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3-14

 それからも俺は、がむしゃらに働き続けた。


 仕事は尽きなかった。やることなんていくらでも見つかった。


 俺は脱穀をし、干し草を作り、籠を編んだ。終わるころには指先が裂け、藁が血を吸って黒ずんでいたが、次の束を手に取った。


 指の傷は増えていったが、痛みはなかった。血が滲んでも、手を止める理由にはならなかった。空腹も眠気も、遠くの出来事のようだった。


 手を止めると、ろくでもないことを考えてしまいそうだった。


 だから俺は、動き続けた。畑の石を拾い、排水溝の泥をさらい、土壁を手で塗り直した。日が落ちても、畑を見回り、鶏舎を確かめ、夜露に濡れた藁を束ね直した。日々の集団療法(ミーティング)がなければ、昼夜の区別すらろくにつかなくなっていたに違いない。


 四十一日目に、マルゴが魔術賭博(ギャンブル)を再開したことに気がついた。


 胸の奥で、何かが一度だけ跳ねた。けれど、その感覚を追いかける前に、俺は手を動かした。そうしているうちに、それ以上は何も浮かばなくなった。


 彼女が失敗したとしても、構わない。俺がその倍、働けばいい。俺が、俺さえ戦わずに耐え抜けば、ガーモは消えて、マルゴは救われる。


 そう言い聞かせながら、俺は堆肥を切り返し、畑を耕した。新たに蒔いた豆の種に水をやり、土が乾いたと思えば、また水をやった。


 その単調な繰り返しの間だけは、マルゴを巻き込んでしまったことを考えずに済んだ。


 六十日目の集団療法(ミーティング)が終わったあとで、レイル先生が俺を呼び止めた。


「タンタルくん、だいぶ無理してない?」


「大丈夫ですよ」


「本当? 目の下のクマがすごいよ。ちょっとは休んだほうがいいんじゃない?」


 先生の額に、深いシワが刻まれる。だが、その深刻さに反して、俺自身の体は驚くほど軽かった。疲労という概念だけが、都合よく抜け落ちてしまったみたいだった。


 なので、


「……先生、診てください」


 俺は自らシャツをまくり上げ、聴診器のベルを胸に押し当てるよう促した。


 首からかかった、二ヶ月記念のライオンが彫られたメダルの横。ちょうど心臓のあたりに、ひんやりとした金属が触れる。その小さく丸いその冷たさは、胸の内側に向かってゆっくりと溶けていく。


 俺の胸の音を聞きながら、先生が呟いた。


「普通、だね。……驚くほど静か」


「でしょう? 絶好調なんです」


「ねぇ、本当に大丈夫?」


「本当ですよ」


 俺は先生の不安を遮るように、力を込めて断言する。


「だって首輪が外れたら、先生にキスしてもらう約束ですからね」


 一拍遅れて、


「……ぷっ」


 レイル先生が、思わず吹き出しかけた。だが、すぐに口元を押さえ、咳払いをひとつした。


「もう。そんな冗談、どこで覚えたの?」


 そう言って、先生は困ったように笑ったが、その目は俺の顔から離れなかった。


「……でもね」


 少しだけ声を落として、先生は続ける。


「元気そうに見えるのと、大丈夫なのとは、別だから」


「…………」


「今日はもう、これ以上は言わないけど、無理は、しないでね」


 念を押すように、言葉を区切ってゆっくりと言われる。


 俺はただ曖昧に笑って、頷いた。笑ったはずだったが、顔の筋肉はどこも動いていないかのようだった。

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