音速を超えるだと?ならば俺は光速を超える!
「音速で十分だろ。人間対人間で何言ってんだよ」
ふん。理解出来ない凡俗が。俺は鼻で笑った。
「勝つというのは、全てに勝つという事だ。分かっていないな」
「いや、ここ政府機関だから」
俺はヒーロー。ストロングインフィニティ。悪の組織「最強機関ダレデモカカッテコイ」との激闘の末、遂に勝った。あらゆる戦いで負け無しの俺には、もはや会いに行く強い奴がいない。だったら、地元の方が強い奴はいくらでもいる。実家に帰って頭を下げて、家業に入らせて貰おうか。今更どの面下げてと、殴られるかもしれんが、致し方ない。そう、考えていた時。
「政府がヒーロー組織を創設するのですが、ストロングインフィニティさんの力が必要です」
戦いの中で、騙そうとする奴はいくらでもいた。しかし、これが嘘なら大嘘も大嘘。この俺に嘘を吐くなら、大した度胸だ。二つ返事でそいつの車に乗った所、向かった先は国会議事堂だった。
「信用していただけるとは、思っていませんでした。これから、よろしくお願いいたします」
まあ、この場合に最強なヒーローは、即座に最敬礼、無言で腰を90度に折り、全くよろしくお願いされる。走馬灯のように、沢山の支援をしてくれた仲間たちや博士の事が思い出される。
「ところで、敵の事をまだ教える気は無いのか。本当に正義の戦いか?」
「どういう事で?」
「偽の情報を掴まされて戦ったら、そいつも敵に偽の情報を流されて、危うく潰し合いをさせられそうになった事がある。信じて大丈夫なのか?」
「うーん?仰る意味が良く分かりませんね」
「お前、政府の人間だろう。俺の言ってる事が分からないのか」
「疑うというなら、帰って頂いていいですよ。故郷で地方議会の話でも聞いててください」
「何が言いたい?」
「上下水道一つ、正しく運営するのも、正義ですよ。話は終わりです」
「うむ......」
口先だけなら私より回るのは、流石は政府機関だ。というより、それは正しい。
「くそ、光速の半分にも届かない......!!!」
「十分ですって。建物何個壊すんですか」
「言った以上は、やり遂げるのだ!」
「じゃあ、政府機関は不必要な力は持たないですよ。日本国憲法上。やめてください」
「そうか......」
こんな事が度重なって、いよいよ実家に帰ろうかと思っていた頃だった。緊急出動がかかった。
「お前、ストロングインフィニティか?」
「誰だ?お前は、最強機関ダレデモカカッテコイの、参謀、ドウニカシテオクではないか!どうして、政府機関のチームのリーダーの制服を着ている!」
「何も聞いてないのか?ダレデモカカッテコイは、政府と話を付けて、政府のヒーロー機関に吸収されたんだ」
「俺たちは、じゃあ、今何と戦っているのか知っているか?」
「そりゃあ、聞いてないよな。ヒーローの中で思い上がったのが、政府に内乱を起こしたんだ。力に溺れておかしくなった連中だ」
「なんだと!?」
「お前には言い辛かっただろう。わかるよ」
「......」
俺の沈黙に、ドウニカシテオクは哀れみの視線を向けた。
「この作戦に呼ばれたと言う事は、お前は政府に正気を認められた訳だ。奴らは今後、何らかの処置でずっと監置、幽閉する方針で固まっている。気が向かないなら、弾でも運んでるといい」
「......」
それでも俺は奴が言っている事を信じられず、戦場に赴いた。逃げるには、あまりにも事は重大過ぎた。だが。真実は。
「お前のせいじゃないからな。気にするな」
かつての強敵が俺の肩を叩いた。俺は、この悲しみを、乗り越えて戦い続けられるだろうか。




