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★アリーヤサイド



「ミリーは面会謝絶だ、眠り姫」

「お、お兄様……!」

「オーランド、どうしてここに!?」


アルバートの言葉にオーランドはよろりとわざとよろけ、美しい金の髪をぐしゃりと掴み、いかにも苦悩しているかように大袈裟に動いては


「ああ!父上!あなたはなんて酷な事を!幾ら私が貴方がたとの約束を破ったからと言って、罰として『アリーヤが目覚めても1時間は会わせない』だなんて!しかも公爵命令とは!社交界一の美丈夫な息子が可愛くないのですか!?……ですが、私の脳内時計では1秒は1000年……10分、つまり60万年も待ったのです。もう十分というものでしょう?」

「お前の脳内時計ではなく、きちんと時計で計って欲しかったのだが……」    


2人のやり取りにオリヴィエがくすくすと笑い、それにつられアリーヤを少しだけ笑みを作ったところでハッとする。


「お兄様、面会謝絶って!?」

「ふむ……面会謝絶は『面会を許可できない状態』の事を言うのだが?寝すぎて言葉を忘れたか?あまりの愚かぶりに同情するぞ、アリーヤよ」   


ああ、やはりあれは夢だった。少しだけ現実にオーランドが本当に魔法を使って自分を救ってくれたような気もしていたが、現実のオーランドはこんなものだ。隙あらば揚げ足をとって嫌味を言うとは。 

    

「もう!お兄様!そう言う事じゃないです!ミリーの事を聞いているのです」

「だから言っただろう。ミリーは『面会を許可できない状態』なのだ。ふむ。理解力の乏しいお前に『この世界で一番お前に優しい私』が説明してやろう」


何が「この世界で一番お前に優しい私」だ。どう見てもオーランドが一番自分に意地が悪いと思う。どうしたらそうも言えるのか。目が覚めてまだ30分も経っていないのになんとも騒がしい。アリーヤは内心でそう反論しながらも説明を待つ。    

  

「父上が言ったように高熱で倒れたのだ。お前は高熱で倒れベッドで唸る所を誰かに見られたいか?そんな所見られたくないだろう?それに高熱の中誰かが居たら逆に落ち着かん。ゆえの面会謝絶だ。女性を気遣える私だから出来た提案だな」


確かにその通りだ。だがアルバートとオリヴィエを見る限りだいぶ危ないのではないだろうか。アリーヤは死にかけたばかりの自分の事を棚に上げミリーを心配してしまう。


「ふむ。心配性のアリーヤよ。お前のそれは美徳だがお前がミリーを気にするように、父上と母上が心配するとは思わないのか?」

「そ、それは……」 

「勿論『愛する女性の為ならこの命も捧げる』『社交界一の美丈夫の私』も!『それなり』にお前を心配しているぞ?」 

「……それはどうも、ありがとうございます」

  

オーランドに正論を言われアリーヤは口篭る。確かにアルバートとオリヴィエの事は考えていなかった。しかし、その後のセリフはどうでも良い。


(愛する女性の為にお兄様が命かけてたら幾つあっても足りないんじゃ……)


アリーヤは思い切りため息をついた。       

***

あれから2日が経った。本当は仕事の事を考えると、目を覚ました翌日にでも王宮に行きたかったが、念の為と休まされた。


その間オーランドはどこかに遊びに行っているようで、ミリーにはまだ会えていない。オーランドはともかく、ミリーは高熱が続けば死に至る。正直不安だ。何度かミリーを見に行こうと部屋を出ようとしたが、ドアの前には使用人が監視をしており、すぐに部屋に戻された。


(行ってはいけないとは分かってはいるけど、心配だわ……) 


「せめて状況が聞けたら良いのに……」

「ふむ。状況か?」

「お兄様……!お兄様は何故そういつも神出鬼没なのですか?ノックをしてくだませ」

「安心しろ。ノックはした気分になっているからな。アリーヤ、お前もその美しい心の目で聞いてみろ。ノックされた気分になっただろう?」    

「気分では意味が無いですわ……」

 

アリーヤははぁと、ため息をつきつつも、状況を教えてくれるのかとオーランドに尋ねる。


「これはな、あまり言いたくなかったのだが……」


オーランドはとても神妙な面持ちで口を開く。いつもと違うオーランドの真面目な雰囲気に、アリーヤはミリーはかなり悪い状態なのだと思い至り、思わず前のめりに聞いてしまう。 


「無事なのですか!?」

「……無事では無い」


オーランドは静かに話す。アリーヤはベッドから淑女の顔をかなぐり捨てて駆け出しそうになるのを、オーランドの骨ばった大きな手で止められる。


「お兄様!止めないで下さい!」

「慈悲深いアリーヤよ、童貞王太子や阿婆擦れの話は兎も角、私の話は最後まで聞くものだ。それに淑女教育で習わなかったか?如何なる時も顔に出すなと……ふむ、これは以前も似たような事を注意したな」


オーランドはアリーヤの手を掴んで居ない方の手で顎をなぞり悠長に話す。 

 

「最後までって!どう言う……」

「振られたのだ」        

「……はい?」

「何度も言わせるな。麗しい乙女の傷を抉るとは、お前の慈悲深さは浅かったようだな。あまりに酷な事をしないでやっておくれ」


いや、しかし、オーランドは今「振られた」と言わなかったか?あんなに幸せそうなミリーがマーチンに振られるなど有り得るのだろうか。恋愛をした事の無い自分には想像のつかない何かがあるのかも知れない。


それにしても振られた?高熱ではなく?オーランドが何を言っているか分からず少しつり上がったアメジストの瞳をぱちくりさせる。オーランドはアリーヤのその顔に静かに優しく頭を撫で、困ったように微笑む。


「とても不幸な話だ。ミリーはそれで心を病んでしまってね。本来ならこんな事で休ませるような事はしないのだが、今回は特殊なのだ。ゆえに父上と母上と話し合って高熱で倒れた事にした。他の使用人に贔屓しているとは思わせない為にもね」

「それは……どう言う……」


確かに、アリーヤ個人としては誰の身に起きたとしても傷が癒えるまで休ませてやりたいが、公爵家の使用人、いや、どこの使用人だろうと普通はそんな事許されない。それは勿論リュクソン家でもだ。だと言うのに


(ミリーの恋愛にお父様、お母様、お兄様が話し合ったの?異例過ぎる……何があったの?)


アリーヤの疑問が顔に出ていたのだろう、オーランドは頭を撫でていた手を静かに頬へと滑らせ、いつもより優しい声色で

 

「私の優しいアリーヤ、お前のその優しさは今のミリーには辛すぎる。姉のように慕っていたのだ。聞きたい気持ちは分かる。私達はたまたまその場に居合わせたから知ってしまったが、ミリーの許可なく話して良い話ではない。今は何も聞かずにそっとしといておやり」    

    

甘くアリーヤに言い聞かせるように話す。そっとしろと言うと同時に、まるで静かにと言うようにアリーヤの柔らかな唇を数度親指で撫でる。その手つきに何処か恥ずかしさを覚え、アリーヤはただコクコクと頷くばかり。するとオーランドは形のいい唇を少しだけあげ


「さすがは、私の可愛いアリーヤだ。いい子だ」  


目を細め、いつもの兄とは違う、まるで別人のような雰囲気で額に優しくキスを落とす。額のキスなど子供扱いされているだけだと言うのに、夢の中のオーランドと重なり顔が一瞬で火が出そうなほどに熱い。


「おや。この位は挨拶だと思っていたが、お前には刺激がすぎたか?初心なアリーヤよ。しかしその顔は私以外の前でするのはやめた方がいいな。さぁ、明日から王宮に行くのだろう。もう少しおやすみ」


オーランドがそう言うとアリーヤは夢の中に静かに旅立った。 

 


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