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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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第23話:叙爵式・後編

「皆さん、この者が本当に〝英雄〟であり〝辺境伯〟として認められるのか! その目で見せてもらいたくはないでしょうか!!」


やたら偉そう、かつ仰々しい喋り方で俺を指差してくる公爵家の一人。名前は知らないけど凄く鬱陶しそう。


「確かに、王子の実力を知ってはいるが……」


「そうよね、生意気よね」


「儂の功績が霞む程の腕前、見てみたいのぅ……」


口々に俺への考えを聞こえるように言ってくる回りの連中。


(まぁ、この場で〝そう〟いえば、大抵の貴族は扇動されるか……)


自分の領地拡大や爵位を俺に取られたと感じる奴も居るよなぁ……というか居たし、アイツもそうなんじゃ?


「なので、我々は相応しい御仁に〝英雄〟の検分を依頼した!!」


そう言って指差した先に居るのは第一騎士団長、シグルズ・フリート。3英傑の一人で実力は天星級てんせいきゅうと言われている。


目が合うとニヤリと笑われる。


「では、皆々様! どうぞ訓練場へ!!」


その言葉に促された貴族達や、申し訳なさそうにするアラテシア様を含めた知り合いの王族達が移動して行った。



◇◆◇◆

「厄介な事になったな……」


控室で俺は、いつもの服に着替え、軽装鎧を装備する。衝立の向こうに出るとティティアちゃんが顔を隠していた。


「ごめんね、衝立あっても恥ずかしいよね」


『いえ、だいじょうぶです』


控室に置いてあるスケッチブックに返答が書かれる。


「多分、もう少ししたらイブキ公爵が来るからさ」


ティティアちゃんを1人にする訳にもいかないから、イブキ公爵にティティアちゃんの回収を頼んだのだ。


「しかし、アドクレイド様のせいで酷い目に合いそうだよ……」


肩を落として溜息をつく……。


『勝てるのですか?』


「うーん、多分無理かなぁ……。一瞬だけなら金剛級の力は出せるけど、本来は金等級だしね。それに相手は天星級、文字通りの化け物が得られるランクだからね」


俺の言葉に、目を伏せて悲しそうな顔をする。


「大丈夫、死ぬような事にはならないよ、回復術師も沢山城には詰めてるし」


そうは言っても、死ぬ気でやらないとまずそうだ。


ノックの音が響きイブキ公爵が入って来る。


「準備は終えたか?」


「はい」


「うむ、ティティア行くぞ」


「(こくり)」


頷いたティティアちゃんがスケッチブックに走り書きをする。


『かがんでください』


何だろうと思いつつ片膝立ちになると、一歩踏み込んで来たティティアちゃんにキスをされた……おでこだけど。


『めがみさまには、ほどとおいですが、しょうりのごかごです』


顔を真っ赤にして走り書きをしたスケッチブックを見せて来るティティアちゃん。恐らくどこかの物語や観劇で見たのだろう、出征前の騎士に加護を与える意味でやるのだ。なので俺も手の甲にキスで返す。


「では、行ってきます」


ニヤニヤしているイブキ公爵と顔を真っ赤にしたティティアちゃんに見送られ、俺は控室を出た。


◇◆◇◆◇◆◇◆

――ギャリンッ!


俺の全力一撃は、第一騎士団長シグルズの竜鱗によって弾かれる。ファーブニルの竜鱗は竜剛鋼オリハルコンで無いと斬れないと噂されている。


「噂は本当か……」


「いい一撃だ……」


「人の全力を余裕で止めてくれて、『いい一撃だ……』は酷いのでは?」


「フッ……私でなければ死んでいたさ。それに、今の一撃は私も目で追えなかった。本当にいい一撃だよ」


「だったら、もう少し堪えてくれないかな! 『氷撃アイスブレイク』」


簡易詠唱で氷の礫を撃ち出す、数にして20個、拳台の大きさで当たれば怯ませるくらいはできそうだ。


「簡易詠唱でこの数……魔法も素晴らしい!」


腰に吊るしてある双剣を抜いて全て切り落としていく。そして踏み込んだシグルズの攻撃がこちらに飛んで来る。


「ぐぅぅぅぅ!!」


攻撃が重い! 化物化したネファキュルの攻撃よりも重くて鋭い攻撃が、五月雨のように襲い掛かって来る。


「耐えきるとは! 流石だな!」


「くそぉ!!」


相手の回し蹴りをこちらも蹴りで相殺する、今ので装備していた足の鎧が砕けている。


「クソッ。我が手に集いて敵を切り裂く刃となれ『旋空せんくう!』」


魔力消費がとんでもないので使いたくなかったが、風の魔力を込めた刀身を形成して斬りかかる、込める魔力によって距離の変化する刃がシグルズに届く。


「ぐぅぅぅぅ! これは!!」


不意打ちによって持っていた双剣の一つを砕くも、またもや竜鱗によって攻撃が防がれる。


「フハハハハハ!! 良いぞ、良いぞホウショウ殿!!」


翼を生やしたシグルズによって、接近戦へと持ち込まれる半竜となったシグルズの膂力によって投げ飛ばされる。


(なんつー馬鹿力だよ!!)


受け身を取りつつ、体勢を立て直す。だがシグルズの反則的な速度によって再度接近を許してしまう。


「あぁ、もう! 大地よ、無数の槍となりて目の前の敵を串刺しにしろ!『震針撃!』」


地面から槍を突きだし槍の柵を作る、突っ込んでくる魔物用の防御策だが今はなりふり構ってられない。


「ほう、見た事無い技だ! だが!!」


翼で身体を包み柵を強引に突破してくる、だがそれで視界は潰れてるはずだ!


「限界も近い……我が剣に集いて、敵を突き刺す槍となれ『旋槍せんそう!』」


風を纏い螺旋を作り突き出す……轟音が響き、僅かな手応えと共に魔力が途切れて膝から前に崩れ落ちる。


「うむ素晴らしい一撃だ。こういう時は極東のこの言葉が似合うな。天晴だ〝英雄〟殿」


その言葉と共に意識が途切れた。


◇◆◇◆

「うぅ……知らない天井だ……」


目を覚ますと身体に気怠さは残るものの、治療などはすっかり行われたようだ。


「えっと……ここはどこだろう?」


城の一室かな? とりあえず……!?


起き上がると、隣のベッドに突っ伏す様にティティアちゃんが寝ている。


(起こさない様に……)


音をたてないように水差しからカップに水を注いで飲む、一息ついた所で状況が把握できて来た。ここは城内の一室で、今は遠くから生演奏の音が聞こえる、どうやら晩餐会が開かれている様だ。


(夜になってるし、大体3~4時間寝てたのかな?)


とりあえず誰か来るまで待つか……気怠いし。


倒れ込んでぽけーっとしていると、部屋の扉が開く音がした。


「あ、お目覚めになられたのですね……っと、ティティアちゃんが寝ていましたわ……」


口を覆って目だけを出した状態のシスター服の女性が入って来た、声的に奏さんである。


「奏さん?」


「はい、潜入の為にこちらお借りしました」


ニコリと笑う奏さん、近づいて来て隣に座る。


「そ、そうなんだ……」


「お加減はどうでしょうか?」


「まだ少し気怠いかなぁ……」


「でしたら……『私の魔力、巡り巡れ――ヒール』」


奏さんの回復魔法が流し込まれ、魔力が回復していく。


「これで、大丈夫ですかね?」


魔力を分けてもらったので気怠さも消えて、落ち着いてきた。


「それで、どうしてここに?」


「はい、エルヴィール家の方でお菓子パーティをしていたらイブキ公爵からの早馬が届いたのです。旦那様が第一騎士団長と戦って魔力切れを起こして倒れたと」


「あーうん……、心配かけたね……」


「それは……セレフィーネさん以外はそうでもないですわ。だって、旦那様の夜のお相手をしていると……ねぇ……」


そう言って笑う奏さん。確かにエッチの時って男性は魔力を放出するから回数がとんでもないと魔力切れを起こすのである。


「うぐっ、確かにそうだけど……。何か情けないな……」


「ですので、セレフィーネさんにも説明しておきましたわ」


「ちょ、待てよ! それは、流石に恥ずかしい!」


思わず大きな声が出てしまい、ティティアちゃんの方を見ると目が覚めてしまった様だ。


「……!?!?」


「ぐふぅ!?」


突撃された、勢いが凄いのでそのまま押し倒される形になる。


「——!!」


泣きながら俺にぐりぐりと頭を押し付けてくる、現場を見てた訳だし相当びっくりさせてしまったんだろう。


頭を撫でて落ち着かせていると部屋の外が騒々しくなって来た。


「どうしたんだろう?」


身体強化で声を拾うと、「暗殺者」とか「毒」とか「第三王子(アラテシア)様が!」とか聞こえる。


「まさか……」


ティティアちゃんが影武者から離れるタイミングで……。


「旦那様、どうしたの? 顔が真っ白ですけど?」


「アラテシア様が襲われたらしい……」


その言葉に、ティティアちゃんと奏さんが目を見開いた。


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― 新着の感想 ―
蹴り対蹴り ジャスティスか
ほうじょうの試験が陽動として使われた? いきてるかな(T_T)
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