第6話 ゲームオーバーの世界
「勝機はあるのかい?」
タイガがデスフェアリーの攻撃を避けながら言った。
「分からない! でも、やれるだけやろう!」
俺がそう言うと、アカリがギュッと握った両手を胸の前に出す。
「ドラゴンさん……私でも役に立てるなら、が、がんばる! こ、怖いけど……」
「ありがとう! ムニもいいよな!」
「当然よ! いずれ最強になる私がここで頑張らないで誰が頑張るの?」
「よし! じゃあ、皆攻撃を避けながら俺の作戦を聞いてくれ!」
モンスターは言葉を理解することができない。
大声で話しても大丈夫だろう。
「という訳だ! 皆行くぞ!」
説明を終えた後、俺達は一斉に散る。
複数人が空中で分散したことにより、相手は攻撃先を絞れずに、複数方向に黒いビームのような攻撃を飛ばしていた。
「ふぇぇ……!」
アカリも当然のように飛行していた。
修行もせずにこれとは、恐ろしい才能である。
さて、デスフェアリーが的を1つに絞れなくなった所で、俺達が囲む。
「今だ! アカリ! シャイニングブラスト!!」
「アカリは僕のパートナーなんだけどなぁ」と、タイガが呟いたが気にせずに指示を出すと、アカリはそれに答えてデスフェアリーに魔法を打ち込む。
「い、いくよ!! シャイニングブラスト!!」
再びアカリの杖から、白い極太光線が発射される。
それは正面のデスフェアリーに向かっていく……が。
「避けられちゃった!? けど、これでいいんだよね!?」
アカリがあたふたしながら叫ぶので、ムニの隣に移動して俺は頷いた。
シャイニングブラストはそのまま向かい側の俺達に向かって来る。
「ムニ!!」
「こんなの食らったらやばいわね!! でもこの速度の攻撃なら、余裕よ!!」
ムニは古の刀で、極太光線の中を斬る。
すると、それは振りかざした方向へと、軌道を変える。
そう、古の刀は縛りプレイ用の武器だ。
魔法しか存在しない世界で、唯一の近接武器であるその刀。
近接武器縛りでプレイをすることを想定されて作られた、刀。
そんなそれだが、どうしても魔法を使わなければ勝てない相手と戦わなくてはならない時もある。
そういう時も、近接武器のこの刀だけでクリアできるようになっている。
その方法とは……魔法の反射。
条件は厳しいものの、この刀には魔法の軌道を変える能力が備わっている。
「「いっけええええええええええええええええええええええ!!」」
俺とムニが叫び、軌道を変えたシャイニングブラストはデスフェアリーにヒットする。
デスフェアリーは人間の叫び声ともまた違う、どこか不安になるような声をあげながら消滅した。
◇
デスフェアリーが倒されたことにより、時間は再び動き出す。
ムニとアカリは地面に着地すると、変身を解除する。
「ムニ! アカリ! やったな!」
「さっきも言ったけど、アカリは僕のパートナーなんだけど」
「まぁいいじゃないか!」
アカリは……
「た、助かった……」
と、胸を撫でおろし。
ムニは……
「骨がないわね」
と、少し余裕ぶっている。
さっきは少し怖かったくせに。
だが、そこは言わないでおいた。
「とにかく、皆ありがとう! 今日はもう帰ろう。俺も疲れたし」
今日は本当に疲れた。
主にさっきのデスフェアリーのせいである。
原作だと、アカリがシャイニングブラストを放つと自動的にムービーが流れるので、戦闘については全く心配していなかった。
むしろ、それを見たムニの精神面の心配をしていたのだが、まさかこんなことになるとは。
え、もしかして、これから先も原作通り勝つとは限らないパターン?
だとすると、これから先はその辺りも考えていかなくちゃならないパターン?
いや……そうだよな。
俺はゲームをプレイしていて、ゲームオーバーになったことがある。
でも、それはあくまでゲーム的な敗北。
リトライして勝てば、何事もなかったかのように物語は進む。
けど、実際はそうじゃない。
それだけだ。
今回のはイベント戦闘みたいなものだったから、そこはよく分からないけどね。
とにかく、これから先は考えることが増えそうだ。
「あ、あの……ライン交換ませんか?」
「ライン入れてないわ! 使ったことないわ!」
「え?」
今の所、2人の関係は良好……かな?




