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★アリーヤサイド



「お嬢様、朝ですよ。体調はどうですか?」


ミリーの声でアリーヤは目を覚ます。眠れないと思っていたのに、いつの間にか寝ていたらしい。軽い頭痛も消えている。


「おはよう、ミリー。もう大丈夫よ。」

「おはようございます。それは何よりです。」

「ええ。だから朝食を食べたら王宮に行くからそのつもりで用意して頂戴。」

「!!!お嬢様!それは流石に!」


ミリーはアリーヤの手を握り休むようにと懇願する。言いたい事は分かる。自分も出来るなら休みたい。だが、昨日倒れた事が噂になっていたら?今日も休めば真実味が増し、足元を掬われる。


本当なら王太子妃にも王妃にもなりたくはないし、掬われて婚約者の座を降りられるならそれが一番有難い。けれど、今「それをされてはいけない」漠然とした、しかし確信めいたものがある。


「大丈夫、お兄様もいるわ。勿論ミリーだって付いてきてくれるでしょう?」

「それは、勿論ですが……」


アリーヤは言いながら不安になる。本当にオーランドは今日仕事を手伝ってくれるだろうか。昨日はずっと帰りたがっていたし、その上朝帰り前提で何処かへ出かけていたらしい。まだ屋敷に帰ってきていないかも知れない。


(いいえ。この3日間が仕事が少なすぎたのよ)


慣れてはいけない。今まで一人で山のような書類を押し付けられては捌いてきたではないか。それにこれからは上に立つ身だ。関係ない書類は自分一人でも断われるようにならなくては。


兄の気まぐれによる3日間だと言うのに、だいぶ甘やかされてしまったように思う。楽を覚えると、人はすぐ堕落するらしい。アリーヤは顔をゆるゆると左右に振り


「ごめんなさい、ミリー。私だってそうしたい」

「……なら!!」

「でも、今はまだダメなの。私は、婚約者の座を奪われてはだめなの」


レオナルドを含め、ただの「王太子の婚約者」である自分に仕事を押し付けてくる王宮の役人に、レオナルドがリリアーナと一緒に居ることを誰も咎めない事に、アリーヤは王宮のあり方に疑問を持つようになっていた。


なぜ誰もがそれを当たり前に受け入れているのか。正直気にはなるが、今はそれどころではない。もし婚約者の座をリリアーナに奪われたら……彼女が自分のように執務をするとは考えにくい。その時被害を被るのは国民だ。自分は民を国を「正しく導かなければならない」。その為には嫌でも婚約者の座を奪われてはならないのだ。 


アリーヤは静かに、しかし強い意志を持ってミリーを見つめる。ミリーは逡巡したのち大息し、渋々「分かりました」と頷いた。



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