2、5話
「どりゃあ!」
「……」
漣がシニガミブレードを振るい攻撃を仕掛けるも、刃は右手に持った刀で易々と攻撃を防いでいく。大鎌と刀。リーチの差では漣のシニガミブレードが勝っているが、一度懐に潜り込まれると長いリーチの大鎌は使い物にならない。故に漣は懐に潜り込まれないよう、闇雲にではあるがシニガミブレードを振るい続ける。
「……」
刃は時折漣の振るうシニガミブレードの鎌を刀で弾く程度のことをする以外は漣の攻撃を全てかわしていく。全身に重い鎧を着ているにも関わらずその動きは機敏であり、漣の振るう刃は一撃もまともに当たらない。
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ……」
シニガミマスクを被っているために余計に空気を吸うことにエネルギーを使う。普段何気なく息を吸えることが素晴らしいと言うことに気が付くも、今はそんなことを言っている場合ではない。
「こ、攻撃しないのかよ!? さっきから逃げてばかりで!」
「……そう、か。…………りょ、うか……い」
「?」
先ほどまで右腕一本で振るっていた刃だったが、それまで空いていた左手も使い、両手で刀を握る。それだけ。ただ、それだけであったにもかかわらず漣の背筋がゾッとする。それは、かつて陸上の県大会や地区予選で感じたモノに似ていた。
決して負けない。何が何でも一位を取る。闘争心。ともすれば、殺気とも言えるほどの感情。
「おいおい……ただのヒーローショーだろ? な、何でここまで……!」
「……」
次の瞬間。漣の視界から確かに刃という存在は消えた。だが、次の瞬きをする前に刃は漣の視界の中に再び現れる。
それは、シニガミマスクのバイザーを挟み、本当にすぐ目の前だった。
「なっ……!?」
両手で握られた刀。その刃が漣の。デスブラックのバイザーに映った瞬間。咄嗟に上げたシニガミブレードの長い柄の中程で防ぐ。だが、刃は両手に力を込めてから更に踏み込む。すると、デスブラックの身体は刃の刀に押され、みるみる腰を落としていく。
「なんつーバカ力だっ……!!」
「……」
身体を沈ませることで何とか攻撃を防げたことで漣は安堵しようとした。だが、その安堵は漣の腹へ放たれた刃の蹴りによって阻まれる。
「グブッ!?」
刃の靴のつま先がデスブラックの腹へと突き刺さる。デスレンジャーの衣装には随所に白い骨の外装が付いている。だが、腹の中心。丁度へその部分には骨の外装が無く、刃の蹴りはデスブラックの腹へと直接突き刺さった。胃の内容物、昼間食べた牛丼が逆流しそうになる。
「こっ……のぉっ!!」
それは苦し紛れの行動だった。漣は腹に突き刺さった痛みにより、シニガミブレードを斜めに傾けてしまった。だが、それまで漣目掛けて斬りかかっていた刃の刀は斜めになったシニガミブレードの柄を滑っていき、刃の姿勢が崩れ倒れる。
「……」
「ぬうっ!」
漣はすぐさま立ち上がると距離を取りつつも、1つの結論を出した。
「勝てねぇ……」
力も早さも漣より上である。今1対1では誰も勝つことは出来ない。最初の動きを見た一心や普段一緒に居る雄作を見ても分かる。自分は勿論、彼等の動きでも刃に勝つことは出来ない。1対1では、誰も。
「時間を稼ぐしかなさそうだな……」
3対1に何とか持ち込む。そのためには、時間を稼ぐ。それが漣に出来る唯一のことと信じ、シニガミブレードを構え直した。
デスブルーは仲間を守るため、悪を倒すためにシニガミブレードを振るった。その刃は死神の刃。ゴーストを斬る力を持っており、それでダメージを与えられることは、当然のことと言えよう。だが、それはあくまでも物語、御伽噺、フィクション。現実ではありえない次元の世界の話だ。
では、それが現実で起こったとすれば、ヒトはどうなるであろうか?
「う、うわぁぁああああああああああああああ!!」
デスブルー、平坂雄作は困惑し、そして絶叫した。当然だ。何せ彼が振るったのは大鎌だが、それはあくまで形だけだ。それに身体を斬る力等あるはずがない。にもかかわらず、今彼の目の前には斬り裂かれた絵画の騎士の左腕が落ちている。これをどう説明すれば良いのだろう。
「オイ、ブルーっ!!」
一心の声を雄作が耳に捉えた瞬間だった。左腕が落ちた絵画の騎士の筆の槍が襲いかかってくる。
「なっ!?」
あまりの事態に困惑し、混乱した思考に身体がついて行かず、絵画の騎士の筆の槍は吸いこまれたかのようにデスブルーの左胸に突き刺さる。筆先は遠くから見ていると唯の槍のようだったが、実際は大量の針がびっしりとついた剣山のような形をしていた。
「つっ……!!」
胸の骨の鎧を見てみると筆の槍が突き刺さった部分に小さな穴がいくつもあいている。間違いない、これは本物だ。
「どういうことだ……じゃあ、これも……?」
そう思った雄作はすぐさま沼川を呼ぼうとするも、先ほどまで観客席にいた沼川と浅川が居ない。
「こ、これは中止だ! 本物だ、これは!!」
雄作は沼川達にこの事態を伝えるためにステージを降りようとするも、目の前に絵画の騎士が立ちふさがる。
「な、何やっているんですか!? これは本物の武器ですよ!? 貴方の腕も……すぐに辞めないと!」
「……」
だが、絵画の騎士は止まらない。右手一本でデスブルーの首を掴むとそのまま観客席とは逆方向に投げ飛ばす。
「がはっ! ゲホッ、ガホッ」
ハァハァッ、と肩で息をする雄作を見下ろすように絵画の騎士は立つと、そのまま右手に持った筆の槍を振り下ろした。
「……え?」
「馬鹿がっ!!」
完全にノーガードだったところを、デスレッドのシニガミブレードが攻撃を仕掛けていた絵画の騎士に攻撃を仕掛ける。攻勢的防御。攻撃は最大の防御といったところであろうか。絵画の騎士はデスレッドの攻撃をかわすことに精一杯となり、デスブルーへの攻撃は中断された。
「今だやれ!」
「な、何言っているんだよ! 今すぐにやめない、」
と。という直前だった。2人の隙を突いて絵画の騎士は雄作に馬乗りになる。それも、筆の槍を逆手に、振り下ろすように。
「う、うわぁああああああああああああああ!!」




