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5-3

 あれは、うら寂しい森の街道だった。


「殺せ」


 小便を垂らしてへたり込む俺の前に、ひどく錆びついた剣が投げ出された。


「人手が足りん。そいつを殺せば、命だけは助けてやる」


 剣を投げつけた男が続けた。そいつは盗賊団の幹部かなにかで、その名前は覚えていない。たぶん、俺が覚える前に死んだのだろう。


 剣を挟んだ向かい側で、俺と同じ赤い髪、赤い瞳をした中年の男が、横転した馬車の下敷きになっていた。黒い土の上で、男は血反吐まじりにうめき、悶えていた。馬車からこぼれ落ちた金貨や宝石が路上に散らばり、それを盗賊たちが汚い手でかき集めているのが、視界の端でゆらゆらと揺れていた。


 俺は呆然としていた。


 殺せと言われても状況の把握すらできなかった。なぜなら、そのときはまだ人はおろか、虫すらまともに殺したことがなかったからだ。


 襟首をつかまれ、二、三発、脳が揺れるほど強く殴られて初めて、ここでやらなきゃ俺も殺される、そのことだけは理解できた。俺だって別に、生まれつきおかしかったわけじゃない。


 そうするしかなかっただけなんだ。


 俺は震える手で錆びた剣を拾い上げると、おどおどと振りかざした。そのとき、馬車の下の男が、血の泡まじりに言った。


「――殺せ!」


 その重苦しい咆哮に弾かれるように、俺は首元めがけ、剣を振り下ろした。


 それはとんでもないなまくらで、一度や二度では肉すら断てなかった。骨に当たるたび、手首を痺れさせる鈍い衝撃。飛び散る熱い飛沫。


 それを、


 俺は、


 何度も、何度も、何度も……

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