3話 ヒトのシシャ
とある試験の直前となり、これから数回は更新が遅れるかもしれません!
ごりょーしょーください!
あと、見てくれている人に最大の感謝を…m(__)m
すぐ下に人間の集団がいる。俺は翼を大きく広げて急降下した。
隊の目の前にドスンと着地した。大地が少し揺れる。
目の前には、20人ほどの人間の対魔隊。
前世でいうマシンガンのような魔法銃を構え、迷彩服に身を包んだ兵士たちだ。
帽子にスターをつけたリーダーらしき男が前に出て、震える声で兵達に告げる。
「臨戦体制!銃を構えろ!狙いは首だ!」
俺は低く唸りながら、脳波で直接伝えた。
*****ここは俺の縄張りだ。それよりこちらに来るものなら戦う意思があるものとし、攻撃する。惨殺されたくなければ今すぐ引き返し、帰れ。*****
威嚇の意味を込めて、軽く上半身を持ち上げる。
もう一度体を地面に持っていくと、また大地が揺れる。
人間たちは一瞬ビビっていた。いいぞ、これで撃退できれば…
少し沈黙が続いた。
「うわあぁぁぁぁ!!!!!!!」
一人の兵が、声を上げながら銃を撃ってきた。
周りの兵もそれに合わせて撃っていく。
リーダーは必死に叫んでいる。
「みんな止まれ!俺たちじゃ勝てない!援軍を待つべきだ!」
その声も虚しく、銃声にかき消される。
対魔弾が俺に向かって飛んでくる。
手榴弾みたいなのも投げられ始めた。
(警告したのに、来るのかよ…。)
確かにこの体で戦ってみたいとは思ったけど…今はゴブリン達いるんですが…?
「魔狼! ゴブリン! 後ろに下がれ!」
念の為、近くにいないことをねがい叫ぶ。こんなのに巻き込まれたらいくらVUしていたとしてもきついだろうからな。貴重な労働力、死なれては困る。
翼を羽ばたかせると、人間の何人かが悲鳴を上げて飛ばされる。でも、人間側も本気だ。
魔法銃の連射が俺を狙う。俺には当たるが、別に痛くない。
「なっ!無傷だと?!これは我らの中で一番強い武器だぞ!」
兵の一人が叫ぶ。途端に恐怖が奴らの間に伝染する。
逃げる者、気が狂って乱射している者。全員を相手するのは疲れる。
そうだ。空からもう一度降りて地面を揺らそう。そうしたらみんなが倒れるだろう。
そう考え、前線を抜けたのが悪かった。飛んだ瞬間、森から悲鳴が聞こえた。
「ぎゃあぁぁぁ!!!!」
ゴブリンの中の誰かが怪我をしたようだ。流れ弾に当たったのか?
兵は、俺に興味をなくしその声のした方向に向かって走っていく。
まずい。そっちにはみんながいる。
大声で叫ぶ。俺はもう我慢できなかった。
空中から尻尾を一閃。
街の前の森を薙ぎ払う。
隊は、一回の攻撃で沈黙した。
途端に俺の脳にいろんな情報が流れてきた。何だこれは?
〈解析完了。偽装のアンロックが完了しました〉
俺の体が、光に包まれる。
あれ?そんなもの持っていたっけ?ディスガイズってなんだ?
〈どうやら三つ目の解析不可のスキルがアンロックされたようです。手に入れますか?〉
当たり前よ!手に入れる!
〈了解しました。偽装を習得しました。〉
すると、体の光が消え、人の姿になった。当然飛べなくなり、落下していく。
「うわわわわわ!!!」
目を瞑りながら願う。
(ドラゴンに戻れ〜!!!)
……目を開いていたら飛んでいた。願ったら戻る仕組みか。
(人間になれ!)
また落下を始める。
(ドラゴンになれ!)
落下は止まる。
え、これ便利だぞ?っていうか、もしかして早速この世界に来た目的が一つ達成できた?
〈はい、以前教えていただいた、⑤が達成いたしました。〉
うーんマジか。意外とあっさりいったな。
一旦、これは後でじっくり見るとしてあの隊の処理をするか。
尻尾の斬撃を喰らった場所に飛んでいく。
ありゃ、力みすぎていて地中の奥深くまで谷ができてしまったようだ。これあいつら大丈夫か…?
だが、幸運なことにどうやら隊に直撃していないようだ。
さっきの攻撃でできた谷の手前で隊の全員が倒れていた。
谷から遠いところにいるやつは意識があるみたいだ。少し動いている。
俺は地面に降り立ち、人に変身する。
そして隊の意識のある奴の頭を掴み、威圧を与えて言った。
「これを貴様の司令部に伝えろ。『二度はない』とな」
その兵は気絶してしまった。今行ったこと、あっちの指揮官にちゃんと届くかな…?
まあ全員撃退できたことだ、よしとするか。
あとはこいつらを森の出口に置いておいて…あ!
こっち側で誰か負傷していたんだった!
まずい。死んでいたらどうしよう?こんな初めから死人出たらたまったもんじゃないぞ。
街に帰ると、一人のゴブリンが横たわっていた。
「ゴブロウじゃねえか!大丈夫か?!」
見ると、腕に対魔弾が当たったようだった。止血はしてるが、魔気が流れ出てしまい最後には死んでしまうという。
「全知王!治療方法は?!」
〈外部から一定の魔気を流すことで流れを堰き止めることができます。なお、その量は個人差があるため、注意が必要です。〉
なるほど。つまりは俺の魔気を流せばいいんだな。
んー、ゴブロウの体の大きさを考えると魔気はこれくらいか…?
俺は手に魔気を込め、負傷部分にあてる。すると、その魔気が全て吸い込まれた。
手を離すと、ゴブロウの傷がなくなっていた。治ったようだ。
歓声が上がった。とりあえず一安心だ。しかし、1発当たった程度でここまでの被害が出るとは…
防衛もきちんとしなければ。
「隊は退けた!だけど、またいつ来るかわからない!これからは防衛を強めに頼む!」
みんなが頷く中、俺は少し息を吐いた。
ゴブロウの傷は治ったけど、腕に残った痕がまだ赤い。
1発でここまで危なかったんだ……。ちゃんと防衛しないとまずいな。
でも、今日は俺が守れた。みんな無事だ。
「よし、今日はもう休め。明日から本格的に防衛を固めよう。今はみんな疲れてるだろ?」
みんなから安堵の声が出る。ゴブロウが前に出る。
「本当にありがとうございます!!バーザール様がいなければ、死んでいたところでした!」
「いや、なんてことないって。俺に仕えてくれているんだから、守ってやるのは当然のことだ!今後も安心してくれていいよ!」
ゴブリンたちは家に戻り、魔狼たちは外周に散らばって休憩に入る。
俺は翼を広げて一度空に上がり、街全体を見下ろした。……疲れたな。
戦闘の緊張が一気に抜けて、体が重い。
でも、みんなの笑顔を見たら、少し胸が温かくなった。
これで少しは平和に近づいたかもな。草原に体を横たえ、ゆっくりと目を閉じた。
これからのことは……明日の朝考えるのでいいか。
今日はもう、休みたい。
起きたのは、その日の夜だった。
静かすぎる。
風が血の臭いを運んでくる。
遠くから、かすかな歓声が聞こえる中、俺は目が覚めた。




