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3、4話

「オーケー。待ってな」

 そう言うと漣は自販機に硬貨を入れ、先ほど太郎に御馳走したのと同じオレンジジュースを買う。プルタブを開けると太郎に渡す。

「はい、どうぞ」

「……」

 漣からジュースを貰った太郎は口元に鼻を付けて匂いを嗅ぐと、先ほどと同様に一気に飲み始める。

「そんなに好き?」

「……」

 ゴクゴクと喉を鳴らしながらジュースを飲む様子を漣は見ている。こんなに美味しそうに飲んでいるのを見ると、御馳走した甲斐があるものだ。そう思っている時だった。

「……はぁ、はぁ」

「た、山田君?」

 一気に飲んだせいか、太郎は肩で息をしていた。口の端からは、先ほど一気に飲んだ際に口の端から漏れたオレンジジュースの黄色い線が出来ていた。しかし、問題はそこではなかった。漣が見た、目の前の少年は先ほどまでの生気のない顔ではなく、目が見開かれそこに輝きが宿っていた。まるで、先ほどのオレンジジュースで意識を呼び覚ましたかのように。

「あ……りが、と。……う」

「え? いや、あの……山田君?」

「山田……で……、も太……ろ、う……で……も。無……い。ん、……だぼ。…。く、……。……の本当、の……な、前……は」

「え?」

 その時だった。漣と太郎はカランッ、という金属の落ちる音を聞いた。それと同時に、彼等を囲むような気配を感じた。それも、自分達を狙う殺気にも似た気配を。

「っ! な、何か……ヤバい。山田君っ、走るぞ!」

「……」

 太郎は返答こそしなかったが、それでも漣の言葉に頷き走り出す。裏路地から逃げ出せさえすれば、街中であれば人も多く逃げる事はそう難しいことではないからだ。

「ここから出さえすれば……!」

 路地裏から街中までは30mといった所だ。全力で走れば5秒も掛からない。そう思った時であった。漣が足を踏み出そうとした、その2歩先の地点。まるで、地面の中から2mはあろうかと言う、大男がせり上がってくるように現れた。まるでラグビーの選手のように異常に肩幅の広い男は、黒いスーツ姿に顔にはガスマスクを付け、頭にはソフト帽を被っており、漣と太郎の前に仁王立ちしている。

「なっ、何だ……コイツ!?」

「……に」

「やっと見つけたぞ……」

 大男はドスの聞いた低い声で言うと、両腕を広げて2人に近づく。漣は後ろに逃げようと身体を動かそうとする。だが、後ろを振り返るとそこにももう1人男が居た。先ほどの大男と比べると中肉中背で中性的。男か女かわからないようなスリムですらっとした体型である。しかし大男とは違い、白いマントを身に付け、祭りの出店で売っているようなヒーローのお面を被っていた。

「な、何なんだよ御前等……!!」

 漣は太郎と背中合わせになる形で後ろを向くと、お面の人物に話しかける。しかし、お面の人物は漣の問い掛けには答えず、胸ポケットからスマートフォンを取り出した。

「……此方美河です。目標を発見致しました」

「何?」

 美川と名乗った者の言葉に対して漣が反応した瞬間だった。まるでスキップでもするかのような軽い動作で跳んだにもかかわらず、美川は漣と太郎の間に現れた。5mという距離を、僅かな挙動だけで。

「嘘だろっ……!?」

「……君には、用はありません。眠っていて下さい」

 美川はゆっくりとした動作で軽く握った拳を、まるでノックでもするかのような仕草で漣の胸に当てようとする。それも、キャッチボールで飛んでくるボールよりもゆっくりとした速度で、だ。

「何だ……?」

 速さにしても力にしても、軽い拳。それを受け止めようと漣の掌で受け止めようとした瞬間だった。まるで巨大な鉄球でもぶつかった様な衝撃で漣の身体が宙に浮く。

「ハッ……!?」

 漣は受けた痛みよりも、異常でかつ得体の知れないチカラ。そのチカラを、脳味噌が情報として処理しきるよりも先に痛み、刺激が脊髄を走る方が速かった。漣は背中から地面に叩きつけられると灰の中の空気が全て抜ける。

「ブッ!? ブハッ!!」

高校時代、陸上の練習で100m走を4本連続で走り終えた後と同じ苦しみを漣は感じていた。更に、ろくに受け身も取れなかったため、背中や肩、踵といった身体の節々が痛みを発している。だが、美川と大男は倒れた漣には目も暮れず、残された太郎に詰め寄る。

「やれやれ、探しましたよ。№9110」

「……」

 太郎はゆっくりと後退りしていく。だが、彼の後ろには大男が居り逃げることは適わず、あっという間に太郎は大男に抱えられた。

「9110……だと?」

 肺から全て絞り出された酸素を再び身体に取り入れた漣は、うつ伏せになりながら美川に問いかける。体を起こそうにも、身体の節々はズキズキと痛みの信号を発しソレを阻害する。

「おや? まだ意識がありましたか。どうやら甘かったようですね。……いやはやそれにしても、彼の名前をまだ聞いていませんでしたか?」

「お生憎様だ……聞けそうな所でアンタ達が来たんだろうが……!!」

「おや、それはそれは、空気が読めなかったようで失礼いたしましたね。ああ、貴方は恐らく今こう考えているのでしょう? 僕の様な優男が、何故あんな挙動で動くことが出来、その上あんなノックのような一撃で貴方の身体を吹っ飛ばせるような威力になったのか。目の前の彼の9110とは、何のことか? そして何より、突如現れた怪しげな僕達2人は何者で、何のためにここに来たのか、と」

「……」

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