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37 リリアーナサイド


★リリアーナサイド



孤児だった頃、世界の全てが恨めしかった。自分に無いものを彼らは全て持っている。死ぬだけの運命なのになぜ自分は生まれたのか。ただただ周囲が憎かった。


(こんなヤツら皆死ねば良いのに……)


そう思った時とある貴族が「娘にならないか」と声をかけてきた。最初は訝しんだ。ここで素直に人を信じられる程綺麗な世界に生きてはいない。しかし、利用はできると思った。貴族になればこの世界の人間を虫けらのように扱える、と。


その手を取ったあと自分はその貴族の家で体をすみずみまで洗われた。存外、自分の見目は良かったらしい。リリアーナと名付けられ、ドーソン伯爵家の歓迎の証として綺麗な緑のネックレスを貰った。


これを売ったら幾らになるだろう。ふとそんな事が頭をよぎった。そんな考えが顔に出ていたのか


「売ってはダメだよ。これは――」


説明を聞き首にかけると売る気など無くなった。何より、これを毎日つけていればその代わりに欲しいものはなんでも買ってくれると伯爵は言った。そんなのどっちを取るのが利口かなんて誰でも分かる。


それから少しすると淑女教育と言うのが始まった。簡単な文字や計算を教えて貰ったのは良かったが、そこまでだ。どうやら自分には勉学の才能はなかったらしい。マナーや外国語に歴史にその他諸々。


あまりに厳しい授業に虐めのつもりかと聞いたら、うちは優しい方で上の爵位になると、もっと厳しい勉強が待っているとか。ここだけは貴族の女性を褒めてやってもいい。


それから数年が経ち、ある日お義父様に王子様を紹介された。顔はまぁまぁ好みだったが、それだけだ。全てを持ってる癖に自分は孤独だと嘆く悲劇のヒーロー気取りの馬鹿な男。でも、彼はこの国唯一の王子。つまりはこの男と結婚できれば王国一の女性になれる。


ああ、そうしたら今まで自分を見下してきた奴らをどうやって葬ろうか。そこからはお義父さまの言う通り宝石も渡し、王子を褒めて褒めて、時には少し胸をチラつかせてやった。


王子の婚約者である貴族一のお嬢様は、勉強もマナーも何も身についていない、元孤児の自分に婚約者を略奪される。そう思うと更に勉強もマナーも覚える気が無くなった。全て持っている女が、何も持っていない自分に男を奪われる様は滑稽だった。


しかしそれから少ししたとある夜会の日、衝撃を受けた。王子が泥団子に見えるくらいに美しい男性。しかも、あの女の兄だというでは無いか。彼が欲しい。彼を手にした時、自分は全てを手に入れる、リリアーナはそう確信した。



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