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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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第22話:叙爵式・前編

顔合わせの翌日、俺はアインに連れられ来たギルドの応接室で、アインに待たされていた。


――コンコン。


軽いノックの音に応えると、アインが懐かしい顔と共に入って来た。


「わるいホウショウ、待たせたな」


「いや、大丈夫。というかドランクがどうしてここに?」


アインと共に入って来たのは、俺達が今住んでる家の元持ち主であるドランクだ。今は実家の商店を継ぐために地元に帰ったはずじゃ……。


「久しぶりだなホウショウ。ここに居るのはアインに呼ばれたからさ、お前の噂はアインや商人仲間から聞いてたけど、まさか貴族様になるなんてな……」


「あー、まぁ成り行きでな……でも、何でドランクを呼んだんだ?」


「それはな。お前の領地って、地理的には僻地だろ? 聖王都からカラッサまでの行商はあるけど、そこから先は土地が土地なだけに行商は来ない筈だ。だから、これから作られるであろうエルヴィール領都へ、直通できる商人が欲しいと思ってな」


「んで、美味い話があるって聞いて、俺が話を聞きに来たわけ」


「いや、でも……ドランクの商会は?」


折角親父さんから受け継いだのに、土地を移転するとなると一からやり直しになる可能性だってある。


「そこは……まぁ、兄貴が帰って来たからさ。色々と問題になる前に一旦譲ろうと思って」


苦笑いをする、ドランク。お兄さん……失踪してた筈じゃ……。


「そんな顔するなよ、転んでもただじゃ起きないのが俺だしな」


話を聞くと、どうやらドランクのお兄さんは、姿を眩ました後、煌輝こうき帝国で暮らしていたらしい。それで、親父さんが死んだ事を聞いて帰って来たという訳だ。


「まぁ、迷惑かけられた事を盾にしたら苦虫をかみつぶした顔をして頷いてくれたさ! それに、俺の息子が後を継ぐ事も許可してくれたし」


そう言って話すドランク。おおよそ5年、こちらで仕事をしつつ。煌輝こうき帝国との販路の拡大をさせつつ、ドランクの息子の育成まで任せた様だ。


(なんというか……よくそんな無理を通したな……)


「という事で、俺は今自由だ。妻も久々に行商をしたいと言ってるし渡りに船だったんだよ」


「そうか……じゃあ任せようかな。向こうに行商人が居たら話し合って決めてくれ」


「あいわかった。それじゃあいっちょエルヴィール領まで行ってくるわ」


「あぁ、って言うか明日の国葬はどうするんだ?」


「正直面倒だから行かない。だから今日の内に出発するんだ!」


そう言って、嬉々としながら部屋を出て行った。


「何と言うか……嵐みたいな奴だったな……」


「まぁな、最近元気無かったけど。お前の領地の話をしたら、元気になったんだよ」


安心したと言わんばかりの顔で笑うアインと共に俺もドランクが出て行った扉を笑いながら眺めるのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

つつがなく終わった前国王の国葬。その数日後にやって来た、人生二度目の褒賞式。その控室で俺は新たに用意された礼装に着替えていた。


「うむ、大丈夫そうだな」


「本当に良いんですか? こんな良い服を用意してもらって……」


「構わんよ、それにしてもまさか、礼装を一着しかないとは……」


溜息をつく、イブキ公爵。そうなのだ、アラテシア様に貰った礼装が一つあるから別に新しく用意しなくても良いと思ってたんだが……。


「流石にアラテシア様に用意してもらったとは言え、何度も同じ礼装で出るのは他の貴族達から突っかかられたり、余計な問題が生まれるからな……」


イブキ公爵の後ろ盾があるとはいえ流石に馬鹿にされてしまうらしい。


「そこまで考えが回りませんでした……貴族の方と会う際はいつも同じ礼装でしたので……」


「冒険者時代であればな……。まぁ、事前に気付けたのは良かったよ」


「ありがとうございます、でもお代は……」


超特急で仕上げてもらった礼装は、今までの服よりも凄く豪勢である。つまり値段も相当に豪勢だろう。


「気にするな。ティティアの事もある、あの子を任せたぞ」


そうして送り出された部屋の先には、スノーブルーのドレスを着て髪にリボンを編み込み宝石が揺れる形の髪飾りを付けたティティアちゃん待っていた。


「ティティアちゃん、今日はよろしく。」


「(こくり)」


「えっと、エスコート中は肯定が1回、否定が2回だよね?」


俺の手を叩く回数での、意思疎通方法の確認をする。


「(こくこく)」


「わかった。それでは、ティティアちゃん手を」


一応影武者との事でなるべく顔を見せる事をしない様にする為に、ティティアちゃんはヴェールを下ろす。それに合わせて差し出した手にティティアちゃんが掴まり歩き心地を確かめる、そしてイブキ公爵に見送られながら会場に向けて歩き出す。


「そうだ、これからバタバタしちゃうだろうし、先に言っておくね。そのドレスと髪飾り、凄く似合ってるよ」


「(!?!?!?)」


薄いヴェールの向こうの顔が真っ赤に染まる、この褒め方で問題は無さそうだ。ちなみに今日のティティアちゃんはエクステを付けているとの事でぱっと見ロングロングヘアーである。


(それはそうと、13歳の少女に胸元の空いたドレスは駄目じゃない?)


しかもパッド入りなのか腕に柔らかい感触が当たるし……。


(まぁ、当たる感触は気にならないし。ドレスはイブキ公爵が選んだものだからそれで良いんだろうな……)


気にしたら負けなので、鉄の意志で自然体を維持する事にした。


◇◆◇◆

式典の会場に入ると、会場中の視線がこちらに向いた。その圧に気圧されたのかティティアちゃんの手に力が入る。


「大丈夫、俺が付いてるからね」


握り返すと、緊張が和らいだのか力が抜けている、もう大丈夫そうだ。


「それじゃあ、行きますよ」


それから正々堂々と歩いていき、事前に練習していた場所に辿り着く、遠巻きに見ている貴族達に一瞥するとざわざわと声が聞こえて来た。


「あれが噂の――」


「その隣に――イブキ公爵の?」


「お若いのに声が――〝物珍しさ〟があるのでしょう」


「アラテシア様によく似て――、玉座に飾られた人形——」


次々に聞こえてくる、声に対して怒りが沸いて来るが、毅然としているティティアちゃんの為にも堪える。


(まぁ、これ位なら良いでしょ……)


悪口を言っている人達の足元に氷を作り出す、すると次々にコケていく。


「(!?)」


少し会場がざわつき始める……が、当事者たちは皆、何が起きたかわかっていないのもあり悪口どころでは無さそうだ。


にかっと笑いかけると、ティティアちゃんは恥ずかしそうに耳まで赤くなるのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

「ホウショウ=エルヴィール男爵、こちらへ」


アグラカルド様の声の後に俺は、アドクレイド様の前に跪く、そうしてアドクレイド様が口を開く。


「ホウショウ=エルヴィール男爵。此度の貴殿の働きにより先王を弑した逆賊、スレヴァン=タルーセルは討たれ聖王国は安寧を取り戻した。その働きには亡くなられた父上も喜んでいるであろう」


芝居がかっている動きをしているが、すすり泣く声も聞こえるので効果はあるらしい……。


「国難を排し、悪しき理想を打ち砕いた。その非常に素晴らしい功績を認め。ホウショウ=エルヴィール男爵には〝辺境伯〟の爵位を与える!!」


アドクレイド様の言葉で会場がざわつく、そこにアグラカルド様が一喝するとしんと静まり返る。


「皆も、不服に思うかもしれない。だがホウショウ=エルヴィール辺境伯はその身その実力を持って辺境伯を手中にした、不服である者はその剣を取り彼と斬り合ってみるが良い……決闘であれば私も止める事はしない! 現に、私も彼と打ち合い彼の力を認めるに至った!」


(ちょ!? なに面倒事増やしてるんですか!?)


「だがひとまずはここは功績を認める場。彼への挑戦はこの後にしてもらおう」


そう言って、アドクレイド様が剣を俺の両肩に置く。これで叙爵は終了だ、立ち上がり、豪奢な装飾のされた剣を受け取り、俺が壇上から降りたところで、広間に声が響いた。

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― 新着の感想 ―
>パッド 身長130だから、何もなければ真っ平らですからね。ちなみに、ぺったんこでも揉めば柔らかいらしいです ちな、戦時中の小六の女の子の平均身長が125cmとか聞いたことを有りますので、迎えるもの…
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