10話 会話前
痛い。頭がズキズキする。鉄の臭いが鼻を貫く。
ゆっくり目を開けると、木々の間から光が差し込んでいた。
……生きてるのか?体を起こそうとして、激痛が走る。腕と胸の傷が開いて、血がまた滲む。
周りを見回す。仲間たちの体が、あちこちに転がってる。
動かない。誰も、動かない。
(俺だけ…?銃を変えにいっていたから……)
遠くで声がする。低い、楽しげな声。
悪魔だ。あいつは、倒れた隊長の死体を足で転がしながら、独り言みたいに喋ってる。
「人間どもは相変わらず脆いな。かの方に必要な魂が、これじゃ足りんぞ。もっと殺すには…いっその事国ごとしてしまおうか」
浮かれている。よっぽど俺らを殺したのが楽しかったようだ。
俺のことなど眼中になく、ただの暇つぶしみたいに喋っている。
(……くそっ)
体を動かそうとする。銃はどこだ。手が届かない。でも、起き上がれた。
膝をついて、ゆっくり立ち上がる。悪魔がピタリと動きを止めた。
赤い瞳が俺に向かって見開かれる。
「……おや、まだ生きてたか。運のいいガキだ」
爪が光り、奴がゆっくり近づいてくる。殺意が空気を重くしていく。
(終わりか……)
もう、抵抗なんてできない。俺は死を覚悟して、目を瞑る。その瞬間、轟音と共に森全体が震えた。
風が吹き荒れて、木の葉が舞う。そして、急に空が暗くなる。悪魔の動きが一瞬で止まった。
「何だ、この魔気は……?」
俺も目を開けていた。痛いが、力を込めていなければ吹き飛ばされそうだった。
視界の端、上空に、黒い影が立っていた。
人間の姿……いや、違う。背中に翼のようなものがある。人間じゃない。
暗い森の中、目が金色に光っている。
(あれは……さっき感じた魔気……)
「動くな」
その人物が、低い声で言った。悪魔が後ずさる。
あの、俺らの部隊を圧倒したあの悪魔が退いているだと?
「貴様……何者だ?なぜそこまでのものがここに…?」
その人物は答えず、もう一言言った。
「動くなと、言ったはずだ」
その一声だけで、空気が圧縮されるみたいに重くなった。
俺はそれに耐えられず倒れる。意識はなんとか残った。
(こいつ……何者だ……?助けて、くれるのか?)
すると、森の奥から何やら知らない人間が近づいてきた。悪魔の顔が青ざめる。
「……殿!」
人間の姿だが、こいつは悪魔の上の立場のようだ。わけがわからない。
冷たい声が響く。
「何をしている?」
悪魔が慌てて跪く。
「申し訳ありません! 人間の残党を片付けようと……」
出てきた人間が、ゆっくり上空のやつと俺を見る。
「……ほう。面白い」
見られた直後、体の自由が効かなくなった。次第に視界が暗くなり、白く光っていく。
(何だ?何が……起こってるんだ……)
誰かが俺を読んでいるような気がした。
気がつくと、俺は椅子に座っていた。




