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5-1

「私はリコリン・サフロール・ジクロロメタンだ」


 翌朝の集団療法(ミーティング)でジクロロメタンは言った。


「私はエリクサー、薬草に毒草、鎮痛剤、麻酔薬、幻覚剤……、魔石、龍鱗、瘴気ガス、そして性転換薬。あらゆる薬物の依存症者(アディクト)だ」


 木箱に入った色とりどりの薬瓶を、一つずつ指さしながら、彼女は噛みしめるようにそう言った。最後に大きなため息をつくと、誰の目も見ず、小さく頭を下げた。「……よろしく」


「よろしく。歓迎するわ」 レイル先生が言った。


 俺も言った。「……よろしく」


「ワン!」 椅子に座ったクレープも、人懐っこくジクロロメタンを見た。


 パイロンが読んでいた本を傾け顔を上げ、マルゴが肩にガーモを乗せてうつむいていた。


 朝の光がホールに差し込み、集団療法(ミーティング)には、初めて全員が参加していた。皆の目の下にはクマが浮かんでいるが、昨夜の出来事を思えば、奇跡に近い光景だった。


 そしてジクロロメタンは、ぽつりぽつりと過去について語り始めた。長い話だったが、誰もそれを遮ることはなく、皆黙って聞いていた。


 俺は手のひらや首輪の裏側に残った昨夜の熱や、わずかに震える呼吸を感じながら、ジクロロメタンの言葉を聞いた。胸の奥でまだくすぶる怒りと緊張を、ゆっくりと吐き出すように、できるだけまっすぐ彼女を見つめた。


 日の光の下で見ると、ジクロロメタンの髪は乱れ、服はくたびれていた。かつてエメラルドのように輝いて見えた髪も瞳も、今はめっきりくすんでいたが、その生々しさに、俺は妙な親近感も覚えた。昨夜、敵対し合った彼女が、今は皆と同じ空間にいる。その事実だけでも、極限の状況からここまで辿り着いた自分たちに、少しだけ安心できた。


 長い時間をかけて、ジクロロメタンの話が終わると、皆の拍手がホールに広がった。パチパチと響くその音に、頭の裏側にこびりついた興奮も、少しずつ溶けていった。首輪の熱もまた、少し引いたように感じられた。


 拍手が鳴り止むと、続いてマルゴが前に出た。車椅子の上でうなだれたまま、彼女は口を開いた。


「ボクは、マルグレット・ド・メッサリーナです」


 少し間を置いて、彼女は深く息を吸う。


「ボクはたぶん自殺狂(タナトマニア)なんです。ボクにとってすべては死の疑似体験で、本当はただ死にたかった。でもボクは臆病で死ねないから、偽物の死でずっと誤魔化してきた、それだけなんです」


 そのまま、昨夜パイロンと何があったか、島に来る前の生活や家庭環境、俺に隠れて続けていた賭けのこと、復活したガーモと再契約についても、彼女はすべてを語った。


 俺はその間、何度も息を整え、ときに深く頷きながら話を聞いた。耳を塞ぎたくなる瞬間もあったが、逃げることはしなかった。昨夜の騒動を経てもなお、まだこうやってここに座っている。それを確認したかった。


 重く苦しい内容だったが、マルゴの声は不思議と落ち着いていた。窓から吹き込む潮風が彼女の顔をなで、トリカブトとアメジスト、両方の瞳に光を映す。その力強い輝きは、過去と向き合う必要があることを、俺に改めて思い起こさせた。


 再び拍手が起こった。それが自然と収まるのを待って、レイル先生が静かに言った。


「よく話してくれました」


 先生は立ち上がり、言葉を続ける。


「依存症は恐ろしい病気です。一生治りません。ですが、いつからでも、何度だってやり直せます。これからの人生、悔いがないよう一歩ずつ進んでいきましょう」


 先生のメガネが少し曇り、俺の目頭も熱くなる。自然に涙が頬を伝った。


「午後はケーキを焼きましょう。今日が皆さんの新しい誕生日です」


 心の奥底で、小さな火がふっと灯った。


 拍手がもう一度広がった。希望と、少しの安堵を伴った拍手だった。

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