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49 オーランドサイド


オーランドサイド


公爵には半ば無理やり命令を出させた感じにはなったが、今までアリーヤが眠る度に自分が付き添っていた事、その事実が自分の行動をこうも制限させられるとは思わなかった。


自分がアリーヤに付きっきりな事はミリーが一番知っている。どんな時でも人前で女好きの仮面を外すべきでは無かった。そうすればもっと簡単に気分屋のように動いて監視も欺け、ミリーも楽に外に連れ出せたはずだ。何度も言い聞かせていた事なのにアリーヤが倒れるとすぐにこれだ。


おかげでミリーをアリーヤから離し連れ出す口実を作るのが大変だった。しかし「アリーヤの気が紛れるものを贈りたい」と言うのはなかなかに上手くできたと思う。


ミリーにはまぁまぁな兄として、仮に監視がいたとして、監視には自分がアリーヤを出しに女性と出かけたい女好きだと思われるだろう。アルバートも何かを察してか、そう印象づけるように話してくれた。    

 

(さすがは筆頭公爵家当主だな……)  


「オーランド様!こちらはどうでしょうか!?」


ミリーはそんな自分の考えを知らず本気でアリーヤへの贈り物を悩んでいる。本当に彼女が術者なのか。未だに信じられない。もしこれが全て演技だとしたら……自分は強敵を前にしているかもしれない。


(気を引き締めなければ……)


「ふむ。悪くないアリーヤはこう言う物が好みなのか?」


ミリーの指さした方向には可愛らしい表紙の恋愛小説がある。

  

「ええ。お嬢様はご自分が恋愛結婚を出来ない代わりに私の話を聞くのがお好きで……」

「君のか……私にも聞かせてくれないか?」

「オ、オーランド様にですか!?」

「異性の相談相手がいると言うのは以外に役立つものなのだよ。例えばプレゼント選びとかね」


オーランドは自分の顔を充分見せつけるように使いウインクをする。ミリーの顔が少しだけ赤くなる。


「変な男が絡んできたのを助けてくれたのが出会った切っ掛けです。実直で口下手で……その代わり一生懸命態度で表してくれて。それが可愛くて」


花も綻ぶな笑顔でミリーは話す。本当に相手の事が好きなのだろう。しかし、実直な男が態度で表すと言うのは少しだけ違和感がある。勿論オーランドの主観だが、実直で口下手は男は往々にして態度も分かりづらいものだ。


「ふむ。例えば、どんな態度を?」

「そ、そこまでは!!」

「なに、アリーヤには話したのだろう?1人も2人も一緒だ。それにこう見えて私は口が堅い。うむ。丁度いい所に貴族向けのカフェがあるな。君の気分転換も兼ねているんだ。紅茶を飲みながら聞かせてくれたまえ」


そう言って右手を差し出せば、抵抗しても無駄だと思ったのだろう。ミリーは従うように自分にエスコートされる。使用人をエスコートなど普通ならありえないが、自分は女好きの浮名を流す男だ。その上、上の立場からの誘いは断れない。権力とは実にありがたい。


店内に入ると女性達が色めき立つのがわかる。監視が付いているかは不明だが、女好きをアピールするように女性達にウインクしては、店員に金を渡し個室へ案内してもらう。


「そこまでしなくても…」とミリーの声が聞こえたが、こちらとしては邪魔をされずに話したいのだ。紅茶とケーキを頼みそれらが来ると「では、先程の続きと行こう」と有無を言わさぬ声で促す。ミリーは深呼吸をしたあと顔を染めおずおずと口を開く。


「マーチン、恋人ですが、彼は誕生日に薔薇をくれたり、素敵な服を買ってくれたり、少し高級なディナーや、素敵なネックレスをくれたりして……」

「ネックレスを?」


今までの事があり、つい少しだけ食い気味に反応してしまった。ミリーが少しだけ目を丸くする。


「ああ、すまない。随分、その彼は裕福なのだと思ってね」

「私もそう思います。今回が初めての私の誕生日と言う事で張り切ってくれたそうです。それで自分の事だと思って毎日身につけて欲しいとネックレスを渡された時は驚きました」

「因みに、それは今もしてるのかい?」


「お嬢様にはきちんと了承を得てますからね」とミリーは付け加えて服の下からネックレスを取り出す。その瞬間、微かな緑の靄が揺らいだように見えた。それは、アリーヤの周囲から感じ取った、あの忌まわしい『淀み』の片鱗だ。


「これは……」

「マーチンの瞳と同じ緑なんです。なんでも『隣国産』でわざわざ取り寄せてくれたんです」


嬉しそうに話すミリーにオーランドは心が沈む。


「どうかしましたか?」

「ああ、いや、少し前にこれと同じ宝石を付けている人を思い出してね。」


:沈んではダメだ。仮に監視がいたのなら、今は見破られてはいけない。オーランドは感心するように話す。

  

「そうなのですか?。」 

「ああ。公爵令息の私もこの宝石を知ったのはつい最近の事でね」

「お嬢様も似たようなことを仰っていました」 

「ふむ。公爵家ですら見た事のない宝石を買える君の恋人はさぞや立派な職業に就いているのだろうね」


いかにも興味津々といった表情でネックレスとミリーを皇后に見やると、ミリーは少し照れた、しかしとても幸せそうな顔で答える。

  

「ええ。騎士をしているんです。ドーソン伯爵家の」



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