47 オーランドサイド
★オーランドサイド
オーランドはその可能性に気付いた時、知らず息を呑んだ。
そんな事ある筈がない。ある筈がないが……彼女が本当に術者なら、いつだってアリーヤに悪夢を見せ放題だ。屋敷に張り巡らした自分の魔力の網にも引っかからない。
何故なら自分が「ミリーを除外」していたからだ。どう見てもアリーヤはミリーを信頼し、ミリーもまたアリーヤを信頼し、妹のように可愛がり、誰が見ても誠心誠意真面目に仕えていた。だが、一度浮かんだ疑問は消えない。
オーランドはアリーヤが目を覚ます頃合いを見て静かにアリーヤの部屋を出る。もし、ミリーが術者ならこの7年、彼女は化け物と呼ばれた『俺』を欺いてきた事になる。そんな彼女にどうやって立ち向かう?
だいたいアリーヤが悪夢を見だしたのはつい数日前だ。悪夢を見せるにしても進行度が早い。この7年ずっと潜入していたなら、寧ろもっと前から悪夢を見させていても良い。なぜ今になって動いた?
それよりも一番簡単なのは「誰かに脅されている」事だ。無いとは思いたいが、ミリーが何らかの悪事を働き弱みを握られたか。いいや、もっと確実になのは、家族か、恋人か、大切な誰かの命を盾に取られている時だ。
落ち着け、落ち着け。感情的になってはいけない。公爵夫妻に楯突いた時のようになってはいけない。今もどこかにドーソン伯爵の監視がいるかもしれない。気付いた事に気付かれてはいけない。何よりミリーの話はあくまで仮定の話だ。
まずはミリーに確認する必要がある。どうにか上手く切り抜けなければ。オーランドは自室に戻ると便箋とペンを取った。




