12話 既視感と暴走
俺は部屋の窓辺に立って、すっかり暗くなった外の街を見下ろしていた。レオンはもう寝息を立てている。
あいつがさっき目を覚ました時、何かに怖気付いたような態度をしていた。
まさか、俺の正体に気がついた…?いや、それならもっと遠ざけるはずだ。
あいつは、俺の知らないところで何かにあった。とてもショックなことが。
でも、今は聞くタイミングじゃない。俺はそう思い、目を閉じた。森の記憶が、鮮やかによみがえる。
あの時──────俺はガルヴァに乗って森を急いでいた。人間の部隊が近づいてくるのを感じていた。
また、人間に遭遇したら今度こそ面倒なことになる。
「ガルヴァ、急いでくれ……!」
森の奥、少し離れた所に着いた瞬間、後ろから爆発音がした。振り向くと、宙を大きな木片が舞っている。
少し経つと、爆風が押し寄せてきた。俺は咄嗟にガルヴァの影に隠れる。
(あの悪魔、派手にやったな…!)
風がおさまり、陰から出る。周りには人間の破片が落ちていた。腕の破片、鎧の破片、銃の取っ手。
全てが鋭いもので切り裂かれたような傷口だ。
人間の部隊は壊滅していた。俺はその惨さに、驚き呆然とする。
「………あ……」
すべての破片という破片からオーラを感じる。魔気とは違う、呪いのようなもの。
粘つく気配が空気に混じり、俺の体に向かって流れくる。
(何だ……これ……?)
体が重くなり、耳鳴りがする。すると、それらは一気に俺の体に流れ込んできた。
俺はその圧で、体をのけぞらせる。異様な吐き気と気持ち悪さが襲った。
その瞬間、頭の中に声が響く。
〈警告。人間の魂による侵入を確認しました。排除をはじめます。〉
全知王だ。普段は冷徹な声が、今はわずかに焦りを含んでいる。
(……………っっ!!!)
体が熱くなってきた。胸が焼けるように痛い。
〈排除失敗。警告。怨念の量が想定を超えています。もう一度挑戦します。〉
ヘルメスの声に、初めての苛立ちが混じった。直後、俺の意思とは別に体が動く。
(?!なんだ?)
体の熱が下がり、背中から翼が一気に広がった。目が金色に変わり、魔気が全身に駆け巡る。
急に俺は立ち上がり、空に飛んだ。体が勝手に動く。思った以上に力が溢れている。
(まずい…!これ周りが酷いことになるんじゃないのか?!)
飛び上がる際に地面が窪み、風で森の木々がしなる。
〈警告。警告。暴走中。強制解除します。〉




