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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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招待主と招待客

まず最初に釣り上げたのはいささか大物なようである。いや大物なのは侯爵当主で、かかったのはコバンザメのように付いているその妻バーバラ・フォン・ウェスティン侯爵夫人だ。王太子兄弟が出席する以上自分達も出席をとオブリーとルディは返事を出した。婚約してからまだ共にパーティーなどに出ていないオブリーはアナスタシアをパートナーとして出席する。これはアナスタシアから見た侯爵家の印象を聞く為でもあった。


「カリンは連れて行かないんですか?」


「うーん・・・悩んでます。成年の儀が来るまであまり出したくないんですよね。」


「はは、すっかり保護者ですね。しかし、ウルリヒでも足を痛めたりドレスが苦しいと言ってた様ですし。本人はなんと?」


「僕に任せるって言うんですよ。ズルいと思いませんか?でも、連れ出せば子鹿会の面々から色々と情報が入るかなとも思いますけど。」


「ああ!それだ。やっぱり連れて行った方がいいですよ。靴とドレスを窮屈でない作りにすれば疲れないでしょう。シュヴァリエ公爵夫妻も招待されて出席するんですけどね、これはアナスタシアに対する向こう側の嫌がらせのつもりだと思いますが。カリンのドレス選びはアナスタシアと義母に任せれば間違いないでしょう。何より二人が喜びますから。」


というわけで、ルディの返事にはパートナーにカリンの名が付け加えられ侯爵家に届けられた。


「あら?シュヴァリエ公爵夫妻もちゃんと来てくださるわ。あそこの娘は生まれた瞬間だけ、ほんの一瞬確実に未来の王太子妃だったからヨハンナを見ればさぞかし悔しいでしょうね。その顔を見るのが楽しみで送ってみたけど、やってみるものねぇホント楽しみ・・・後は、ガウス国家魔法魔術師がアレクシア・カーテローゼ・ハプトマンをパートナーに・・・。」


思わずぐしゃりと返信を握り潰してしまった。忌々しい、この小娘は二人の王子の妃候補だと噂のあった娘じゃないの!


「奥様そのお返事は出席されない方ですか?」


握りしめられたカードを見て執事が問う。


「あら嫌だ、ちょっと考え事をしてうっかりこんなにしてしまったわ。この方も出席よ。」


そう言って執事に手渡す。


「あとの出欠は確認しておいてちょうだい。全部出揃ったら教えて。ヨハンナが主役だけど未来の侯爵家の花嫁候補も選ばないとね。」


「かしこまりました。」


このところウェスティン侯爵夫人は上機嫌だった。王太子と第二王子揃って出席の返事が来たのだ。娘は相変わらず部屋から出てこないがドレス職人や宝石商に生地商人などが度々侯爵家を訪れる。


「細い娘だったけど食も最近まともに取ってないからサイズを測り直さなきゃいけないわ。あまり細すぎても見栄えが悪いし、そろそろ機嫌を直して自分がいかに恵まれているか気づくべきよ。」


一方こちらの屋敷にも様々な生地や宝石が出入りしていた。シュヴァリエ公爵家である。ルディにカリンの着飾りを頼まれたことでこちらも上機嫌で母娘が着せ替え人形の様にカリンを扱って楽しんでいる。


「あの、くれぐれも僕のお給料に見合った仕立てにお願いしますね。」


「なに他人行儀な事言ってるのよ、カリンはうちの娘同然よお金の心配はしないでちょうだい。その代わり好きなようにやらせてもらうから、ねぇアナスタシア。」


「そぉよぅ、ルディ。任されたからには好きにするわよ。」


「ええ!でも、私のお給料で払えるくらいでいいです!こ、こんな高価な生地や飾り私なんかに勿体無いです。ね!ルディ様。せめて二人のお給料の範囲で・・・」


うんうんと頷くルディと精一杯反論するカリンの二人を全く無視して母娘は嬉々としてああでもないこうでもないと言い合っている。そこへオブリーが口を挟んだ。


「二人とも、諦めるということを知りましょう。公爵夫人のご好意ですから素直に受けた方がいいですよ。」


「「でも・・・」」


なおも反論しようとするがここから先は男性は出て行けと言われ仕方なくルディはカリンに言い残した。


「お二人の言う通りにしておこう。だけどキツイとかサイズの事はちゃんと言うんだよ。」


あぁ捨てられたと、部屋を出て行くルディの背中を恨めしく見送りながら頭の中でこのドレス一式の返済計画を練る事で気分を切り替えたカリンだった。

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