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57 オーランドサイド(過去)


★オーランドサイド(過去)

 


あれは14年前、当時、オーランド5歳、アリーヤ3歳の時だった。両親は王宮に呼ばれて家を留守にしていた。アリーヤとオーランドはその日も一緒に遊んでいたが、オーランドがトイレに行ったその返り


『おにいちゃん、たすけて!たすけて!!こわい!!』


頭の中にアリーヤの声が響いた。何が起きたかはよく分からなかったが、アリーヤが助けを求めている。オーランドは瞬間移動をしアリーヤの部屋に行くとアリーヤの顔色は白く、体の力は抜けぐったりとしている。


目の前には「瞬間移動」したオーランドに驚くメイドが一人。当たり前だ。瞬間移動は「大人の魔術師でも難しい高等魔法」だ。


オーランドはすぐさま状況を理解した。アリーヤの暗殺だ。オーランドはメイドを今にも殺したかったが、僅かな理性で身動きが取れないようにと氷で足枷を作るだけだった。その時


(おにいちゃん……)


今にも消えそうなアリーヤの声がオーランドの頭に響く。と、同時に自死しないように氷で足枷を作るだけが、メイドを氷漬けにし、部屋中が冷気が漂う。


(どう言うことだ!?)


だが、今はアリーヤだ。両親に念話でアリーヤが暗殺されかけた事を伝えながら、オーランドはアリーヤに魔眼を使い、魔力の流れを確認する。健康な体であれば、魔力は滞りなく滑らかに全身を巡り、病気や怪我、毒、あるいは外部からの魔力的な干渉があると、その魔力の流れに「乱れ」「滞り」「異常な波動」生じる。


結果、アリーヤにはとても強い呪詛が掛けられており、内臓も弱り、血液の巡りも魔力の巡りも弱い。3歳の子供にはもう虫の息だ。オーランドがトイレに行った僅かな時間でそんな事が可能なのか不明だが、事実アリーヤは危機的状況だ。


オーランドは泣きたくなるのを我慢しながら、化け物と呼ばれた知識により、およそ常人とは思えない速さで呪詛を理解し、絶望する。


解呪するには術者を自分の目の前で殺すか、アリーヤを殺すかの二択しかない。アリーヤを手にかけるなどあってはならない。とは言え黒幕を殺したいがそいつを探しているうちにアリーヤが死んでしまう。


彼が深く深呼吸をすると、瞳は一瞬、全ての色を吸い込んだかのように深く沈む。アリーヤを蝕むその呪詛は、あらゆる魔法の理に反し、まるで生き物のように蠢く禍々しい『歪み』の魔力だった。


(解呪する暇が無いのなら、呪いそのものを『なかった事』にすればいい。)


オーランドの脳裏には、その禍々しい魔力の『歪み』を根元から強制的に捻じ伏せ、本来の形へと『再構築する』絶対的な術式が瞬時に組み上げられていく。それは、この世界に存在するいかなる魔法とも異なる、彼自身の『法則ルール』だった。


確かにほぼ力技だが出来ない事はない。けれどそれは、魔力を十分に有していた場合だ。オーランドの魔力は5歳の時には既に筆頭魔術師50人分になっていたが「理」を変えるのだ。この倍は必要だ。


(おに……いちゃん……)

 

するとその時、脳内の声すらもう聞き取れない程に弱々しい。なのに、アリーヤから光の粒があふれ出しオーランドへと流れ込む。


(なんだ……これは?魔力が……増幅している?)


考えている暇は無い。増幅した魔力によってオーランドは術式を展開させ生命活動や肉体構造を、オーランドと遊んでいた時のアリーヤまで「巻き戻し」、完璧な状態へと再構築する。


(これは、理の外の魔法だ……)

  

どれだけ危険な魔法かオーランドは理解しながらも、アリーヤが生きるならと構わず使う。アリーヤを見ると光の粒がだんだんと消えていく。「アリーヤ!」オーランドは慌てて叫ぶが呼吸は安定し、顔色も良い。魔眼でもう一度「見れば」どこにも異常はない。思わず安堵のため息が漏れる。


制御が上手くできず凍らせた侍女見てオーランドは今度は後悔のため息を漏らす。黒幕を聞くつもりだったのに殺してしまった。


アリーヤに少しの汚い物も何も見せないようにオーランドはアリーヤを抱きしめ、氷漬けにしたメイドを次の瞬間、まるで最初からそこには何も存在しなかったかのように、完璧に消滅させた。その場に残ったのは、冷気すら感じさせない、完全な虚無だけだった。 


「遅くなってごめん……頑張ったな」

 

疲れたのだろう、寝ている彼女を見てオーランドは、愛しさ、後悔、苦しさが綯い交ぜになった複雑な瞳でアリーヤを見つめ、優しく頭を撫で回復魔法をかける。


と魔力切れで倒れた。

 


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