4話 取り返しのつかない失態
目が覚めた俺は、ゆっくりと体を起こす。
草原の柔らかい土が、まだ温かい。
首を持ち上げた時、異変に気がつく。
街があった場所が、異様に赤く光っている。
(何かあったのか…?)
街に近づいていくにつれて、それが確信に変わる。
風が鉄と焦げた肉の匂いを運んでくる。
早く駆けつけようと空を飛ぶと、その光景が目に入る。
あの粗末な木の柵は折れ曲がり、ゴブリンたちが一生懸命作っていた小屋は半分以上焼け落ち、畑は踏み荒らされて泥と血でぐちゃぐちゃになっている。
「……嘘だろ」
声が震えた。俺の声だ。
街の入り口に転がっているのは、ゴブロウの体だった。
昨日、俺が魔力を流して治した腕の傷跡が、まだ薄く残っている。
でも今、胸に大きな穴が開いている。
魔法銃の貫通傷。魔気が完全に抜け落ちて、目は虚ろに開いたまま。
「ゴブロウ……」
人間に変身して手を伸ばす。冷たい。魔気は吸い込まれない。
周りを見回す。
ゴブカスは首を斬られ、ゴブタロウは毒ガスのような紫の煙に焼かれて縮こまっている。
ルーグは、人間の死体を数体引きずり倒したまま、喉を裂かれて倒れていた。
チョガー、ガルヴァ……みんな、みんな。
「なんで……」
足から崩れ落ちる。
立ちあがろうとしても、力が入らない。
(俺が……呑気に寝ていた間に)
昨日の夜。「守ってやる」って言ったのに、「安心しろ」って言ったのに。
疲れて、防衛もせずに、寝た。
「明日の朝からでいいか」って、自分で決めた。
援軍がくるって言っていたのに。
「俺のせい……か」
胸の奥で、何かが砕ける音がした。
怒りなのか、悲しみなのか、わからない。
ただ、喉の奥から低い唸りが漏れる。
瞬間、俺はドラゴンに戻り咆哮していた。
〈属性:炎の入手が可能です。入手しますか?〉
俺は無視して、空へ炎のブレスを吐き出す。
赤い火柱が夜空を裂き、星を隠す。
〈炎属性、入手完了。〉
それは、人間たちにドラゴンが復活したことを知らせるのに十分だった。
「……バーザール様!」
その声で我に帰る。見ると、重傷を負ったガルヴァが目の前にいる。
「大丈夫かガルヴァ!」
どう見ても大丈夫ではなかった。足が折れ、腹から出血している。
あと少し放っておけばすぐに死んでしまうだろう。俺は急いで人間に変身する。
まずい、これでは魔気を送ってもダメなんじゃないか?
そう、魔気は傷口を治すだけであって失われた血などは補完できないのである。
〈スキル:治癒魔法初級が入手可能です。入手しますか?〉
ナイスタイミング、全知王。入手する!
〈治癒魔法初級、入手完了。〉
早速ガルヴァに使っていく。骨折は治ったが、依然として大量出血をしていたことは変わりない。
「一旦動くな。俺は生き残りがいないか探してくる」
「待ってください…バーザール様…!」
「どうした?!」
「生き残りは…、いません。私が先ほど、確認…」
「っ…!」
重い空気が流れる。どうして、こうなったんだ。




