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★アリーヤサイド
「お嬢様！？大丈夫ですか！？」
アリーヤが再び目を覚ました時、既に辺りは暗く窓から月が見えていた。
「ミリー……ごめんなさい。心配かけたわね。」
「いいえ！大丈夫です！今旦那様達を呼んで参りますね！」
ミリーはそう言うと慌てて部屋を出ていく。その姿を見て先程の事を思い出す。悪夢だったとは言え、夢でも現実でも兄を求めて泣いてしまった自分が恥ずかしい。
(後でお兄様に揶揄われるわね……)
それを思うと少しだけ憂鬱になる。今は想像するのはやめようと頭を横に振るとほんの少し頭痛がした。それと同時に両親がやってきた。
「「アリーヤ！！」」
自分と同じ銀糸にオーランドよりも深い深海のような青い瞳を持つ父、アルバート・リュクソンと、オーランドよりも濃い金髪に、自分と同じアメジストの瞳の母、オリヴィエ・リュクソンが駆け寄ってくる。
年相応の大人の色気を持つアルバートと、２児の母には見えない可愛らしいオリヴィアの凸凹な2人が、自分を心配する姿がどこかおかしくて思わず笑ってしまう。
「ご心配おかけしました」
起き上がらないように先に制されたので、ベッドから頭を下げる。
「そんな事は良いのよ、アリー。それより体調はどう？」
「オーランドに聞いたぞ。椅子から倒れたんだろう？」
かすかに頭痛はするが言うほどの事でもない。「特に何ともありませんわ」と微笑むと「「本当に！？」」とまた2人の揃った声が聞こえて笑ってしまう。
「ええ。本当です。それより、あの……」
アリーヤはきょろきょろと周囲を見渡す。
「ああ、オーリーね！今は出掛けてるわ。」
「あの感じでは今日はオーランドのやつ朝帰りだろうな。」
父も母もオーランドにはかなり甘い。自分の秘書になりたいと言い出した時も、2人は理由も聞かず了承した。確かに公爵家の仕事は忙しそうなのに。寧ろ、オーランドの行動を全面的に支持している。そう、それは、仮に「オーランドが反旗を翻したい」「世界征服をしたい」と言ったとしても笑顔で協力しそうな程に。
(それにしても朝帰りって……)
オーランドは嫌味は言うし、ナルシストで女好きで適当で鬱陶しい。対する自分はそんなオーランドに冷たい視線を投げかけるが、言っても兄妹仲は良いと思っていた。
妹が倒れた時くらい家にいるかと思ったが、そうでもなかったらしい。昼間に見た真剣なオーランドは夢の一部だったのだろう。
いや寧ろオーランドが居なくて良かった。夢だと分かっても今は普段通りに話せるか分からない。アリーヤは1人心の中でうんうんと大きく何度も首を縦に振る。
「アリー、食欲あるなら何か食べましょう？」
「はい。そうします。」
アリーヤは考えを振り切るようにオリヴィエの提案に頷いた。
