33 レオナルドサイド
★レオナルドサイド
『リュクソン公爵家から殿下にのみ極秘事項。ルミニス王国の未来と王家の威厳に関わるため、他言無用で殿下の執務室にてお時間をいただきたい』
とは一体んなんなのか。レオナルドは自分の執務室で歩き回りながら考える。彼の執務室は随所に豪奢な飾りが散りばめられ、凡そ執務室とは呼べない豪華な作りだ。
両親である国王と王妃が結婚して5年目、漸く授かった王子ゆえにレオナルドは溺愛されている。両親に言えば大抵の事は叶うレオナルドは、自分を影の王だと思っていた。
だからこそ、王家に歯向かうリュクソン公爵家が腹立たしい。自分の隣に立つのは美しい女性が相応しいとアリーヤに婚約の話を持ちかけてやったのに、リュクソン家は何度も断った。あまりにも腹が立ったので勅命を出した時はスカっとしたものだ。
ただ、婚約してみればアリーヤはお高く纏まり、婚約者なのに自分を立てる事も慰める事もせず、見下されているようだった。
オーランドもそうだ。浮名を流しリリアーナと自分に嫌味を言うのに悪い噂を聞かない。いや、何度かヤツを化け物と呼んでいた家があったか。その陰口を聞いた時は胸がすいた。
レオナルドは臣下の負担を慮って下らない仕事はアリーヤに回すよう伝えたのに、化け物はアリーヤに他の仕事をさせないよう徹底している。
その点リリアーナは良い。いつも触って欲しそうに自分に腕を絡め胸を当てて褒めてくれる。男としても王太子としても自尊心を高め癒してくれて、高価な宝石もくれる最高の女性だ。
レオナルドは座り心地のいいソファーに行儀悪くどかりと座ると、あれこれ思い出しては貧乏ゆすりを始める。
しかし、王家の威厳に関わるなど、仮にも王家が舐められるなどあってはならない……オーランドは苦手だ。出来るなら二人きりになどなりたくないが、普段は政治に口を出さず静観しているだけのリュクソン公爵家が父上でも母上でもなく自分にのみ伝える極秘事項、そう思うと悪くはない。
「次期国王として既に極秘事項などを話されるとはな。臣下の無礼も許してやろう。それが良き国王というもの」
レオナルドが一人笑みを作り静かに噛み締めていると、コンコンと扉から音が聞こえる。
「入れ」
「お忙しい中お時間頂きありがとうございます」
オーランドはこれみよがしに手本となるような立ち振る舞いで執務室に入ってくる。彼の性格なら自分と同じようにノックもせずに入室するくらいのやり返しはしてくると思ったが、同じ場所には立たないと言われている様でこれはこれで腹が立つ。レオナルドはわざと大きく咳払いをし
「それで?俺に極秘事項とは?王家の威厳に関わると言っていたが。」
「『ルミニス王国の未来』と王家の威厳です。」
オーランドが強調するように「ルミニス王国の未来」と口を開くが、つまりは同義だろう。レオナルドは一瞬だけ片眉をあげた。




