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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
2章

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第2話:謝罪

西条さんとの取引から翌日、相変わらず皆は真面目に取り組んでいてくれる。


「皆! 頑張るよ!!」


「そうそう!!」


「ケーキの為!!」


いや、女子達が物凄い気合入ってる。どうやら持ち帰ったケーキを食べた皆が頑張れば甘いものを食べられると奮起したらしい、そして食の箍が外れドカ食いし過ぎた結果カロリーを気にしてる様だ。


(奏さんと恵さんも、朝食べてたケーキの量は相当に少なかったもんな)


ちなみに、持ち帰ったケーキを二人に見てもらってわかったのだが。持ち帰り用のケーキは日本で言うパウンドケーキで保存を効かせる為にブランデーと砂糖を溶かしたシロップに漬けてるそうで、なので二人はカロリー爆弾と戦慄していた。


――ゴーン!――ゴーン!


「はい、終了! 今日は終了!」


終了の鐘が鳴っていても走るクラスメイト達に向けて声を掛ける。


「先生! もう少しだけ!!」


「あとちょっとでカロリーが!!」


「10分……いや、20分でいいの!!」


凄く必死な女子達。気持ちはわからないでも無いけど、無理して明日の訓練に支障が出ても困る。


「駄目だ、ケーキを食べ過ぎたとはいえ。これ以上やると回復が追い付かない、それに出会った頃より皆痩せてきてるからな?」


男子に目配せをする、これ以上はと察したのか男子も大きく頷く。


「そうそう、皆スタイルよくなってるし!」


「痩せてる痩せてる!」


「ポッチャリ好きの俺が守備範囲外になる位だから大丈夫!!!」


最後の男子なんかは泣きながら伝えている。


結局、ちょっと上機嫌になった女子達と、明日を想像して悲しみに暮れている男子達に分かれ皆戻って行った。


◇◆◇◆

「やあやあ、よく来たね! 座って座って!」


喪に服しているのか全身の黒の装いのアラテシア様に言われ席に座らせられる。でも、なんかいつもより上機嫌である。


「あ、アラテシア様? 今は喪に服してるんじゃ?」


「うん、喪に服してるけどね、それよりもツバサ君の実力が認められてきたのが嬉しいんだ!」


愛らしい微笑みを浮かべるアラテシア様、男と知らなきゃ世の男子が惚れてしまいそうだ。


「そ、そうですか……。私としては、あまり目立ちたくないと思ってるのですが……」


「うーん、でも。ツバサ君がそうなるのは確定事項だったからねぇ……たとえ僕と交わらない未来でも、凄く有名になってたと思うよ」


顎に手を当て可愛らしくうんうんと唸る、未来が見える彼が言うのであれば確定事項なのだろう。


「でも、ここまで未来が変化するとは思ってなかったよ……無事でよかった……」


「無事でって事は駄目な場合もあったんですね……」


「うん、だから二人を君の元に送ったけど、上手く行ったようで良かったよ」


「そういえば、アラテシア様。奏さん《ネモフィラ》と恵さん《ミモザ》の二人、どうやって俺に巡り合わせたんですか?」


前々から疑問に思ってたんだ。あの二人が言うにはアラテシア様が召喚現場に居た事だけは聞いてるけど。直接話したりはしてないようだったし。


「そ、それはねぇ~」


目を逸らす(眼帯着用)アラテシア様。


「もしかして、アラテシア様が二人を娼館送りにしたんですか?」


もしそうだったら、軽くキレてしまいそうだ。


「えっとぉ……二人を送るように指示は出してない……。でも、財務大臣を務める王族の1人に二人が無能力と偽って伝えたんだ。あの人の事だから、殺すなんて無駄な事はしないけど、売り飛ばすのは〝視えていた〟事は認めます……ごめんなさい」


素直に頭を下げられる、見た目が子供故に毒気が抜けてしまう。


「で、でも! 娼館で出会うのは分岐の一つにあったけど、殆どの出会い方が娼館に行く前に街中で救出したり、犯罪者に絡まれてる所だったんだ!」


そうは言われても、俺はその未来が見えないからなぁ……。でも、娼館送りじゃ無きゃ俺があの道を通る事も無かったし。そうでなくても、最高級娼館アラビアンナイトに新人が入れば俺が名づけの為に呼ばれる事は確定だ。


(そう考えると、他の王族に怪しまれず二人を俺の元に送り、接触を図るには最善手だったのか)


「とはいえ、二人は俺と望まぬ事をした訳だし。いずれ顔を合わせた時にでも謝ってくれればいいかと思います」


「わかった、その時は殴られる覚悟で土下座するよ」


「一応二人には今の事を伝えても?」


「構わないよ、再度会った時に謝罪はするけど、僕が謝っていた事も伝えてもらえると嬉しい」


「わかりました。それと、確認したいんですが。二人を俺の元に送ったのは俺がピンチになると踏んでですか?」


「うん、二人はあの中でもとてつもない力を持ってるからね。あの二人ならツバサ君の力になれると信じてたんだ」


確かに、ネファキュルとの戦いは、奏さんが居なかったら俺は死んでただろう。リオルとの戦いやタルーセルとの戦いも、恵さんが居なかったら結末は酷いものになったと確信できる。


「そうですか。それなら俺はアラテシア様にも感謝しないといけないですね……」


頭を下げる、アラテシア様のした事は俺の為に二人の運命を捻じ曲げたとても酷いことだ、だから俺も二人に謝る必要があるという事だ。


「そして、アラテシア様と一緒に二人に謝ります。殴られる時は一緒ですね」


(まぁ、殴られるのは二人の親御さんにだろうなぁ……、アラテシア様は子供だから見逃してもらえるだろうけど。俺は生きて帰れればいいなぁ……)


◇◆◇◆

それからクラスメイトの成長具合を相談し合ってから幾つか頼みごとをしてアラテシア様との話を終える。


「それではアラテシア様、失礼いたします」


部屋を出て外へ向かう、面会用の部屋は王城の中ほどにあるので意外と時間がかかる。


(なんか見てる奴が多いな……)


こういった王家の人と外の人が同時に使う場所は人が居ないようで、見えない警備をしている。普段は気にして無いのだが、今日に限って人が多いのでどうしても気になる。


(曲がり角の向こうから、鎧の音? 急いでる風では無いのだが一応避けておこう)


王城で鎧を着けている人というのは限られる、騎士か近衛兵のどちらかだ、稀に伝令兵も居るのだがその場合は走っているだろうから除外だな。


壁に背を付け待っていると、汚れているが豪奢な鎧を着た大柄な男性が数名の騎士と共に歩いて来る。


「アドクレイド様! せめて旅塵を落としてから向かって下さい!!」


「はっはっは! すまないすまない! だが折角英雄殿が来られているのだろう? 良い機会だ、ここで会わねば何時になるかわかったものじゃないからな!!」


(大きくてよく通る声だ、というか今〝アドクレイド〟って言ったよな?)


アドクレイド=アークフォート、この国の第一王子であり王位継承権第一位、国王亡き今、実質的な国王である。


(それはそうと、急いで跪いておかないと!)


戦場で過ごす事が多い為か、ちょっとした無礼には悪い評判を聞かない第一王子だが、周りの者はうるさいだろうし、何より目を付けられるのは嫌だ。


慌てて跪く、流石に距離あるし、曲がって来た直後だろうから見られてない筈。


「ん? 見かけない顔だな?」


(えぇ……この位置だと顔見えない筈なんだけど……。というか、王子がどたどたと走って来るのかい!!)


「そこの、頭を下げている冒険者よ、顔を上げてくれ」


頭の上から声がかかる。その声に顔を上げると、目の前に第一王子の顔がそこにあった。


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― 新着の感想 ―
更新分にストックがないのか、誤字が目立つようになってきています。 忙しいとは思いますし、更新を待っている方も大勢いるかとは思いますが、今一度ご自分で誤字脱字を確認されたほうがよろしいと思います。 と…
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