第3話 彼女には話しておこう
俺は人間界に戻ると、ムニの部屋でしばらく待つ。
現在の時刻は16時半、そろそろムニが帰って来る頃だ。
「ただいま」
「おかえり!」
帰宅したムニが部屋に入ると、そのまま鞄をかける。
「学校楽しかった?」
「いつも通りよ」
ムニは学校で話す人はそれになりにいるのだが、休日や放課後に遊んだり話したりする友達はいない。
だからこそ、マジクエの主人公とは友達になろうとするのだが、原作では上手く行かない。
なぜならば、主人公の魔法の才能が圧倒的過ぎて、魔法が使えない劣等感に耐えられなくなってくるからだ。
「ふぅ」
ムニは椅子に座ると、ノートや教科書を開く。
学校の勉強もこうして予習、復習をしているそうだ。
俺の学生時代よりも立派じゃないか。
って、そうだった。
「勉強している所申し訳ないんだけど、今日の夜も空いてる? 渡したいものがあるんだけど」
「渡したいもの?」
「うん。ほら、俺マジカルランドに呼び出されたでしょ? その件で」
「ああ」
勉強に集中している様子で、こちらには顔を向けない。
俺はマジカルランドで貰ったクッキーを、ムニの手元に置く。
「ありがと」
ムニはクッキーをボリボリと食べる。
「おお! 美味しい!」
ムニが年相応に表情を明るくし、手元を右手の平で抑えた。
「ムニ! 後もう1つ聞いて欲しいことがあるんだ!」
「何かしら?」
ムニは、すぐにクールな対応をすると浮いている俺の方に椅子ごと体を向けた。
「それも夜話すよ。大事なことだからね。ゆっくり話したい」
そう、今日話すことは重要なことだ。
もしもこれが1つの物語であったのならば、おそらく終盤辺りに行うであろう話をすることにする。
◇
夜、魔法少女の姿に変身したムニが宙を自由に舞う。
背中からは黒い翼が生えているのだが、それこそが装備アイテム【MU-W】である。
これがあれば魔力が無くとも飛行をすることが可能だ。
「あははは! すっごーい! 私もいつか自分の力でこんなことができるようになるのね!」
凄く嬉しそうだ。
無理もない。
彼女は魔法少女でありながら、魔法を使ったことがないのだから。
「そろそろいいか? 大事な話があるんだ!」
「後少しだけー!」
結局、後30分くらい空を飛んでいた。
楽しそうだったし、ま、いっか!
◇
「で、話って何?」
部屋に戻ると、ベッドの小型ライトのみが付いた薄暗い部屋で、ムニは口を開いた。
彼女はベッドに楽な姿勢で座り、俺は勉強机の椅子に座る形で対面する。
「どこから話せばいいだろう?」
「何が?」
「いや、この世界についてというか、これからのことについてというか……」
「は?」
からかっているように聞こえたのか、彼女は少し眉を動かす。
ちなみに俺が話そうとしていることは、この世界についてだ。
転生系のラノベなら、こういったことは終盤に話すべきことなのだが、隠しておいて闇堕ちルートになるのも良くない。
勿論、全てを話す訳ではない。
一気に闇堕ちゲージがマックスになりそうなことは、話さないつもりだ。
中学生は、色々と不安定な時期なのである。
「ムニ……ここはゲーム【マジカル☆クエスト】の世界なんだよ!」
決まった……!
いや、格好つけては駄目か。
いくら夢の世界とはいえ、こういうデリケートな所で格好つけるのは良くない。
……俺の夢だよな? この世界?
そう……だよな……?
って、俺が不安になってどうする!
「はー……」
ムニは口をポカーンと開けて、今聞いたことが信じられないような表情をしている。
「ご、ごめん! いきなり過ぎたかな?」
すると、彼女はため息をついた。
「信じられると思う?」
「え?」
「いやだって、いきなりここがゲームの世界だとか言われても、私も皆も人間だし、過去の記憶もあるし、信じろって方が難しいわよ」
「で、でも証拠はあるんだ! 昨日バハムートの弱点が分かったのとか、仲間が助けに来るとか分かったのは、俺がそのゲームをプレイしたことがあるからなんだ!」
「プレイしたことがあるって……ドラグは妖精なんじゃないの?」
ドラグとは、この世界での俺の名だ。
「妖精なんだけど、中身は違うんだよ! 人間! 人間なんだ!!」
「人間が生まれ変わったってこと?」
「そう! そうなんだ! 別な日本にいたんだけど、気がついたらこの体になっていたんだ!」




