にいたのでこちらに知り合いが少ないの、また後でゆっくりお話ししたいわ。お客様にご挨拶が済んだらまたお会いしましょう。」


「はい、ありがとうございます。」


ヨハンナ・ベルは本当に嫌味なくカリンを気に入ったようだ。やはりカリンは不思議と人を魅了するらしい。挨拶を終えた二人のヨハンナへの印象は悪くなかった。あれで、母親の問題さえなければ今頃はもう嫁ぎ先も決まっていてもおかしくないのにそれが哀れに思われる。二人がなるだけ目立たない位置に移動していると後ろで歓声が湧いた。王太子とオーランドが到着したのだ。振り返ると満面の笑みでいそいそと出迎えに行く夫人とその後ろを儚げな微笑みを貼り付けてついて行くヨハンナが見えた。


給仕に飲み物を貰い壁の花と化した二人が見ていると夫人は滑稽なほどはしゃいだようすで娘を紹介し更に二人の息子も紹介しているようだ。確かに息子たちはどう見ても侯爵家の血筋には見えない容姿をしていた。


「ヨハンナ様、お元気ないですね。」


「そうだね、でも君と話してる時は何だが肩の力が抜けたように見えたよ。」


「本当ですか?私も近侍のお仕事・・・と、いうか子鹿会とかいう集まりの中のご令嬢を見てきましたけどヨハンナ様は外国で学ばれたせいか他のご令嬢様とは違って見えます。お幸せになられるといいのですが。」


王太子兄弟が揃ったところで改めて正式に侯爵が開会の言葉を述べる。それを合図に音楽が始まりダンスを踊りはじめる。格式ばったものではないがやはり最初は王太子がヨハンナをダンスに誘った。その二人の周りに若い男女やシュヴァリエ侯爵夫妻も加わり踊りの輪が回り始めた。


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