44 オーランドサイド
★オーランドサイド
オーランドは久々に見たアルバートの公爵家当主としての顔に口篭る。たった一人の実の子供だ。両親だって断腸の思いで口にしているのだ。もし、自分に今、その資格があったのなら……そう思うと己の不甲斐なさに血が出そうな程に拳を強く握ってしまう。
瞬間、自分の魔力が波打った。オーランドは何も言わず執務室を飛び出した。
「アリーヤ!!」
オーランドはそれこそどこかの王太子のようにノックもせず、大きい音を立てドアを開き急いで駆けつける。
ミリーが視界の端で驚いたのが見えたがどうでも良い。アリーヤの周りには歪んだ魔力が巻きつき、アリーヤの中に入って行くのが見える。
「やめろ……やめてくれ……」
何とか食い止めようと今できる最大限の魔法と魔力でアリーヤを守る。顔色や呼吸は何とかほんの僅か落ち着いて来ているが、それも焼け石に水だ。
先程よりはアリーヤへの歪んだ魔力の侵入を止められても、王宮よりもずっと濃いこの魔力を全て入っていくのは止められない。自分はなんと無力なんだ。「アリーヤを護る」それは自分にしか出来ない事なのに。
ふとアリーヤの目が覚める。名前を呼び彼女の顔を覗き込む。まだ顔色は悪いがそれでも先程よりは幾分かマシだ。アリーヤがそっと自分に手を伸ばしその手を止めるのが分かった。
構わずその手を握るとアリーヤは思い切りその手を振り払う。『触らないで!』アリーヤの強い拒絶の言葉が頭の中に直接流れ込んでくる。
そんな事を言わないでくれ。お前に拒絶されたら俺はどうやって生きていけばいい?オーランドはアリーヤの言葉に知らず涙をこぼす。情けないところを見せている。余計に幻滅されるだろう。だが、意外な事に彼女は俺の涙を拭った。
その優しい手にオーランドは目を瞑る。ああ、そうだ。例えアリーヤに嫌われても良い。アリーヤを護れさえすれば。アリーヤの生きる世界を護れればそれだけで良い。




