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3、3話

 そう言うと漣は駅へと再び戻るとコインロッカーを見つける。500円玉専用で、再び荷物を取り出す際に500円玉が返却されるタイプのものである。

「何か飲むか」

 荷物を預け終えた漣はそのまま駅の中にある自販機を見つけると、いつも飲んでいる微糖の缶コーヒーを見つけた。小銭を取り出そうと財布の中を見てみるが、中には札しか入っていない。

「……まあ、良いか」

 お札を一枚取り出すと、望みの缶コーヒーを買った。しかし、残りの金額が800円以上残っているので、販売のランプはまだ着いたままである。漣は残りのお金を戻そうと、返金のレバーを倒そうとした時だった。

「あれ……?」

 漣が目を向けた先に見つけたのは、先日見た蒼い髪の少年だった。先日、骸骨武者の刃を演じた山田太郎である。

「1人か……?」

 そこで漣は返金をする前に、オレンジの炭酸ジュースを買うと太郎の元へ向かう。

「おーい、山田君、だよな?」

「……」

 漣の言葉に山田は自分を呼ばれたと気づかないのか、茫然と立ち尽くしている。人違いかと思った漣であったが、あの枝の様なか細さはどう見ても先日見た少年に間違いは無い。と、そこで太郎の前に立つと、腰を落として視線を合わせる。

「あーえっと……覚えているかな? ちょっと前にデスレンジャーでさ。あの黒い奴。そんで、トイレーっ!! って叫んだ、俺だよ」

「……」

 太郎は先ほど通り黙ったままであったが、僅かに首を縦に振る。どうやら漣の存在を認識したようである。

「あ、これ。飲む? 何好きかわからなかったから、とりあえず炭酸オレンジだけど」

「……」

ジュースを差し出して見ると、太郎は意外にもすんなり受け取った。だが、プルタブが開けられないのか、オレンジジュースを受け取ったまま動かない。

「ん? あ……。どれ、ちょっと貸してみな」

 漣は太郎から一度オレンジジュースを取ると、プルタブを開けて再び彼に返す。

「ほれ、これで飲めるよ」

 太郎に再びオレンジジュースを渡すと、漣も缶コーヒーを飲む。漣がコーヒーを飲んでいる様子を見て太郎も同じようにオレンジジュースを飲みだした。

「……っ」

 それまで無表情だった太郎の眉がピクリと動き、瞳孔が開く。まるで吃驚した様子であった。

「ん? どうしたんだい?」

「……」

 目を大きく見開いた太郎に対して漣は声を掛けるが、太郎はそれには答えずに3分の2ほど残った残りのオレンジジュースを一気に飲み干してしまった。

「喉乾いていたのかい?」

 同じく缶コーヒーを飲み干した漣が言うと空き缶をゴミ箱に捨てる。それを見た太郎も真似をして空き缶をゴミ箱に捨てた。

「そういや、山田君は何でこんなところに居るんだ? この前一緒だった鈴木君と一緒?」

「……」

 先ほどまでの吃驚した様子は消え、再び先ほどまでの鉄面皮な太郎が戻っている。その上、一言も喋らない為、何を考えているかもわからなかった。2人の間に、妙な沈黙が流れ始めようとした時だった。その空気に耐えられなくなった漣が意を決っし話す。

「あー……あ、そうだ。山田君、これから暇? 俺、今ちょっと家に帰れなくてさ。どうせ暇だしもし良かったら、どこか遊びにでも行かないかい?」

「……」

「この前バイト終わったばかりだし金はある。年下の君に御馳走する位はあるからさ」

 言った傍から、本当は彼の年齢を知らないことを思い出したが、言葉に出した手前引くことは出来ない。と、それまで沈黙を貫きとおしていた太郎は少しだけ漣の方を向くと、小さく頷いた。

「お、おお。そうか、じゃあ遊びに行こうか」

 そう言うと、2人は町の中心部へ行くため、裏路地へと歩き出して行った。


「……何を見ていたのですか貴方達は!!」

「も、申し訳ありません。イドウの際にどうやら……」

「言い訳はしなくて結構。事が露呈しなければ問題はありませんので。しかし、事が露見したら……どうなるか分かっていますね?」

「も、勿論でございます」

「分かっているのでしたら構いません。迅速な行動と良い報告をお願いいたしますよ」

 その言葉を最後に、先ほどまでは居た多くの人間の気配が消えた。その場に残った唯一つの気配は、苛立ちながらカップに残っていたホットコーヒーを流し込んだ。


「カラオケ、ゲームセンター、ボーリング。まあ、ここら辺の遊び場なんてこんなもんだけど、何処が良いかい?」

「……」

「あー……」

 裏路地を歩きながら太郎に問いかけてみるも、相変わらずの鉄面皮を貫きとおされるため漣からの一方通行の会話が繰り返されていた。

(もしかして言葉が分からないのか? それとも、カラオケとかって言葉自体を知らないのか? 見た目はどっちかって言うと外人さんっぽいし、山田太郎ってやっぱり偽名とかなのか……?)

「なあ、山田君って」

 と、そこまで言った時だった。それまで沈黙を保っていた漣の携帯電話が鳴り響く。慌てた様子の漣は誰からの着信かという確認もせずに電話に出た。

「は、はい。もしもし?」

「やっと出たか、漣」

「えっ? ……父さん?」

「ああ」

 電話を掛けてきたのは漣の父親であった。因みに、この時漣は知る由もなかったが、この電話も含め、後2回電話が掛かってきていた。

「漣。御前は今何をしているのだ。いつになったら帰ってくる」

「いや、最初は帰る予定だったんだけど藍が友達遊びに来ているから帰ってくるの夕方くらいにしろって言われているんだよ」

「何? 全く……今どこに居るんだ? 迎えに行く」

「ああ、いや。良いよ。丁度友達……と言うのとは違うかもしれないが、仕事仲間みたいな人と遊びに行く所だから。じゃあ」

「何? 漣、御前」

 漣は父親の返答を最後まで聞く前に電話を切ってジーンズのポケットに仕舞うと、溜め息を1つ吐いた。

「はぁ……。いや、すまないね山田く……ん?」

 そこで漣は周囲を見回す。しかし、どこにも太郎は居なかった。

「あれ……? 山田君? おーい、山田くーん?」

 漣は元来た道を戻っていくと、途中の自販機で太郎を見つけた。

「おお、居た居た。急に居なくなるからびっくりしたよ。……ん?」

「……」

 漣は太郎の目線を追う。すると、その先には先ほど漣が御馳走したオレンジジュースがあった。

「もしかして飲みたいの?」

「……」

 漣の問い掛けに太郎はコクリと小さく頷く。

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