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69 アルバートサイド


★アルバートサイド



あの後ミリーの処罰が決まったところで5人は解散になった。オーランドは自室に戻り、アレンは客室に。ミリーには一応罰として1週間の謹慎を言い渡している。そして今、執務室にはアルバートとオリヴィエがだけがいる。


『ははっ。公爵夫妻、それはあまりに甘いお言葉だ。女性に愛を囁く『私』ですらその甘さに舌を巻きますよ。『これ』は公爵令嬢を……貴女方の愛娘を自死寸前まで追い込んだのです。知らなかったでは済まされません。奴らの責任は重大では?社交界では、その甘さが命取りになることもご存じでしょう?』  


アルバートの中でオーランドの嘲笑する声がこだまする。


(私達の願いの為に自分を悪者にしてでもミリーを助けたオーランド……どちらが甘いと言うのか)


「私はお前がその優しさで社交界で足を掬われないか心配だ……」    

「あなた……」


オリヴィエは静かにアルバートの手にそっと自分の手を重ねる。

 

「分かっている……」


2人ともまだ自覚はないが、アリーヤは『言霊の継承者』でオーランドはその言霊の継承者の『守護者』だ。そして2人はこの王国になくてはならない存在。ミリーは無自覚とは言えその「なくてはならない存在」のアリーヤを自死に追いやろうとした。その罪は本来なら死ですら温い。


近いうちに2人には説明せねばならないが、あの時オーランドは「王太子の婚約者の公爵令嬢を自殺させようとした罪」でミリーを死罪と言っていたが、きっとあれは建前だ。


以前もオーランドは自分が公爵家の養子となった最大の理由を感じ取っていた。あの子なりに自覚は無くとも『守護者』としてアリーヤが死ぬ事の意味を本能的に分かっていたのだろう。ゆえにオーランドがミリーに言った処罰は正しい。


それでも自分達がミリーに同情してしまったこと、アリーヤを悲しませたくない事を理解し、彼は自分を悪役にしてミリーを助ける口実を作ってくれた。だけでなく、ミリーに私達に恩義まで感じるように仕向けた。


「あの子は頭が良すぎて、優しいのにその優しさを感じさせない」

「演技が上手すぎるわ。先程の事も私本気で訴えてしまったもの」 

「ああ、親として不甲斐ない。あの子が私達を『公爵夫妻』と呼ぶたび、自分を未だ余所者だと思っているようで辛くなるよ。あの子だって私達の子供なのに」   


アルバートは顔を俯かせてぽつりぽつりと言葉をこぼす。その顔はただ子供を心配する父親だ。


「あら。その方があの子にも都合が良いかも知れないわ?『公爵夫妻、娘さんと結婚させて下さい』と言いやすいもの」

「どうだろうな。あの子は余程の事がない限り、アリーヤと私達の幸せを優先するだろう」

「なら、簡単だわ。私達とアリーの幸せはオーリーといる事だもの」

「何!?アリーヤも既に『そう』なのか!?」


「さぁね」とオリヴィエは楽しそうに微笑む。オーランドがアリーヤに特別な感情を持っているのは直ぐに分かった。無意識なのか意識的なのか不明だが、アリーヤの事をオーランドは一度も「妹」と言ったことが無いのだ。


私もオリヴィエも辛い使命があるからこそ2人の幸せを願わずには居られない。だが、アリーヤにはもう少しだけ好きな男は作らないで欲しいとアルバートは思ってしまった。


  

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