23 オーランドサイド
短いですが、キリが良いので。
★オーランドサイド
アレンの屋敷で調査を始めたものの、オーランドの心はアリーヤのことが気がかりだった。あの「歪み」の感覚、アリーヤの苦痛に歪む顔が脳裏に焼き付いて離れない。気がつけば、馬車を公爵邸へと走らせていた。
公爵邸に戻り、昼間に使用した水の膜を張り音を吸収・拡散する水魔法で、足音を立てずにアリーヤの部屋の扉を開ける。月明かりが差し込む薄暗い部屋で、アリーヤはベッドの上で布団に身を潜め、小さく丸くなっていた。その震える肩、か細い息遣いから、彼女が眠りたくない、悪夢から逃れようとしていることが痛いほど伝わってくる。
「(お兄様――……)」
声になっていないはずのアリーヤの声は、オーランドの耳に何故かはっきりと届いた。それは、アリーヤの無意識の、しかし切実な助けを求める声だった。
その瞬間、オーランドの心に強い決意が宿る。彼女をこの苦しみから解放するためなら、どんな手段も厭わない。
オーランドは静かにベッドサイドに歩み寄り、その小さな背中にそっと手を伸ばし、アリーヤに穏やかな眠りの魔法をかけた。抵抗しようとする彼女の意識はすぐに薄れ、深い眠りへと落ちていく。
アリーヤが完全に穏やかな眠りについたのを確認すると
「安心して、俺の光。お前は俺が守る。」
オーランドは誰にも聞こえない程の声で囁き、彼女の額にそっと唇を落とした。そして、再び足音を立てずに部屋を後にし、夜の闇の中、アレンの屋敷へと馬車を走らせた。




