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それからも俺は、がむしゃらに働き続けた。
仕事は尽きなかった。やることなんていくらでも見つかった。
俺は脱穀をし、干し草を作り、籠を編んだ。終わるころには指先が裂け、藁が血を吸って黒ずんでいたが、次の束を手に取った。
指の傷は増えていったが、痛みはなかった。血が滲んでも、手を止める理由にはならなかった。空腹も眠気も、遠くの出来事のようだった。
手を止めると、ろくでもないことを考えてしまいそうだった。
だから俺は、動き続けた。畑の石を拾い、排水溝の泥をさらい、土壁を手で塗り直した。日が落ちても、畑を見回り、鶏舎を確かめ、夜露に濡れた藁を束ね直した。日々の集団療法がなければ、昼夜の区別すらろくにつかなくなっていたに違いない。
四十一日目に、マルゴが魔術賭博を再開したことに気がついた。
胸の奥で、何かが一度だけ跳ねた。けれど、その感覚を追いかける前に、俺は手を動かした。そうしているうちに、それ以上は何も浮かばなくなった。
彼女が失敗したとしても、構わない。俺がその倍、働けばいい。俺が、俺さえ戦わずに耐え抜けば、ガーモは消えて、マルゴは救われる。
そう言い聞かせながら、俺は堆肥を切り返し、畑を耕した。新たに蒔いた豆の種に水をやり、土が乾いたと思えば、また水をやった。
その単調な繰り返しの間だけは、マルゴを巻き込んでしまったことを考えずに済んだ。
六十日目の集団療法が終わったあとで、レイル先生が俺を呼び止めた。
「タンタルくん、だいぶ無理してない?」
「大丈夫ですよ」
「本当? 目の下のクマがすごいよ。ちょっとは休んだほうがいいんじゃない?」
先生の額に、深いシワが刻まれる。だが、その深刻さに反して、俺自身の体は驚くほど軽かった。疲労という概念だけが、都合よく抜け落ちてしまったみたいだった。
なので、
「……先生、診てください」
俺は自らシャツをまくり上げ、聴診器のベルを胸に押し当てるよう促した。
首からかかった、二ヶ月記念のライオンが彫られたメダルの横。ちょうど心臓のあたりに、ひんやりとした金属が触れる。その小さく丸いその冷たさは、胸の内側に向かってゆっくりと溶けていく。
俺の胸の音を聞きながら、先生が呟いた。
「普通、だね。……驚くほど静か」
「でしょう? 絶好調なんです」
「ねぇ、本当に大丈夫?」
「本当ですよ」
俺は先生の不安を遮るように、力を込めて断言する。
「だって首輪が外れたら、先生にキスしてもらう約束ですからね」
一拍遅れて、
「……ぷっ」
レイル先生が、思わず吹き出しかけた。だが、すぐに口元を押さえ、咳払いをひとつした。
「もう。そんな冗談、どこで覚えたの?」
そう言って、先生は困ったように笑ったが、その目は俺の顔から離れなかった。
「……でもね」
少しだけ声を落として、先生は続ける。
「元気そうに見えるのと、大丈夫なのとは、別だから」
「…………」
「今日はもう、これ以上は言わないけど、無理は、しないでね」
念を押すように、言葉を区切ってゆっくりと言われる。
俺はただ曖昧に笑って、頷いた。笑ったはずだったが、顔の筋肉はどこも動いていないかのようだった。




