第20話:許しと未来
通された部屋にはニコニコしているアラテシア様と、縮こまってるティティアちゃんの二人が居るのだ。
「やっほー皆。遅かったねぇ~」「(——ぺこり)」
「はっ?」
流石に予想外の展開に変な声が出る。
「あれ? ホウショウ殿? どうしたの?」
「えっ、あっ…いや……まさかアラテシア様が居るとは思わなくて……」
よく考えれば、食事会の場所を向こうが指定してくる時点でその可能性はあった……けど、良く王城から出れたな!?
「まぁね~僕が外出できる数少ない場所だからね」
「すまんな、アラテシア様よりホウショウ殿には伝えないでくれと言われてたんだ」
「ごめんね、でも奥さん達に説明するには、僕が来た方が話が早いと思ってね」
眼帯の下にある眼が後ろに居る皆へ視線を移す、王族と気付いたのは、一度アラテシア様を見た事のある奏さんと恵さんだ。
「まぁまぁ座ってよ、イブキ公爵、シェルティア公爵夫人、それとティティアすまないけどホウショウ殿と奥さん達と秘密の話をしたいから席を外してくれないかな?」
「かしこまりました、魔道具はこちらに。部屋の外に控えておりますので用事があれば扉を開けて下されれば」
「わかった、ありがとう」
「では……」
俺達を除く他の人達が出て行く、アラテシア様が魔道具を発動してテーブルの上に置く。
「さて……まずは、蒼井奏さん、細野恵さん。二人に謝罪を。ツバサ君と引き合わせる為に、二人を娼館に引き渡す様に促したのは僕なんだ」
「俺も、アラテシア様に聞いてたんだけど。謝りたいとの事で言うのを止めてたんだ……黙っててごめん」
アラテシア様が頭を下げる、俺も一緒に頭を下げながら言う。
「……えっと、状況が良くわからないのですが……いったいどういう事でしょうか?」
「うんうん、私達ほとんど訳もわからず送られたんだけど……貴方が関係してたって事なの?」
「はい、僕の眼は特殊な……魔眼と呼ばれるもので。その人の素質から過去未来までの自分が視たいものを視る事が出来ます。ですのでお二人が売られる未来は見えてました、そしてそうなるように誘導したのは僕です」
アラテシア様の言葉に、二人が考え込む。やがて恵さんが顔を上げる。
「えっと……確認したいんだけど……それは、私達と飛翔を引き合わせる為なのよね?」
「アラテシアさんは、どういったやり方で売る方向にもっていったのですか? 直接に売る事を提案した訳では無いのですよね?」
「はい、僕がやったのは二人の素質を見て。無能と召喚を取り仕切っていた義姉様に伝えただけです」
「そうですか……でしたら。私は何も言う事はありませんわ」
「そうだね、私も無し……いや。飛翔と引き合わせてくれた事にはお礼を言いたいかな?」
「そうですわね、飛翔さんと引き合わせていただきましたのは。私達にとっても、とても幸せな事でしたから……」
そこで切って二人は顔を見合わせる。
「ありがとうございます、飛翔さんと引き合わせてくれて」
「ありがとう、飛翔と出会わせてくれて」
頭を下げる二人、その行動にポカンとするアラテシア様。
「えっと……本当に良いの? 僕は自分の望みを叶える為に君達を利用したんだよ?」
こうしてあっさりと、しかも穏やかに済むとは思ってなかったみたいだ。
「それって、どんな望み何ですか?」
「内容次第では怒るかもしれないですわね……」
「えっと……別の世界……君達の世界に行く事……」
アラテシア様はそれから、自分の置かれた状況や、取り巻く環境を話し始める。主に暗殺についてだけど……。
「そうねぇ……確かにアラテシア様の力は相当に不味いものだものね……」
「言ってしまえば、その人の将来もわかりますし、自分に邪魔な政敵はその力を利用すれば大きくなる前に、存在を消す事も可能ですものね……」
二人の言葉に外で見ていた俺達も頷く。そんな中カトレアが手を上げる。
「それで、不躾な質問かもしれませんが……。アラテシア様の将来ってどうなってるのでしょうか?」
「確かに……それにツバサさんがどうなってるかも、知りたいです……」
「うーんとね……自分の未来は怖くてあんまり見れてないんだけど……!?!?」
ポンッと音を立てて顔を赤くするアラテシア様、一体何を見たのだろう……。
「え、えっとね!! いくつも分岐してる未来の内。日本の風景は大体半分だった……だったけどぉ……」
顔を覆って恥ずかしそうにするアラテシア様、何か睨まれてるんだけど……俺、何かした?
「と、ともかく! 少なくとも君達は皆日本に戻れてる! その後こちらに渡って来てる人も居るけど皆帰れてるよ!」
その言葉に、俺達の顔が凍り付く、無数にある未来の内半分以上は帰還魔法が見つかった未来という事だ。
「つ、つまり……帰還魔法はあるんですか?」
「うん、【帰還魔法】と断言出来ないけど。戻る手段はあるようだよ。だけど、どこで悪い方向へ分岐してるかわからないんだ。だから未来の選択は綱渡りになる、今も未来は変化してるからね……」
そう言って、アラテシア様が一息つく……。
「流石に疲れちゃた……未来視は魔力を使うし、慣れてきたとはいえ頭がパンクしそうになるよ……」
大汗をかいたアラテシア様が椅子に崩れ座る、相当に疲れたようだ。
「最後に一つ、質問をいいでしょうか?」
奏さんがアラテシア様に向き直る、いつもより真剣な目だ。
「アラテシア様は、飛翔さんを害する事は無いと誓えますか?」
「うん……誓えるよ……僕はツバサ君を害さない、生涯にかけて誓うよ」
じっとアラテシア様を見つめる、奏さん。
「わかりました、アラテシア様を信じます。これからよろしくお願いいたしますね」
俺が空間収納から取り出したタオルでアラテシア様の汗を拭く奏さん。
「アラテシア様、お仲間となった上で確認をしたいのですが。アラテシア様の魔眼、その力を十全に知っているのは誰でしょうか?」
「えっと……君達5人と僕の専属メイドだけ。兄姉達やイブキ公爵を含む公爵家は本人の資質がわかる事だけにしているよ」
「それって、私達国の最重要機密を知った事になるんじゃ……」
「そうですよね……私達、何か壮大な事に巻き込まれた様な……」
「あはは……それは、ツバサ君の事を受け入れてたら付いて来る事だから!」
そう言って笑うアラテシア様。何と言うか二人には申し訳無い事をしてしまった……。
「まぁ、私も他三人に迷惑かけちゃうだろうし……」
「私はすでに多大な迷惑をかけてしまって……」
「いや、なんか俺がすべての原因みたいなんだけどさ……」
「それは無いですわ」
「それは無い」
「そんな訳ありません!」
「それは無いわね」
「それは絶対にないよ」
全員に断言される。
「そうは言われても……俺が引き起こしたり、選んだ選択でこうなってる訳だし」
「それだったら、私も最初に飛翔との契約を断れたんだし」
「私もですわ、飛翔さんに抱かれた事、妻として迎え入れてもらえた事。全て自分の選択ですわ」
「そうです、私もツバサさんとの再会や婚約は自分で望んだ事です、それに3年前から好きでしたし!」
「そうね、私は貰われちゃった側だけど断る事も突き放す事も出来たわ。でもツバサの事を受け入れたのは自分の意志よ」
「ツバサ君。君を想う人は多くいて、君が思うよりも強いんだよ。だから僕も沢山ある未来の中から、僕の未来を君に託す事にしたんだ」
「「「「「だから、飛翔さん(君)の思うがままに、未来に進んで下さい(ね)!」」」」」




