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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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第3話:裸の付き合い(男同士)

「——!?」


目の前でじっと見られる、アラテシア様みたいな魔眼の気配は感じないものの、どこか品定めされている気がして落ち着かない……。


「アドクレイド様! 流石にいきなり近すぎます!!」


「おぉ、すまんすまん! 突然が過ぎたな!」


(声がデカい……鼓膜がびりびりする……)


「時に貴殿、噂の英雄であるか?」


(どう返せばいいのだろう……一応ここは王城だ、アラテシア様の時の様なプライベートな場合とは違い、複数の騎士(貴族)が居る場で平民の俺が喋る許可を得てないで喋るとやっかまれるだろう)


「あー、王子……こちらの方は平民です、城内……公の場で行われる王族との対話は許可が無い限りは許されません」


「そうだったな、とは言っても面倒だ。おい、お前達この者を連れて湯殿へ行くぞ」


(!?)


「「「「「!?!?!?!?」」」」」


何言ってるんだこの人は! 普通、初対面かつ俺という不明な人物の身分が判明してないのに風呂に連れて行くなんて……。


「アドクレイド様! 流石にそれは不味いです!!」


(そりゃそうだ、平民でもやらないぞ!?)


「そうです、この者が本当に〝英雄〟かも不明なんですよ!」


(うんうん、もっと言ってくれ。正直この人正気じゃないよ!)


「もしかしたら暗殺者やもしれないですぞ!」


(ホントだよ! いや、暗殺者じゃないけどさ)


「だったら余計に好都合、風呂という場でならば武器も持ちえない」


「た、確かに……」


(いや、確かに……。じゃないよ!? ネファキュルなんて爪に仕込んでたんだから!)


第一王子(アドクレイド)様の言葉に頷く傍仕え、いやいや誰か疑いなさいな!


とは言っても今の時点で、発言を許可されてない俺は何も言えないし。


「と、いう事だ。では行くぞ!!」


「「「「「はっ!」」」」」


ガチムチな男達に持ち上げられ搬送される。なんだろう、子供の時に担いだお神輿ってこんな感じなんだな……。と、諦めながら連れて行かれた。


◇◆◇◆

それから、あれよあれよと連れて行かれ男衆によって脱がされ、身体検査をされ、湯殿に放り込まれた。


「おう、やっと来たか!!」


目の前に立つ筋骨隆々の第一王子(アドクレイド)様。


(運ばれている時からわかってたけど、デカい……)


俺よりも高い顔を見上げる、恐らく2m以上はあるだろうな。


「お、そうだったな。この場でなら自由に話すが良い。その為に連れてきたのだ」


「は、はい……」


流石に声量は抑え気味のである。風呂であの声量は反響して聞き取り辛いし有難い。


「うむ、それで今一度聞くぞ? お主はあの〝英雄〟か?」


「はい、そう呼ばれるのはお恥ずかしいですが。おっしゃる通りでございますアドクレイド様」


「ふむ、硬いな……もう少し気軽に喋るといい」


「いえ、流石に……」


「なに、ここは俺とお前しか居ない。そして俺は今全て脱ぎ捨てている、お前さんも〝身分〟を脱ぎ捨てて喋ってくれ」


そう言って掛け湯をして湯船に入る、恐らくそこまで裏表の無い人なのだろう……。


(色々と疑っちゃうけど、あまり悩んで待たせる方が失礼だよな……)


諦めつつ俺も掛け湯をして湯船に入る、するとアドクレイド様はご満悦の様だ。


「さて、英雄殿。まずは貴殿の名前を教えてくれ。いつまでも英雄殿だと嫌だろう?」


「わかりました、俺の名前はホウショウ、平民ですので家名などは付きません」


「そうか、確か極東の方で縁起のいい名前であると聞いているな」


「はい、吉兆を告げるおおとりとぶと書いて鳳翔ホウショウです」


「そうか。となると、ホウショウ殿は極東の生まれか?」


「はい、遠い祖先である我が国を建国した勇者の末裔です、分家の末子ばっしでしたので家名を捨てる代わりに、自由気ままに生きられました」


と、師匠が考えた俺の設定を伝える。


「そうかそうか、であれば貴殿の中から感じる、溢れんばかりの力も納得だな!!」


溢れんばかりの力……勇者の力の事か。さっきアラテシア様に開放してもらって、まだ慣れてないとはいえ、なんでわかるんだよ……。


「あはは! 気にするな、俺は単純に〝強い奴〟の事が勘でわかるんだよ。とは言っても潜在的な力を見るのはアラテシアの方が優れているからな! せいぜい俺がわかるのは武人としての強さだ!」


良かった……何かしらの魔法的な力じゃないみたいだ。


「だから、廊下で見かけた時にすぐわかったぞ。この溢れ出る力の持ち主は〝英雄殿〟だなと」


なんだろう、リオルと同じセンサーでも積んでるのか? 強者発見センサーみたいなの……。


「それに、ホウショウ殿は良い顔をしている。あの者達を任せて良かったと思えたよ」


「それは、召喚勇者の事ですか?」


「あぁ、逆賊討伐前に訓練を見たが、皆良い顔つきになったていた」


「ありがとうございます、皆が褒められると嬉しいです」


思わず褒められてしまい笑ってしまう、するとアドクレイド様がニヤリとする。


「ほう、それが本来のホウショウ殿の顔か……ますます気に入った!」


そう言っておおらかに笑う、流石に裸でバシバシとされると痛い。


「うむ、ホウショウ殿の人となりもわかったし。褒賞は変わらずで良さそうだな」


「褒賞……ですか……」


「あぁ、貴殿には貴族の位を授けようと思っていてな」


顎を指で擦りながら言う、ギルマスが以前言ってた通りどうやら爵位を授けられるようだ。


「おいおい、露骨に嫌そうな顔をするな。爵位と言っても領地の整理も終わってはおらぬからな、そう言うのが得意な弟の仕事が終わり次第だ」


「その、領地じゃなくて、他の物で済ませられないですか?」


領地なんてもらうのは性に合わないし、何より日本に帰還する為には邪魔である。


「他の物か……正直今回の件で戦費や損失するであろう税収の目算がかなり嵩んでいてな……。済ませられるならば金のかからない爵位で済ませたいと思っているのだ、恐らく今回の件で軽い飢饉が起きる場合もあると弟が睨んでいるのだ」


渋面作って本音を言うアドクレイド様、確かに今回の粛清の件は国内貴族の6割近くに及んでいる。一種の戦争とも言える状況である上、そうなってしまうと地方の税が不安定になる、結果的に減税等を行っても地方では食が賄いきれなくなる。


(となると、諸外国に対して穀物の買い付けを行う。そうなると金が必要という事か……)


「ほう、ホウショウ殿は政治に関しても理解があるのだな……」


「へっ? どういう事ですか?」


「何、今考え事をしていたであろう? その顔が弟や財務大臣、それにお父上が政務の際に悩む顔と非常によく似ていてな。政治の出来ない俺にはできない顔さ」


(それを俺に言っても良いのだろうか? まぁ、それがアドクレイド様の性分なんだろうな)


「兎も角、皆と話し合いになるが恐らくは爵位と土地だろう。それを断るとなるとどこぞの貴族の娘との結婚になるぞ?」


(えぇ……流石にこれ以上奥さんを増やすのは……)


「流石に、それは……俺には妻が3人居ますので……それに貴族の娘となると平民と一緒にされるのに耐えられない子が出て来ると思うのですが……」


「なんと、既に3人と結婚していたか……流石『英雄色を好む』と伝えられている訳だ!」


何でその言葉が伝わってるんだよ……。癪だけど、言ってる事がやってる事なので否定できないのが辛い所である。


「何とか、それ以外の方法は?」


「うーむ……そうなると一番手っ取り早いのは爵位だぞ? それかいっそ特別待遇で俺か王族の近衛になるか?」


流石にそれは……自由が無さ過ぎるので止めておきたい所だ、近衛となると皆の訓練からも外れるだろうし。


「それは……やめておきます。冒険者の様な、半月以上朝ゆっくりできる気楽な生活の方が俺には合ってますので……」


そう言うと、アドクレイド様は吹き出して笑い出す。


「そうかそうか! 近衛となれば朝は早いものな!」


「はい、力を買っていただけるのは嬉しいのですが……」


「合わないのであれば仕方ない。となるとやはり爵位が一番だな、悪い様にはしないさ」


「わかりました……どうにでもして下さい……」


王家の紐が付いちゃうけど。もっと強いであろう知らない貴族の嫁が来るよりマシだ。


(それに、嫌な貴族と当たれば三人が虐げられる事もあるし、それだけは避けたいからな)


「さて、一つの懸念も済んだ、後は存分に武について語ろうか!!」


(え? まだこの人出ないつもりなの? ゆで上がりそうなんだけど……)


それからは必死に魔法でのぼせない様にするのだった。


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― 新着の感想 ―
「褒賞は変わらずで良さそうだな」 ホウショウに褒賞ってか!…スミマセン
>知らない貴族の嫁が来るよりマシだ。 知ってる貴族の嫁なら良いのか、フラグかな?
ホウショウに褒賞を
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