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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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第26話:ユグラシア

エルフの国へ向けて進む事二日、案の定というかなんというか……野盗の数が増えて来た。


「陣形整え!」


「「「「「応!!」」」」」


どうやらエルフの騎士団の皆さんは慣れっこな様で、易々と制圧していく……筈だが今回は戦闘時間が長い。


「今回は数が多そうですね……」


「行ってきますか……」


ミラさんと共に馬車から出ると、野盗の数が多い、装備を見るに恐らく領軍崩れなのだろう。そこらの野盗と違って数が揃っていると結構面倒である。


「ルフスバルドさん、援護に来ました」


エルフの騎士団長のルフスバルドさんの隣に降り立つ、若くして(とは言っても、150歳だが)近衛騎士団長まで登り詰めた天才だ。


「すまないホウショウ殿。お客人の手を煩わせる事になるなんて……」


「仕方ないですよ、ざっと100人くらいですか?」


「あぁ、おおよそその位だ。こちらは20人程、馬車の護衛に回しているので、どうしても時間がかかってしまう」


エルフの騎士は強いのだが、どうしても相手の数が多いので防御に回らざるを得ない。幸い死者は出ていないようなのだが怪我人は増えている。


「行きはどうだったんです?」


「これよりは少なかったが、野盗との遭遇は多かったな」


ふむ、おおよそ半月しない間に野盗が増えてるのか。次の街に行ったらギルマスに魔法信報まほうしんぽうで連絡を取っておくか……。


「ミラさんは抜けた相手を頼みます。俺は一気に指揮官を叩いていきます」


「わかりました、お気をつけて」


身体強化を使い、タイミングを伺う、先日シグルズさんとの戦闘でほんの少しだけ出来るようになった身体強化による思考加速を使い敵の間を抜けていく。


「お前が、指揮官だな?」


「ひっ!? ぐぎゃ?!」


ナイフで頸を一突き、遺体が落ちる音に合わせて後方で控えてる連中を切り伏せていく。


(そろそろ、限界か……)


「風よ、その力で障害を切り掃え!『——旋風せんぷう!』もういっちょ! 荒ぶる土塊よ、鋭き豪槍となりて敵を貫け『――ストーンランス!』」


思考加速による二重詠唱で裏に居た敵を壊滅させる。その威力に驚いた野盗達の隙を見逃さずルフスバルドさんが声を上げる。


「敵は崩れた! 今こそ圧し潰せ!!」


「「「「「応!!」」」」」


指揮官を失い、後方支援部隊が壊滅した野盗達は、ほどなくして全滅した。


◇◆◇◆

「ふぅ……疲れたぁ……」


「お疲れ様です、旦那様」


馬車に戻ると、奏さんがタオルを出してくれて、回復魔法をかけてくれる。


「ありがとう、余裕があれば外の皆を治療してあげれる?」


「かしこまりました、行ってきますわね」


「私も護衛で出るよ、治療の手伝いなら出来るし」


奏さんと恵さんが馬車の外に出る、死体の片づけと兵士の治療で少し休憩だろうな。


「流石だな、ホウショウ殿は。ああも簡単に、一人で戦況を傾けるとは」


感心した様に頷くエルメガリオス様。


「いえ、騎士団の皆さんの連携に助かってますよ」


「そうですね、流石の練度の高さです。あれだけの数が居れば死者が出てもおかしくは無いのですが、皆さん大小の怪我だけで済んでいますし」


俺とミラさんが褒めると、エルメガリオス様が笑う。


「おべっかは止めてくれ。国からあまり出ない分、対人となると我々は弱いのだよ。特に、ホウショウ殿みたいな金剛級に入った様な者が居たら総崩れもあり得るさ」


そういわれて、頑張ったけど歯が立たなかった天星級のシグルドさんを思い出す、あのレベルの人が居たらもう勝てないだろう……。


「聖王国には毅然とした態度を取っているが、こちらも及ぶ実力者は居なくてね……悲しいかな引きこもり有利な場所で戦うしかないのだよ」


(でも、エルフの国って相当に難攻不落と聞いたけど……どうなんだろう)


その疑問は数日で解消される事となった。



◇◆◇◆

それから3日後、俺達はエルフの国との国境までやって来た。


「初めて見たけど……この山が国境なんだ……」


馬車の外に出た俺達の眼前にそびえるのは、凄く大きな山脈である。ちなみに先っぽの方は聖王都からも見えていたりする。


「でもこれ、山越えが大変じゃない?」


「そうですわね、馬車だと難しいですわね……」


「ははは、そうだね。この山を普通に進んだら凄く大変だね。でも、我々には我々の道があるんだ」


隣に居たエルメガリオス様が笛を鳴らすと、左右にあった森が裂け道が出来上がる。


「「「「「なっ……」」」」」


俺達全員、度肝を抜かれた顔をしている。


「ちなみに、ここからも正解と不正解の道があってね、迷うと森の入り口に戻されるのさ」


「凄いですね……難攻不落と言われる訳だ……」


峠越えでも行けるかもしれないが遥かに大変である。こんな所行軍する方が疲弊しきってしまうし、上空には鳥なのか小型竜なのかわからないモンスターまで飛んでいる。


「さぁ皆、馬車に乗りたまえ。馬車であれば道から逸れる事も無いからね」


「えっと、確認なのですが……道からそれると、どうなります?」


俺が苦笑いしながら聞くと、エルメガリオス様がニコリと笑う。


「エルフであれば元の道に戻されるけど……人間であれば森の中を彷徨う事になるね。運が良ければ森が優しく入り口まで案内してくれるさ」


うん、速やかに馬車に乗ろう。そして大人しくしていよう!!


皆も同じことを思ったのか。大人しくしているのだった。


そして山に入り1時間後、エルメガリオス様が降りていいと言ったので馬車から降りると目の前には立派な城と大きな湖が広がり、その背後には国境で見た山よりも巨大な樹がそびえたっていた。


「でっか……」


「凄い……」


「はえー……」


「凄く……大きいです……」


「来た事は無いけど……懐かしい感じがするわね……」


「これは……とても素晴らしいね……」


「懐かしいですね……」


皆が驚くのも無理な無いそれだけ素晴らしい光景なのだから。


◇◆◇◆

「さて今日は疲れただろう。式典とお披露目は明日なので、今日はもう休んでくれて構わないよ」


そう言って、俺専用の部屋に案内してくれたルフスバルドさんが、いつの間にかにこやかに去っていった。


「まぁ、疲れたというか。肝を冷やしたのが多いかな……」


あれから馬車に乗って山の峰を走り幾つかの洞窟を通るとユグラシア王都のユグラシルに到着した。


「というか、あの山の峰を馬車で走るとか、何を考えてるんだ……」


この国攻めるとか、馬鹿過ぎじゃない?


「この世界にエルフの国以外の空軍があったらヤバいけど。そうでなければ空も危険でしかないもんな……」


何だかなんだ魔物が沢山居たのもあるが、エルフの国には飛行部隊と呼ばれるグリフォン騎士達の部隊があるのだ。月に数回襲って来る空飛ぶ魔物への対抗策らしい。


「……何か暇だな」


これだけ部屋が広いので素振りも出来そうだが、そこまで俺は不謹慎ではない。


「えっと……、これか…………うわぁ!?」


なんか日本の玄関ベルみたいなボタンを押すと、メイドさん二人が天井裏から降りて来た。


「お待たせしましたお客様」


「御用は何用でしょうか?」


「あーっ、えっと……身体を動かしたいのですけど……」


「夜伽ですか?」


「へっ?」


なんかメイドさんが真顔で聞いて来た。


「いえ、ですから夜伽ですか?」


今度はロングスカートをたくし上げながら聞いて来た。


「違いますよ!? 素振りをしたいから運動場か訓練場は無いのですか!?」


「わかりました、では野外がお好みという事ですね」


「わかってねぇ!! この人わかってねぇ!!」


それからしばらくの間、真顔のメイドさん二人に弄ばれるのだった。


あと、ロングスカートだからたくし上げるのにすっごい時間かかってたな……。


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メイドさんwwwww
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