表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/94

40 オーランドサイド


★オーランドサイド



阿婆擦れと茶会をしながら新たに聞き出せた事は幾つもあった。まずは、リリアーナを紹介したのがドーソン伯爵だと言う事。童貞王太子の話し相手らしいが、婚約者のいる男性に同じ年頃だからと「あの人格者のドーソン伯爵」が異性を紹介などするだろうか。


例えマナーがなっている女性であっても、婚約者が居る人間に同じ年頃の女性を紹介などしない。紹介するとしてももっと年上のご婦人だ。


勿論これが野心溢れる家柄ならそんな事も有りうる話だが「人格者のドーソン伯爵」だから違和感しかないのだ。しかも淑女としても人としてもどん底の人間を紹介など。


他にも緑の宝石をリリアーナを通じて国王や王妃にも献上していた。珍品を国王や王妃に贈るのは何も不思議ではない。ただ、この気持ちの悪い宝石が王宮中に入り込んでいる事に気味が悪い。


毎日同じネックレスを着けている事も言及すれば「ドーソン伯爵」に「養子になった時、ドーソン伯爵家の一員として渡された」やら「絶対に外してはならない」などと強く言われた事をペラペラと話してくれた。


化け物と呼ばれた俺の記憶によれば、リリアーナが養子になったのは5年も前の話だ。リリアーナが社交界に出てきたのはデビュタントを果たしたつい最近の事だが


(つまり、5年前には既に緑の宝石は存在していた事になる。)


伯爵曰く、最近発見された隣国産の宝石。5年前を「つい最近」と称するのかは個人の感覚に寄るものだが、少なくとも5年もあれば、誰かしらその宝石をつけていてもおかしくない。何せ貴族は流行に敏感で珍しいものに目がない。


かく言う社交界一の美丈夫な「私」はその最たる人物だ。公爵家で金もある。その「私」が持っていないのはおかしい。      

   

(何が起きている──?)


オーランドが更にリリアーナから聞き出そうとした時、地面にどさりと何かが落ちた音がした。急いでそちらに迎えば


(アリーヤ!?)


既のところで声を上げずに済んだ。顔は青白く意識は無い。昨日よりも危険な気がする。オーランドは取り敢えず昨日と同じように、周囲に気づかれないようアリーヤにだけ水魔法をかける。


「オーランド様?何かあったんですか?」  

「ええ。蛇が……ご令嬢が噛まれたとなれば一大事です。どうか先にお下がりください。私は蛇を始末して来ますので」


オーランドは自分の魔法でアリーヤは見えなくなっているが、念の為「蛇」だと誤魔化す。王宮にそんな危ない生物が居るなど有り得ないのだが、不意にその言葉が出たのは、蛇のようにしつこいリリアーナと会話をしていたせいかもしれない。

 

私も行きます。なんて変な正義感を出されなくてよかった。オーランドは自分にも水魔法をかけ姿を見えなくしてアリーヤを馬車まで運び終えると、自分にかけていた魔法を解き近くの者にミリーを馬車まで来るように言付ける。


程なくしてミリーが慌てて馬車に乗り込み公爵家へと発車してようやくアリーヤの魔法も解く。


ミリーは目を離した事を何度も謝罪していたが、ミリーは何も悪くない。最大限いつもアリーヤに尽くしてくれている。今回トリガーを引いたのは自分とリリアーナの茶会だ。そう言えば昨日も阿婆擦れと会話をしている自分を見て倒れた。


(何か倒れる条件でもあるのか?)


例えば自分と阿婆擦れが会話をしていると倒れる、などと。自分の知識が化け物級だとしても、知らないだけでそんな魔法があってもおかしくない。だが、仮にあったとしてどうやってその魔法をアリーヤにかける?


この数日でいちばん怪しいのは童貞王太子か阿婆擦れだが、彼らにそんな上級魔法が扱える魔力も技術も無い。仮に出来たとしても、あいつらは基本的にどんな事にも詰めが甘い。自分ならすぐに2人を捕まえられる。


(それに条件で倒れるなど、魔法と言うより──)


ふと身じろぐアリーヤの声が聞こえた。取り敢えずはアリーヤが落ち着いてから考えよう。オーランドは優しくアリーヤの肩を抱きしめ、少しでも体が楽になるように自分の魔力で歪んだ魔力を静かに吸いとっていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ