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★アリーヤサイド



「しかし、誰も来ないとそれはそれで暇ですね」


アリーヤが思わずぽつりとこぼす。オーランドの呆れた大きなため息が聞こえる。仕方ないではないか。今まで毎日仕事に追われていたのが普通だったのだ。昨日、一昨日も仕事こそ多くなかったもののかなりの文官が出入りした。今日はそれすら無いのだ。


(「公爵家のお礼」は相当怖いらしいわね…) 


そんな事を思っていると「バン」と扉が開く。誰だと見れば夜会のような可愛らしくも派手なドレスを着たリリアーナが居た。キョロキョロと周囲を見渡しオーランドを見つけると、「たたたっ」と可愛らしい走り方で、オーランドの方へと駆け寄っていく。どんなに可愛しくとも、走るのは淑女としてはマナー違反なのだが。


「オーランド様!!」  

  

昨日一昨日と徹底的に無視されたのを覚えていないのだろうか。いや。寧ろ覚えていたら、あんなふうにオーランドの方へ向かってはいけない。 


オーランドは嫌な顔を全く隠そうともせず、温度のない冷たい目でリリアーナを見ている。その視線だけでも恐ろしいのに、外見がいいと迫力は何倍にも増す。もし、自分も嫌われたらオーランドにあんな目で見られるのだろうか、そう考えるとアリーヤはぞくりとする。


それに気付いているのか気付いていないのか。リリアーナはオーランドの前にくると、机越しに前屈みになり、胸を強調して猫なで声の間延びした声で 


「一緒にお茶しませんかぁ?」


嫌悪する人間にも好かれてしまう自他共に認める「社交界一の美丈夫」であるオーランドに、アリーヤは柄にもなく同情していると、オーランドはリリアーナの胸元を見て目を一瞬大きくする。


「王太子殿下はよろしいので?」

「ううん。と言うより貴方とお茶したところを見せてレオを妬かせたいの!」 


ズキンと頭痛がする。レオナルドの婚約者を前にして良くもそんなセリフが吐けるな、アリーヤは強く苛立ちハッとする。もうどうでも良いと思っていた二人に何故そんなに苛立つのか。


ズキンズキンと頭が痛い。それともオーランドの態度が急に変わったからだろうか。男とは胸一つで軽蔑していた女性も、好きになってしまう生き物なのか……

 

オーランドはチラリとアリーヤを見ては「今は忙しいので後ほど」とだけバツが悪そうにリリアーナへ話し、彼女を追い返す。アリーヤは夢の中のオーランドを思い出す。


更に頭痛が酷くなる。何故リリアーナにそんな優しい声で言葉を交わしたのか。自分は裏切られるのか。なぜだかオーランドだけは隣に居てくれると信じていたのに。


頭痛が身体中に広がっていくようだ。アリーヤの座っている事すら辛くなり椅子から転げ落ちてしまう。


――行かないで 


オーランドに向けた言葉は音にはならなかった。



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