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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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ウェスティン侯爵の思い

秘書室の前にも警備兵がいたが話が通っていたのですぐに中に通された。今日もキッチリと髪を結ったバイラル秘書官が優雅に礼をする。身分は彼女が下のため侯爵は頭を上げるように言い、座ってもいいかと聞く。バイラルに席を勧められ侍女がお茶を用意してきた。


「ああ、いやお構いなく。秘書官、すまないが人払いを頼みたい。」


バイラルは先程の侍女に席を外す様言い後は王太子の世話を頼むと言いつけた。


「それで、王太子殿下に謁見とはどの様なご用件でしょうか?」


誕生パーティーの招待状ならもう届いている。焦らせばいいと、返事をまだ出していないので催促だろうか?バイラルはそんなことを考えながら問うてみた。


「娘の誕生パーティーの招待状が届いていると思うのだが。」


きた、やはり催促か・・・


「はい、殿下のご予定を見てからとお返事をお返しするのが遅れて失礼致してます。」


「その返事なのだが、王太子殿下とオーランド殿下共に御欠席の返事を頂けないかと・・・いや、おかしな事を言っているのはわかっているのだがこちらの事情があって。できれば殿下に直接お目通りしお話を聞いていただきたいのだが。」


普段無表情に近い侯爵の焦りに似た表情に催促ではなく、辞退をしてほしいとは予想外な展開だがバイラルは侯爵家にまつわる話を思い浮かべなんとなく納得しながらこちらは表情を崩さずまた問いかける。


「ですが、お嬢様のせっかくのお祝いですのによろしいんですの?」


「ああ、娘もそう望んでいるはずだ・・・と、いえば察してくれるだろうか?」


「つまり、噂では王太子妃候補に名乗り出ているかのように聞こえていますがお嬢様は本意ではないのですね?」


「頼む、あれの母親が勝手に盛り上がっているだけで娘はいま鬱ぎ込んで部屋に閉じ篭っているのだ。」


成る程。確か令嬢は最近異国の寄宿学校から帰国したばかり、噂は母親が勝手に撒き散らしていたのか。なんだかおかしな方向へ話が向いているが娘を思う父の姿にひとまず返事は出さずに置いておくことを約束する。


「ですが、後は殿下方がお気めになられますので。今日は生憎ご予定が立て込んでおりまして、明日にでも都合の良い日をお知らせいたしますがそれでようございますか?」


「ああ、助かる。とにかく私が殿下とお会いできるまでは返事を待っていただきたい。」


「かしこまりました。お嬢様のことさぞやご心配でしょう、殿下とはなるべく早くお会いできるよう調整いたしますので今しばらくお待ちください。」


「ありがとう。では、失礼する。秘書官も忙しいのに私情で手を止めてしまい申し訳ない。殿下によろしくお伝えください。」


いくら王太子付きとはいえ身分も下の秘書官に丁寧な礼をする侯爵の人柄には多少の好感を持てた。


「承知いたしました。」


秘書室を出た侯爵は来る時よりも落ち着いて歩けた。とりあえず、殿下方の返事はここで止まることになる。バーバラが毎日うるさく配達人を待ち焦がれているが、私の娘の幸せをあの好色女に潰されてたまるものか。侯爵家も自分の息子に継がせるつもりだろうがそれもどうにかせねばならない。しかし、今はヨハンナ・ベルが少しでも明るい気持ちになってくれれば。彼はその事だけに意識を集中させ自分の執務室に帰った。

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