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★アリーヤサイド
(執務室を出てから体が重いわ……)
アリーヤがオーランドを探しに王宮を歩いていると、耳障りな甲高い笑い声が聞こえる。今は聞きたくなかった。そう思っていると
「オーランド様ってばぁ、そんなに褒めても何も出ないですよぉ」
更に聞きたくない言葉が耳に入ってくる。
(今、お兄様の名前!?)
アリーヤが声のする中庭の方へと見つからないように近寄っていくと、オーランドとリリアーナが楽しげに紅茶を飲んでいる。
(……う、そ)
別にオーランドが女性と茶を囲んでいるのなんて不思議でもなんでもない。寧ろ予想はしていた。ただそれがリリアーナなだけだ。けれど──
(夢と同じように、私は独りになるの……?)
そう感じた瞬間、頭痛がしてくる。
大丈夫だ。オーランドは「ここにいる」と言ってくれた。いつもは口が上手くいい加減で信用できないが、あの時のオーランドはいつもと違った。
(大丈夫。お兄様の事は信用出来るもの……)
ズキンズキンと頭が痛み、思考力を奪っていく。
胸がドクドクと緊張で大きく鳴っている。時々リリアーナのはしゃぐ声が聞こえるものの、二人がどんなやり取りをしているかまでは推測できない。ふと、リリアーナの指にキラリと光る緑の宝石の指輪が見えた。
(──あの指輪は……!)
あれは夢でオーランドがリリアーナに渡したパライバトルマリンの指輪ではないか?それは違う。オーランドはリリアーナに水一滴すら渡したくない程リリアーナを嫌悪している。
その証拠によくよく見れば、リリアーナの指輪は緑に光って……いや、本当にそうか?自分の見間違いでないだろうか。
ああ、だめだ。更に頭痛が酷くなる。頭が割れそうだ。もう
(何も考えられない──……)
アリーヤは意識を手放した。




