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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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魔法使いの馬車

夕刻になり、シュヴァリエ公爵家からの迎えが来た。まずは公爵家にてそれぞれ今宵のパートナーを迎えに行く。今宵のシュヴァリエ公爵家はたいそう華やかだったいつもは忙しい宰相も今夜の宴には出席する。その滅多にない夫婦揃ってのお出かけに公爵夫人は少女のようにはしゃぎ派手過ぎず地味過ぎず、それでいて高貴な貴婦人の貫禄を身に纏っていた。

一方婚約中の令嬢も今日の主役は身に纏わないであろう少し暗めの朱色のドレスを身につけ髪は軽くまとめ上げカールした毛先を遊ばせやはりドレスに近い色の花飾りを散らしている。


そしてカリンは今日は紺に近い碧いドレスを着ていた。未成年らしく以前ほどではないがあまりデコルテを強調しない程度の襟元に髪は軽く縦ロールに巻いてありそれを頭の高い位置で結ばれている。その根元にはやはり紺碧の飾りが施されていた。顔にも軽く化粧をされていて、知らなければ貴族の令嬢で通りそうだ。

その姿がウルリヒで着飾っていた時よりも娘らしくなっていて思わず眩しいと思ってしまった。


「やあ、カリン。とても綺麗にしていただいたね。すごく似合っている、足は大丈夫かい?この前みたいになると楽しめないからね。」


「ありがとうございます。今度は全て疲れないようアナスタシア様が微調整してくださったので大丈夫です。」


はにかみながら答えるカリンの手を取り


「じゃあ、公爵様と奥様にお礼を言ってから準備しようか」


「はい」


「公爵様、奥様カリンの装いの準備をして頂き誠にありがとうございます。奥様とアナスタシア様にお任せしたお陰で侍女がまるで何処かの令嬢のように磨き上げられ感謝しています。」


「うむ。カリンはもはや我が家のもう一人の娘同然だからな。気にせずともよいぞ、ここしばらく母娘が楽しげに過ごせていたようでこちらも感謝している。」


「そうよ、ルディ。ホント飾り甲斐のある娘で嬉しいわ。ところで準備って?」


「はい、うちの馬車ではとても侯爵家を訪れるわけにいきませんので。かといって、こちらの馬車に同席させていただくわけにもいきません。ですので今から表で馬車を作ろうと。」


「なによ水臭い!一緒に行けばいいじゃない。」


アナスタシアと夫人は抗議したが男性陣とカリンは今夜の主催者を考えてルディとカリンがそう、特にカリンが公爵家に特別扱いを受けていることを向こうの夫人に気どられるのは避けた方が無難だと諭し時間も別々に着くようルディ達が先に出ることにしたのだ。馬車自体はルディ一人でも難なく出せるが乗り心地などカリンに少しでも合わせてやりたいとイメージを流し込んでもらいつつ作り上げることにした。二人は表に出てルディが前以て用意しておいた野ネズミと南瓜を準備した魔法陣の中に置くと杖を振るい魔法をかける片方の手はカリンがしっかりと握りぎゅっと目を閉じイメージを送る。辺りが一瞬輝くとそれは出来上がっていた。丸みを帯びた乗車部分に茶色い毛をした馬が2頭。


「きゃあ〜本当にできました!ありがとうございますルディ様!」


既にはしたなくもカリンは扉を開け中に入ろうとしている。


「すっご〜い!座り心地も思った通りですよ!ふっかふか。さ、ルディ様も早く乗りましょう。」


無邪気に喜ぶカリンの乗り込んだ馬車を見てアナスタシアが呟く。


「これって・・・なんか昔読んだ絵本に出てきたわ。」


「そうです。離れでまだ小さいカリンに読んであげたお気に入りの絵本にでてくるんですよ。」


「ねぇ、でも御者がいないわ。」


「そこは魔法で誘導しますから大丈夫です。すみません、お先に失礼します。また後ほど。」


頭を下げルディも乗り込み扉を閉めるとまるで透明な御者が操っているかの様に馬が走り出した。それを見送りながらアナスタシアがオブリーに言う。


「ねぇ?私が同じようなことを望んだらあなたも応えてくれる?」


「それはもちろん。」


「ふふ。お似合いの無自覚カップルかぁ〜、初々しくて羨ましいわね。」


「放っとくといつまでも自覚せずカリンの嫁ぎ先を探しそうでハラハラしますが。」


「ホント。でもまだ未成年だし、ルディも自覚しても心配ないでしょう。まぁ、うちの弟に一発殴られるだろうけど。」


全く無自覚で、あくまで主従関係を超える気のない二人を微笑ましく見送ってから公爵家も馬車の準備が整い親と子がそれぞれ別々の馬車に乗り込む。ゆっくりと馬車が走り出した頃、オブリーはああ、屋敷だけじゃなく馬車や使用人もいるなぁ・・・。と、ぼんやり考えながら正面に座るアナスタシアを見る。だけど、彼女は外側より内側を重視するだろう。そろそろ色々と将来図を二人で話わないと。様々な思いを乗せた馬車が今日はウェスティン侯爵家に向かっていた。




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