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54 ミリーサイド


★ミリーサイド     



オーランド様からペンダントの鑑定結果はまだ聞けていない。お嬢様を見るオーランド様はいつもお辛そうで、そんな彼に使用人からたかたが結果を催促するのも気が引けてしまう。


それに最近のお嬢様は気分が良さそうだ。相変わらずお声は出ないが、眠気はあるものの、悪夢は見ないらしい。今はそれだけでも良しとするしかないのだろう。  


(それでも、やっぱり早くネックレスを返して欲しいわ……)


そんな事を考えてながら使用人の食堂で食事をしていると別の使用人から自分に客人だと裏口に呼ばれた。


「マーチン!」


思わずミリーはかけ出す。「どうしたの?」と尋ねたらウィルソン公爵領に用事があったらしくその帰りに顔を出しに来てくれたらしい。


話を影でニヤニヤしながら聞いていた使用人たちは自分に街に買い物を頼み、デートをしてこいと送り出してくれた。お嬢様がお辛い時に自分だけ申し訳ないと思いつつも「少しだけなら……」と有難く二人で街に出た。


「ミリー、変な事聞くのだが…俺の渡したネックレスは付けてくれているだろうか?」

 

街を歩いていると、不意の質問にミリーはドキリとした。が、素直にオーランドに鑑定をお願いした事を話す。

 

「オーランド様がね、何度も偽物だって言うの」

「……偽物?」

「大きい珍しい宝石を騎士が買えるはずがない。『お前の恋人は店に騙されたんだ』ってね。それで鑑定するから貸せって」 

       

今思うと少し強引なする気もする。ミリーは頬を膨らませぷくぅと怒る仕草をする。


「もし仮に、マーチンが渡した物が偽物だったとしても、マーチンがくれた気持ちは本当だから私には本物よ。けど、どうして付けてないって思ったの??」 

「ミリー……」


マーチンは思わず街中で抱きしめる。


「マ、マーチン!?どうしたの!?」


ミリーはいきなり抱きしめられた事に先程の疑問などすっかり抜け落ち、恥ずかしがるとマーチンも「つい……」と頬を染め頬を指でかきそっぽを向く。


つい、で抱きしめるのかとミリーはくすくすと笑ってしまう。マーチンもそんなミリーに笑みを返し、その後頼まれたものを買いながら露店を回っていく。するとマーチンがふと足を止める。


「マーチン?」


マーチンが足を止めた視線の先にはピンクの透けた石で出来ている愛らしい花の形をしたペンダントがある。

   

「可愛いわね!宝石?ガラスかしら?」


ミリーが近づくと「気に入ったのなら安く売るよ」と露店の男性がにこやかに話す。

  

「公子様に取り上げられたままだと俺が悲しいからな……今回は安物だけど……」


そう言ってマーチンは露店で直ぐに購入し、ミリーの首に花の形をしたペンダントを送る。


「次は公子様には見せるなよ。また取られたら敵わん」

「ありがとう。そうするね」

 

シャラリと艶めいた指の動きでネックレスをなぞるマーチンにミリーは顔を赤くした。


その後、お嬢様にいつもより機嫌が良いのが見抜かれてしまい、今日貰ったばかりのピンクの花のネックレスを見せる。緑のペンダントはどうしたのかと視線で問われたので、オーランド様が宝石に興味を持たれたから預けていると説明した。



お嬢様が顔を膨らまし一緒に怒ってくださった事が嬉しい。そしてそのあと「ミリーに似合ってるわ」と声が出ない代わりに、口を一生懸命動かし微笑んだ。     

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