表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/94

30

こちらが間違って29話で投稿してしまったものです。こちらの30話が正しいです



★アリーヤサイド



何とか鬱陶しい空気を引っ込めたオーランドを見てアリーヤはホッとする。自分に回ってくるのは「王太子の婚約者」が請け負う仕事だけ。今日は身体も軽い。ここ最近では無かった穏やかな時間だ。今朝オーランドから貰った紅茶をミリーに淹れてもらいながら思う。


「お兄様、この紅茶なんですがどこ──」

「アリーヤ!!!」


が、それも束の間の夢だった。アリーヤがどこの茶葉なのか聞こうとしたその瞬間、バンという音ともに薄い茶色味がかった金のウェーブの髪に、同じ色の瞳と甘いマスクを持つ「格好だけは王太子」なレオナルドが脇にかなりの書類を抱えて入ってくる。 


いつもそうだが、レオナルドの頭の辞書には「ノック」と言う言葉が存在しないのだろうか。いや、寧ろ存在しないでいて欲しい。存在していてコレならもうどうしようもない。


「王太子殿下にご挨拶申し上げ──」


アリーヤはとりあえず机から立ち挨拶の口を開いた所で


「これはこれは!王太子殿下!先日ぶりですな!私の名前は覚えていただけたでしょうか?いや。違う!申し訳ない!先日のアレも『影武者』だったのでしょう!いや、何ね。『もうずっと前に』アリーヤから紹介もされ、殿下とは何度もお話をさせて頂いているのに、先日廊下で私の名前を聞いた『輩』がいたのですよ!あまりも殿下と瓜二つだったので、あの時は殿下だと思ってしまいましたが、この社交界一の美丈夫で!筆頭公爵家嫡男であり!殿下の婚約者の身内である『私』を!聡明で優秀な殿下がお忘れになるなど『決して』有り得ぬこと!あれも影武者だったのでしょう。隣にはかなり下品な…いえ、(あで)やかな女性を連れていましたからね。大体アリーヤを放置して別の女性と腕を絡め恋人のように歩くなど品行方正な殿下がなさる筈ありません。……おっと!これは私とした事が!殿下の前で話すには品性の欠ける話題でしたね。」


とオーランドが、口を挟む隙を少しも与えず手を大きく広げて迎え入れながら歌うように話し、その後


「……それとも、ノックも出来ない貴殿はやはり影武者殿かな?」   


声色を低くし視線を鋭く睨むようにして話す。落ち込んでいたから、八つ当たりでもしているのかも知れないが、オーランドのレオナルドに対する態度はいつ見ても寿命が縮む。


(しかも、お兄様、とうとう殿下の前でリリアーナ様の事を『下品』と言ってしまったわ!)  


しかし、レオナルドは余程オーランドの顔が怖かったのか口をはくはくさせ、それどころでは無さそうだ。


「……お兄様。その位にしてくださいな。」


アリーヤはレオナルドのあまりの顔色の無さについ手助けをしてしまう。まぁ、オーランドに口で勝てという方が無理だ。オーランドは揚げ足を取り嫌味を言うのが大好物なのだ。きっとオーランドは口から先に生まれたのだろう。その上、美丈夫は凄むと迫力が増す。 


「ああ、これは申し訳ありません、殿下。アリーヤの執務室にはここ数日無作法な不審者が入ってくるのでね。警戒してしまいました。ノックの音はきっと愚かな私の耳には届かなかったのでしょう」


オーランドは右手を美しく胸の前に持っていき恭しく礼をとる。その慇懃無礼さと言ったら……アリーヤは内心頭を抱えてしまう。アリーヤは自分の気を取り直す為にも、この空気を変えるためにも、軽く咳払いをし 


「殿下、それで一体どんなご用向きでしょうか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ