29 オーランドサイド
1度間違って30話の文章を29話に投稿してしまいました。こちらが29話の正しい文章です。申し訳ありません。
★オーランドサイド
オーランドはその後ロイヤル家に朝食をご馳走になり公爵家へと帰る。きっと今日もアリーヤは王宮へ行くと言うだろう。休んで欲しいがそれがアリーヤだ。アリーヤが出る前に間に合うだろうか。スピードを上げるように馭者に伝えたおかげで、玄関の前で馬車に乗ろうとしているアリーヤを見つける。
(ギリギリ間に合った……)
ジャボを取り、ボタンを2、3個わざと外し、髪も適当に結い直せば朝帰りの出来上がりだ。口を挟む隙を与えず話し、丸め込んでミリーに先程作った茶葉を渡す。紅茶を口にしたアリーヤを見ると少しだけ顔色が戻ったように見える。味も好みのようで何よりだ。
「ふむ。寿命を迎えた野良猫から、寿命が近い野良猫くらいにはなったな。まだまだ見れたものではないがね。茶葉は気に入ったならやろう。私のように、心に余裕を持ち、心根を美しくしてこそ肌ツヤは良くなり美貌は輝く!美貌はお前の唯一の長所なのだ。好きなだけ飲めばいい。そうすれば婚約が破棄になっても1人くらいは物好きな貰い手が現れるやもしれんぞ?」
勿論、外見も心根も美しい美貌の持ち主のアリーヤなら婚約を破棄されても貰い手など沢山いるだろうが、もし居なくても確実に自分が居るとは、遠回しに伝える位は良いだろう。
押し付けるようにして上手く紅茶も渡し、そのまま王宮に行く。相変わらず王宮は淀んでいる。出来ればこんな所に居させたくない。そう思いながらオーランドはアリーヤの執務室に入る。空気の悪さに今すぐにでもやはり帰らせようとして初めて気づく。
(俺の魔力で清浄にすれば良いだけじゃないか?)
ナルシストの仮面を被った自分は「世界二位」と言ってはいるが正直こんな単純な事も思いつかないなど自分は阿婆擦れ以下なのかもしれない。
いつものように無詠唱で、遮音・防音魔法をかけ、その周囲に細く編み込むように魔力を張り巡らせる。不快感を覚えたら、魔力で誰にも気付かれないように静かにそれらを吸収し、ゆっくりと清浄な魔力へと変換していく。
おかげでアリーヤもミリーもだいぶ体調は良くなったらしいが、こんな単純な事にもっと早く気付けていたら!そうすれば昨日アリーヤは倒れなかったかもしれない。そう思うとやり切れない気持ちでいっぱいになったが、それでも――
「分かった。分かった。麗しのご令嬢二人の笑顔が見れただけでも良しとしよう」




