第32話:一歩進んで半歩下がる
「うむ、読めないな」
翌日、持ち帰った本をエルメガリオス様に読んでもらったが、どうやら今は使われていない古い文字のようで読む事は出来なかった。
「そうですか……長生きのエルメガリオス様であれば読めると思ったのですが……」
「すまないね、紙や本はおおよそ100年前後なのだがね。文字自体がユグラシアや聖王国では見かけない物なんだ」
「そうですか……うーん、そうなると南方の港町に行ってみるかぁ……。煌輝帝国の書物が入って来るかもしれないし」
「「煌輝帝国?」」
奏さんと恵さんが首を傾げるそういえば、ミラさんにはこの国の地理しか教えてもらってないもんな。
「えっとね、煌輝帝国って言うのは俺達の出身国から海と本島を挟んだ先にある大国だよ」
そう言うと二人共「あーっ」と言って頷いた、どうやらなんとなく通じたようだ。
「今度、ウチの領で商会立ち上げる昔馴染みのお兄さんが煌輝帝国に行ってたみたいだからさ。もし、これが煌輝文字だったら、解読用に手習い本を取り寄せれれば良いかと思ったんだ」
師匠が残したものだし、絶対何かあるもんな……。
「もし、煌輝帝国の文字じゃ無かったら、後は魔法学術都市のエルテニアにでも行くしか無いか……」
「魔法学術都市か、確かにそこなら古代魔法や古代文学を研究してる人も居るし。解読できるかもしれないね」
「そうですね、出来ると良いのですが……」
少なくとも、帰還へ一歩前進だと思いたいが、こればっかりはこの本達を解読してみないといけないのである。
「そうだ、良い機会ですし。エルフの古代魔法についての本とかってありますか?」
「うーん、あるとは思うんだけど……」
エルメガリオス様が図書館の内部を見上げる、体育館を超えるの大きさを持つ4階建ての建物の上から下までみっちりと本が詰まった書棚が並んでいる。俺達が居るのは内部に十数カ所設けられた吹き抜けの一つで本自体に埃が溜まらないように風魔法が流れているのだ。
「うっ……ですよねぇ、すみません」
「いや、大丈夫だよ。でもまぁ、ここでの蔵書はもっと詳しい人が居るから」
エルメガリオス様がベルを鳴らすとルルカさんが机の下から現れた。
「どうされましたかエルメガリオス様」
「すまないがリューテを呼んで来てくれるかい? 古代魔法の蔵書を調べたいんだ」
「かしこまりました、では探してまいります」
そう言って、出てきた時のように机の下に潜っていくルルカさん、机の下って抜け道かなんかあるの?
「さて、私はそろそろ視察があるからね。今日は帰らない予定だ。二人共、ここは自由に使えるように許可を出しておくから気のすむまで居てくれて構わないよ」
「ありがとうございます」「ありがとうございますわ」
そして、いつの間にか現れたルルナさんがエルメガリオス様に予定の確認をしていた。
「あのメイドさん達ってどこにもいるな……」
「どうやら、ルルカさんとルルナさん以外にも、いらっしゃるそうですわ」
「そうなのか……え、まさか全員〝ルルなんとか〟なの?」
「そうみたいですわ。半分ほどネタっぽいと思っておりますが、城内の色々な所にいらっしゃいますので。本当かもしれないという考えが沸いてきますわね……」
あの駄メイドがいっぱい居たら、精神的に凄く疲れる気がする。
「まぁ、凄く優秀ですので沢山居ても困らないのでは? と思ってしまいましたわ……」
「確かに……、仕事も早いし、優秀だし、気が利くし、まぁ、下ネタが無ければ諸手で褒めれるんだけどね……」
「褒めても良いのですょ?」
「「!?」」
にゅっと、机の下から現れる、心臓に悪いから止めて欲しい。
「ご報告です、リューテ氏はあと五分程で来られますので。おっぱじめないように気を付けて下さい」
すげぇ、今までの評価一瞬で消し飛んだわ……。
「では……」
また机の下に戻るルルカさんを見送って、リューテさんを待っている間奏さん《ネモフィラ》に聞きたい事があったのだ。
「それで、奏さん」は何読んでるの?」
「これですか? 医療魔術を使い、回復術師の開祖と言われる。勇者フィディスの描いた直筆の本ですわ」
奏さんが手渡してきたのは、何故か全部〝日本語〟で書かれた本だった。
「これって……」
「恐らく、日本人なのでしょうね。勇者フィディスは、恐らく女性で私達と歳が近いですわ」
文字を眺めるが良くわからない、奏さんはどこで判断してるのだろう……。
「その顔は不思議がってますわね。一つは、文章が論文に近い形で書かれている事ですわ、OGの大学生の方に見せてもらった論文の書き方に酷似しております。もう一つは女性特有の月のものやそれに関する病気等の描写や対処法がしっかりと書かれている事ですわ」
「男性のお医者さんの可能性は?」
「限りなく低いかと、月のものになった際の感想や出産時の事が書かれておりますわ」
「成程、それじゃあ女性だな……」
というか、呼んでいると性交時の感想とか書いてあるので何と言うか生々しさがあって気恥ずかしい、程々の所で奏さんに返すと、ニマニマと笑っていた。
「照れる旦那様は珍しいですわね、いたずらが出来ないのは残念ですが……」
本気で残念がる奏さんが俺の後に視線を向けると、気真面目そうな男性が立っていた。
「全く、図書館で睦事するなど言語道断だ。これだから最近の若者は、ブツブツ……」
何だろう、この若干10年前の俺がシンパシーを感じる男性は。
「えっと、リューテさんでしょうか?」
「あぁ、そうだ。王に呼ばれて来てみれば、若者が下品な睦事をしている場に出くわすとは……、腹立たしいっ!」
訂正する、俺はここまで歪んじゃいなかったわ……。
「リューテ氏、こちらはスケコマシで、淫猥で、節操の無い、剛剣持ちですが、エルメガリオス様のお客様ですので失礼がありませんように……」
いや、アナタのが数倍失礼だよね!? 華麗に出てくる罵倒にびっくりしたわ! 後、昨日のシャワー覗いてたのアンタか!
「ぐぬぅ……失礼したお客人、頭に血が上り失礼な言葉を出してしまった」
不服そうだが謝ってくれるので、蒸し返すことなく話を進める。
「大丈夫です、気にしてませんから……。もっと酷い事言われたので……」
恨めしそうにルルナさんを見るが、当人は小首をかしげて〝可愛いでしょ?〟的なポーズを取っている。
「「…………」」
二人して呆れていると、当人は不思議そうな顔をし始めた。
「これ以上付き合ってたら面倒ですね……」
「あぁ、それで青年よ、要件は何だ?」
「あ、ホウショウで良いですよ。それでですね〝エルフの古代魔法についての本〟とかってありますか?」
「ふむ、古代魔法か……主に文献や手記になるが良いか?」
「わかりました。ありがとうございます」
リューテさんが魔法を唱える、すると風に巻かれて独りでに彼の体が浮かび上がり、あっという間に本を回収してきた。
「これが古代魔法についての文献、これは極東の国を立ち上げた勇者による魔法の使用感や効果に書かれた手記だ。それとコレがその手記を基に描かれた魔法辞典だ」
テーブル4つくらいの量がある、これ探すの大変だなぁ……。
「では、私は仕事がまだあるのでな、失礼するよ」
そう言って、そそくさと外に出て行った。
すみません!
昨日忙しくて、帰ってきてすぐに爆睡して更新忘れてました!




