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★アリーヤサイド
死にたがり?それは死んでいないと言う事なのか、いや、それよりも
「なぜ、お兄様がここに?」
「相変わらずお前は『精霊すら恋をする』私に冷たいな、アリーヤよ。ふむ。そうだな、何度起こしても、あまりにぐーすかと淑女としてあるまじき大きないびきをかいて寝ている物だからね、見ていられなくて起こしに来たのだよ。お前は美貌だけが取り柄だと言うのに、いびきなぞかいては夫に幻滅されるぞ?」
「殿下には既にリリアーナ様がいますので、今更幻滅などなさりません。それと、精霊様が恋をなされたとしてもお兄様だけは有り得ませんわ」
「お前はだから頑固で愚かで不器用だと言われるのだぞ、アリーヤ。いいか?アリーヤ。あの童貞王太子などどうでもいい。父上と母上、私、ウィルソン家全員で婚約を破棄させよう」
「どっ……」
オーランドのあられもないレオナルドへの発言にアリーヤはオーランドはオーランドだなと思いつつも、下品な言葉に慌ててしまう。するとそんなアリーヤの頬に静かにオーランドの手が触れ
「仮に無理なら……私がお前を連れて逃げよう」
「!!!」
オーランドのセリフに顔が一気に赤くなる。妹を心配しての言葉だと言うのに、どこか甘い響きに、心が嫌でも震えてしまう。きっと精霊が最期に見せてくれた都合の良い夢なのだろう。
「精霊の奇跡に思われるのは心外だ。社交界一の美丈夫の私が可愛いアリーヤの夢に入って起こしに来たとは思わないのかね?」
「夢に入る?そんな魔法聞いた事ありませんわ」
「それはそうだ。私が今作ったのだからね」
「まぁ、お兄様ってば」
あまりに自信満々に嘘をつくのでつい笑ってしまう。オーランドが言うとそれが事実のように聞こえてしまうのだ。
「……さて、アリーヤ。お前とこの世界に二人きりというのもなんとも捨て難いのだがね。ここにいると二人とも死んでしまう。お前はどうしたい?私はお前に付き合おう」
「そんな……!!」
オーランドの瞳は真剣だ。自分がここに残ると言えば、オーランドもここに残るだろう。けれどそれはオーランドが死ぬと言う事。ここが現実なら勿論、夢であろうとオーランドを死なせる訳にはいかない。
「心優しい私のアリーヤよ、私を死なせたくは無いだろう?」
優しく微笑む姿は悪魔のようだ。オーランドは自分自身を人質にしてアリーヤを脅してくるのだから。
「お兄様は酷いですわ……」
「何を言う。愛しいお前の為なら自分ですら利用するさ」
そう言うとオーランドは優しくアリーヤを抱きしめ少しだけ熱の篭った視線を向け
「お前は俺の隣で可愛く笑っていれば良い。」
そう言って蕩けるように微笑み額にキスをした。




