第5話 原作ならここで
その後、決して無理やりでない営業でタイガはアカリを魔法少女へと導いた。
「私……変われるかな?」
「勿論さ! 言っただろ? アカリには才能があるんだって!」
「そ、そんな……私運動も苦手だし……」
そんな会話をしている間、俺は公園の大樹の元へ移動する。
「なにやってるの?」
「ここを掘る! 確かこの辺に……! 俺の体じゃ難しいから、ムニも掘るの手伝って!」
「ええ!? まぁいいけど、きっと何もないわよ?」
“あれ”があるハズだ。
“あれ”とは、縛りプレイ用の装備である。
マジクエはシナリオ攻略後に周回プレイをすることが可能なのだ。
周回する理由は、「他のルートを攻略してみたい」などの理由もあるが、「歯ごたえのある戦闘を味わいたい」といった理由で周回する者もいる。
その歯ごたえのある戦闘を味わいたい人向けの装備アイテムがこれだ!
「その小瓶は確か、アイテムか何かが入っているんだっけ? なんでそんな所に」
「だから言ったろ? 俺には原作知識が……」
「はいはい。で、何が入ってるの?」
小瓶から光の球体を取り出すと、その球体は大きくなり、やがて刀へと変化した。
「か、刀!? っていうか、そもそもその小瓶ってマジカルランドのものよね? どうして人間界にあるの?」
「それは……忘れた!」
確か大昔に人間界であった戦いがうんたらかんたらとか、設定があったけど忘れてしまった。
あくまでも縛りプレイ用のアイテムという意味合いが強いからね。
一応設定はあっても、誰もその辺りは深くツッコミを入れない。
ちなみに俺は縛りプレイはあまりしない為、これを掘り起こした記憶は1度しかない。
その1度も単なる好奇心である。
「その刀、あげる。って言っても、元々俺のじゃないけど」
「魔法少女が刀……?」
「それがあれば魔法が使えなくても、戦える」
ただし、強いとは言っていない。
この刀の効果をおさらいしておこう。
この刀は【古の刀】と言う名で、主に魔法縛りプレイをする際に使用する人が多い。
なぜならば、マジクエには他に近接武器が存在しない為、魔法を縛るのであれば少量だがダメージを与えることのできるこの装備を頼るしかないからだ。
勿論、もっと縛る人は素手縛りなどもするが、あまりにも時間がかかるのでおススメはしない。
「ありがとう。でも私魔法少女よ? 刀なんて振り回していいのかしら?」
「いいんじゃないの? 魔法少女ってアニメとかだと、色々いるし」
話していると、空から禍々しい姿をした黒い妖精のようなモンスターがやって来た。
このモンスターはデスフェアリー。
アカリが最初に戦うモンスターである。
「ええ!? なんか来たよぉ!」
「くっ! 逃げるのは難しいか! アカリ! 変身して戦うんだ!」
「ええ!?」
「いいから早く!」
アカリとタイガの、そんなやり取りが聴こえてきた。
「私達もいくわよ!」
「いや、ここは見ているべきだ」
今のムニが敵う相手ではない。
ここはアカリに任せておけば大丈夫だ。
デスフェアリー自体はそこそこ強いモンスターなので、今のムニであれば大怪我をするだろう。
それに対しアカリは魔法の才能の塊であり、原作でも特に苦戦する様子が無かったので、ここは見守るのが正解だ。
「アカリ! 杖を相手に向けて僕がさっき言った呪文を叫ぶんだ!!」
「え……ええ……っと!! シャイニングブラスト!!」
アカリの杖から白い極太光線が発射され、それはデスフェアリーに向かって伸びていく。
「今ので終わったね。帰ろう」
ムニはデスフェアリーがいたであろう方向を見つめている。
やはり、才能の差を感じ取ってしまったのかもしれない。
でも、だからこそ俺はムニを立派な魔法少女にすると決めたのだ!
「ねぇ」
「心配するな! 魔法少女は魔力が全てじゃない! 色々やり方はあるさ! とにかく、今日は暖かい缶コーヒーでも買って帰ろう!」
「え、でも」
「コーヒーは苦手?」
「いや、そうじゃなくて!」
次の瞬間、俺はムニに抱き抱えられ、空を飛んでいた。
「びっくりした!」
「びっくりしたのはこっちよ! 敵に背中を見せるのは危ないわよ!」
「何言ってるの? 敵はアカリの魔法で消滅……」
したに決まっている。
いやだって、この戦闘ってシャイニングブラストを放ったら終了のイベント戦闘みたいな感じだったし。
「消滅……してない」
「それはそうよ! 確かにあの魔法は凄かったけど、当たってなかったし」
「当たってなかった!?」
どういうことだ!?
え? え? やばくない?
「その口ぶり、あなたはあのモンスターを知っているみたいね。教えてくれない? どうすればあいつを倒せるの?」
「倒し方は……アカリの魔法を当てればいいんだけど……」
俺はイレギュラーな状況に人間の頃から弱い。
どうすればいいんだ?
今までは、ほぼ原作の通り進んでいたがまさかここに来て原作通りに行かないとは。
「えええええ!? 避けられちゃったよぉ!? 次はどうすればいいの!?」
「次も同じだよ! 当てるしかない!」
そんな会話が耳に入ったので、俺達は急いでアカリ達の元へ着地する。
「シャイニングブラストは強力な魔法だけど、消費魔力的に今のアカリだと2度が限界だ! 確実に当てられる作戦を立てよう!」
俺はタイガに言った。
「2度? なんで分かるんだい?」
「えっと……アカリはまだ初心者だ! だから2発が限界かなって」
「ふむ。確かに3発目はキツイかもしれない。けど、どうするんだい? 相手は一度この技を見ているよ。確実に当てるのは難しいと思う」
俺は考えた。
まず今の状況を整理しよう。
ムニは魔法が使えないが、飛行をすることが可能で、武器は古の刀。
アカリはシャイニングブラストがもう1発撃てる。
そして、それを当てれば勝てると。
「よし! 即興だけど、チームワークだ! 俺の作戦を聞いてくれ!」
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