表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/92

第24話:ティティアとアラテシア

部屋から飛び出して、大広間へ駆ける。逆流する人達を掻き分けパーティー会場へと突入する。


「アラテシア様!!」


その声に剣戟の音が重なる、いかにもな暗殺者の恰好をした連中に3王子が囲まれていた。アドクレイド様が血を流しつつ応戦をしていて、アグラカルド様は特殊な魔法で防御しつつアラテシア様の上に覆いかぶさっていた。


「ホウショウ殿!! 娘を頼む!!」


他の公爵家を守りながら応戦しているイブキ公爵が俺に声をかける。


「おい、コイツの恰好……標的だ!!」


俺も狙われていたのだろう、暗殺者の半数以上がこちらに向き直る。


(数が多い……、城の兵士の恰好の奴も居る。紛れ込ませてたのか……)


暗殺者の数は全体で40人近い……アドクレイド様やイブキ公爵達が頑張ってるけど明らかに〝劣勢〟だ。


「ふぅ……お前ら、生きて帰れると思うな……」


空間収納アイテムボックスから以前ダンジョンから出土した、素振りの練習に使っている大型の大剣を〝見せびらかす様に〟取り出す。


「な、なんだそれは……」


「龍殺しって言われる剣でな。その名の通り、竜を両断できる剣だよ」


咄嗟に思い浮かんだ、あの戦士の剣の名前を拝借する。


「は、ハッタリだ!」


「ハッタリかどうかは、試してみるか?」


身体強化を使い軽々と持ち上げ、暗殺者達にゆっくりと一周見せつける。


「や、やれ!!」


「「「「「応!!」」」」」


「ネモフィラ!!」


俺は、背後に潜んでいた奏さんに合図を出すとともに、龍殺しを投げつける。何人かを真っ二つにしながらアラテシア様への道を斬り開く。


「任せて下さい!!」


暗殺者達もネモフィラの事は〝視界に入っていなかった〟ので反応が遅れる。


「はぁぁぁぁ!!」


弾丸のごとき速度で魔銀ミスリルの剣を振るう、アラテシア様を襲っている暗殺者を切り伏せ滑り込む。


「クソッ、あの女、回復術師だ!! 殺せ!!」


振り向き様に指示を出すリーダーらしき男、混乱した隙に限界超越オールリミット・ストライドで近づく。


「させねーよ」


「なんっ——」


ナイフで頸を落とし、相手の腰にある剣を抜きながら投げつける。


「ぐぎゃ!?」


「逃がすか!」


空間収納アイテムボックスから愛剣を取り出し、風を纏わせる。


「後なら味方を巻き込まないで済むからね『——旋空!』」


一振りで10人を20個にする、そのまま再度奏さんを襲いに向かった暗殺者達にひとっ跳びで追い付く。


「俺から視線を外すとは、良い度胸だな」


「「ひぃぃぃ――」」


暗殺者達には断末魔を上げる間に牡丹の花になってもらう。そのままアドクレイド様が対峙していた敵を纏めて貫く。


(後3人!)


「公爵様達! そこを動かないで!! 『ストーンランス!』」


短縮詠唱で威力を下げて上から撃ち下ろす、2人をオブジェに変えた所でイブキ公爵が最後の一人を仕留めた。


「助かったぞ、流石は婿殿」


そう言って血を拭いながら笑う公爵、何てこと言ってるんだこの人は……。


「いや、流石にこんな年上は好みじゃないですよ」


「ほう、そうかそうか。ではティティアにその気があれば良いのだな?」


そう言ってニヤニヤと笑うイブキ公爵(ロリコン)


「ちょ、そういう事じゃ!!」


「旦那様、こちらに!!」


俺の抗弁の前に奏さんに呼ばれ足を向ける、恐らく、毒の刃で斬られたであろうアラテシア様が横たわってる。


「おかしいのです、毒の治療が出来ているはずなのに、意識が戻らないのですわ」


「な、なに……」


先程まであくどい笑みを浮かべていたイブキ公爵が、顔を真っ青に変えて膝をつく。


「ど、どういうことだ!!」


「恐らく、呪毒じゅどくだ……」


アグラカルド様がわなわなと震え出す。


「それは、姉の時と同じ……。では、ティティアは……」


「ティティアちゃんは俺達と一緒に……、まさか……」


振り返ると、ミレディさんと一緒に俺達と一緒に居たティティアちゃんがこちらに向かっている。あの見た目だ、可能性はあった、でも出会う前から刷り込まれた〝王子〟という呼ばれ方に、皆がそう呼ぶ事による先入観で意識から欠落していた。


「ごめんなさいイブキ公爵、僕がホウショウ君の隣に居たために……」


喋れない筈のティティアちゃんが謝罪の言葉を口にする。


「いえ、ティティアは務めを果たしました。アラテシア様の身に危険が迫らない事が何よりですから――うぅ……」


本物のティティアちゃんの元で泣き崩れる、イブキ公爵とアラテシア様。一旦後処理の為に俺達は帰らされるのだった。


そして翌日の朝……というよりお昼前だが、起きると王城からの使者が来ていた。


「ホウショウ=エルヴィール辺境伯様、アドクレイド様及びに王子達が来て欲しいと」


恐らく昨日の事だろう、二人に王城へ行くことを告げてから身支度を整えて、馬車に乗り込んだ。


◇◆◇◆

「ホウショウ=エルヴィール辺境伯様をお連れいたしました」


ミレディさんの案内で部屋に通される、そこには渋い顔をしたアグラカルド様と悲痛な表情のアドクレイド様、そして憔悴しきって虚ろな目をしているアラテシア様が居た。


「やぁ、ホウショウ殿。まずは座ってくれ」


アグラカルド様に促され座ると、ミレディさんがお茶を出してくる。


(そうか、アラテシア様が入れ替わってたから、ミレディさんはティティアちゃんの傍に居なかったのか……)


出されたお茶を一口飲んで息を吐くと、アグラカルド様が口を開いた。


「先ずは、昨日の件についてだ。命を出していた第二騎士団のお陰で犯人は掴めた。主犯は第五継承権を持つヴァロス公爵家、およびその派閥だ。理由としては私達を暗殺する事で王位に就くつもりなのだろう。現に第四継承権を持つ私の甥は昨日の混乱で殺されていた」


第五継承権の王子って……前に失脚してアラテシア様より下にされたっていう奴か。


「それと、呪毒については出所が不明だが、ヴァロス公爵はネファキュルのアジトを捜査していたので恐らくそこで入手したんだろう」


「すみません、一つ質問があるのですが……。呪毒って何ですか? 冒険者をやってても聞いた事が無くて……」


この世界、呪いや毒は存在しているのだが。呪毒というものは聞いた事が無い。


「そうか……呪毒というのは。解呪も、毒消しも効かない特殊な毒の事で。受けた者の身体を蝕み、一週間程で最後は見るのも憚られるような姿になってこの世を去る。かつて私達から母奪った憎らしいものだよ……」


今まで、あまり感情を見せてこなかったアグラカルド様が、凄く憎々しげに言う。


「今は、ヴァロス公爵は捕縛していて王族暗殺未遂、及び貴族暗殺の罪で地下牢に繋いでいる。確証や証拠が揃い次第処刑するつもりだ」


「そうですか……」


出来るならばこの手で始末をつけたかったけど、それは俺よりもイブキ公爵がするべきだ。


「そして、ティティアの容態だが今は昏睡状態……とは言ってもホウショウ殿の奥方のお陰で呪毒の進行はかなり遅いようだ」


「そうでしたか……」


「だが、もって数カ月、早くてひと月だそうだ」


「そんな……」


どうにかならないのだろうか……。


「それと、アラテシアの事だが……」


「いいよ兄さん、それは僕自身から言うよ……」


アラテシア様が立ち上がり、深々と頭を下げる。


「まずは、ホウショウ君。騙していてごめんなさい、僕は能力の事もあって他家へ婚姻をしない様に性別を偽っていたんだ」


「いえ、確かに聞かされた力ですと、他の家に流出させると面倒ですものね……」


「それと、一応今回の騒動で僕は継承権を放棄する事にしたよ。とは言っても女の子だから元々無いんだけどね。その後は、アラテシアは死亡、僕はティティアとして生きていく。それがティティアと僕が決めた筋書き(シナリオ)だよ」


虚ろな目のまま、力なく笑う。そうして椅子に沈み込んだアラテシア様は抜け殻に戻る。


「そうか……」


色々と言いたかったけど、今の彼女には届かなそうだ……。


「そして、アラテシアが中心になっていた勇者育成計画についてだが。後任が決まり次第そのものが中心になる。その際はホウショウ殿にも伝えさせてもらうよ」


「わかりました……」


俺が頷いた所で、ノックの音が部屋に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱり女性でしたね。 呪毒やっかいですね。 逆転の秘策がでれば 主人公とくっつける為のシナリオだと無理ですけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ