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38 オーランドサイド


★オーランドサイド    

   


「オーランド様、みーっけ!」


変わらず甲高い媚びた声で自分の名前を呼ぶリリアーナにオーランド内心顔を顰める。その声を聞くくらいなら何十頭も用意された馬の嘶きを聞いた方が百倍マシだ。


自分の女性関係の派手さを聞いたのか、リリアーナは自分を熱ぽく瞳を潤ませてこちらを見ている。が此方にも選ぶ権利はあるのだ。と言うかその想像を今しているのかと思うと反吐がでそうになる。さすがは阿婆擦れだ。


(しかし、相変わらず今日も下品な派手さだな……) 


「これはこれは、ご令嬢。今日も一段と眩いですね」

「オーランド様と会えるなんて私嬉しいです。良かったらお茶しませんか?」


阿婆擦れがこてんと首を傾げ、胸を寄せ上目遣いで見つめてくる。まさかこれで自分を落とせるとでも思っているのか。オーランドはリリアーナの下心が少しも隠れていない言動に一瞬驚きで目を見開く。


仮に童貞王太子がこれで落ちたとして、自分をそんな下らない男と同じにしないで欲しい。その本音を隠した貴族特有の笑顔で


「……今さっき殿下と話をしていたのです。これ以上席を外していたら私の可愛いアリーヤに怒られてしまいそうですが……誰にでも構わず分け隔てなく接するご高尚な精神には、頭が下がります。ご期待に沿えるよう、努めさせていただきます」


とオーランドは口にする。オーランドは「誰にでも媚びを売り節操なく誘いをかける軽薄さには脱帽だ。面倒事で嫌々だがなんとか努力して茶を飲んでやる」と言ったつもりだった。


だが、学のないリリアーナは高尚な精神を持っていると褒めてられたと勘違いしているのだろう。頬を染めて嬉しそうにさらに熱の篭った視線を自分に向けてくる。


貴族らしく遠回しに嫌味を言うが、阿婆擦れには直接的に言った方が良いのか。嫌味を嫌味だと理解するにもそれなりに相手の学が求められる事に今更オーランドは気づく。


(童貞は意味が通じただけ、まだ脳みそは働いていたのか……)


好意的に取られては困ると思いつつも、緑の宝石の探りを入れるには、今はまだ機嫌を損なわせては大変だ。経験上こう言う女は機嫌を損ねると更に面倒になる。 


「ふふ、ありがとう」 


オーランドは耳に纏わりつくような媚びた声に、冷たい笑顔で返した。  


       

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