79 アルバートサイド
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★アルバートサイド
『俺はアリーヤ至上主義。ゆえに俺は『そんな事はしません』よ。『たまたま』その色になっただけ。ですから公爵家のご心配には及びません』
アルバートの脳内にオーランドの言葉が巡る。その通りだ。きっとオーランドは冗談に任せて愛を伝えたり、こんな独占欲を見せながら最後の最後、絶対に深い所には踏み入ってはこない。
オーランドは「自分にはその資格がない」と思っている。それは義理とは言え「兄妹」だからではなく、オーランドが公爵家に世話になっている養子であり、気味の悪い化け物で、そんな化け物には幸せになる資格がないと思っているからだ。
だから、アリーヤが目覚めたあの日も「愛する女性の為ならこの命も捧げる」などと簡単に口に出来る。愛する女性の為ならどんな事があってもその女性を悲しませないよう、生き抜く覚悟を見せて欲しいのに。何より
「私達にはお前も愛おしい息子なのだ……」
「ええ。あの子は結局いつも大事な所で公爵家と言って一線を引くわ」
オリヴィエが自分を慰めるようにそっと肩に手を置く。その手があまりに優しくて涙腺が緩みそうになる。
「私はあの子がどれだけ派手に浮名を流そうと、悪魔だろうと、親バカと言われてもいい。あの子以上の息子を知らないし、あの子以上にアリーヤに相応しい男も知らない。それは使命があるからではない。君もそうだろう?だから殿下との婚約の勅命が下るまで何度も辞退した」
「あなたの言う通りよ。オーリーは使命など関係なく私達の最高の息子で最高の婿なの」
「はは、後者は父親としては少し胸が痛いがな」
アルバートはオリヴィエに軽口を返しながら思う。自分達はルミニス王国の筆頭公爵家の公爵夫妻。王国に、自分達に仇なす者には制裁を加える事に躊躇いはないくらいには清濁併せのむ度量はある。そうでなければ誰もが羨み疎む筆頭公爵家など直ぐに引きずり下ろされる。
「リュクソン公爵は頼りないか?父親が無理なら公爵としてでも良い。あの子に頼って欲しい」
アルバートはもう一度精巧なバラのモチーフのネックレスを見つめる。柔らかなオーランドの髪を彷彿とさせる美しい金のチェーンに、バラの花びらは小さなパライバトルマリンで作られ、バラの中心にはドロップ型の大きなパライバトルマリン。しかも2日で作らせるとは、家の名前を使ったにしても相当の金を払っただろう。その視線に気付いたのか
「意味は愛、美、魅力、そして時には魔除け、だったわ。……あの子がアリーに渡すのにピッタリね」
なんてオリヴィエが微笑ましそうにも切なそうにも聞こえる声で続ける。このネックレスだけでも価値があるのにどれ程の己の魔力と魔法を刻んだのか。
これがきっと適当なものであるなら、オーランドはあの仮面でうるさい程自画自賛するだろう。大切な事ほどあの子は言わない。
「難儀だな……」




