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【第13回ネット小説大賞・金賞】異世界に落ちて10年、高校時代のクラスメイト達が勇者召喚されました。  作者: ふぇありす
1章

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第44話:魔法訓練と殺気

――ピッ!——ピッ!


俺が鳴らす笛の音で、クラスメイトが走りながら魔法を撃つ。


「はぁぁぁ!」


それと同時に黒木君やその他属性の子達の攻撃を受けたり、往なしていく。


「そろそろだな。はい、終了!」


砂時計の砂が落ち切った所を確認して声を上げる。魔法を撃っていた皆が肩で息を吐く。


「皆お疲れ様、魔法訓練組は身体強化を解かないように、いつでも魔法が撃てるように。近接組は訓練場を全力で1周。手を抜いたら全力で訓練場5周だぞ!」


「「「「「ひぃぃぃぃぃ!?」」」」」


青い顔をする皆、悲鳴を上げてるけどここで緩められると困るので、厳しくしていく。


「戦闘は終わってからが一番重要だ。知能がある獣や魔物は疲弊したとこを狙って来る。だから少なくとも次の戦闘が起きないと判断できるまで気を緩めるな!」


一喝して動かせる、討伐訓練まで後少し。出来るだけ詰め込まないと。


(命を奪う事に慣れてない皆だからなぁ……)


この世界の人はほぼ全員、魔物や害獣の命を奪う事には〝慣れている〟から躊躇いは無い、だけど〝慣れてない〟皆だから何が起きるかわからない。


(躊躇って大きな傷を受けてしまったり、死んでしまうのは絶対に駄目だ。だから、教えれるだけ教え、叩き込んで、少しでも不測の事態に備えておかないとな……)


そして丁度前衛組が走り終え、俺の元に辿り着く。


「よし、戦闘終了。皆、身体強化を解いて休んで良いぞ」


皆に水を配りながら調子を見ていく、魔力切れも起こさなくなったので昼休憩を挟めば午後も十分訓練を行えるだろう。


「さて、疲れてるだろうが俺の話を聞いてくれ、三日後君達は初の討伐訓練に出る。とは言っても、出てくる魔物は今の君達ならば1撃で倒せるだろう。俺も色々な冒険者を受け持ってきたが君達は特に優秀だ、一からたったひと月半でここまでなるとは思っても無かった」


俺の言葉に嬉しそうな顔をするクラスメイト達、誰しも褒められて嫌な人は居ない。


「だけど君達は〝実戦〟をまだ体験してない。どんなに鍛えててもつまらないことで命を失ってしまう、それこそ次の討伐訓練で俺が死ぬこともありえるからね。皆が無事に帰れるように、こうして少し厳しくしてるんだ」


「これで、少しなんですね……」


苦笑いしている西条さん、彼女も最近色々と質問してくるようになった子の一人だ。


「皆の上達具合ギリギリに合わせてるからさ。それに、超えられないとは思ってないからね。それじゃあ、お昼休憩をしてから午後の訓練だ。昨日と同じ時間に迎えに行くからしっかり寝とく事!」


体内の魔力は食後に睡眠をする事が一番早く回復するのでこうしてお昼の休憩はしっかり取る事にしているのだ、冒険者達も基本そのルーティンで回復を回している。


「「「「「はーい……」」」」」


とぼとぼと歩いて行くクラスメイト達、少し疲れ気味みたいだし訓練開始を遅らせるか……。


伝令役の女性騎士と男性騎士に訓練時間を遅くする事を伝え、俺は二人に向けた手紙を書いた後に城外へ向かう。


「居るかなぁ……あっ、居た」


探していたのは少しみすぼらしい恰好をした少年だ、彼を手招きして呼び寄せる。


「君に頼みごとがある、時間はあるかい?」


この少年はいわゆる孤児というやつで、基本は孤児院での生活をしているのだが。ある一定の年齢になると街に出て色んな雑務を受け、お金を稼いでいる。


「はい、ありますが……僕は何をすれば?」


「手紙の運搬だ、これをギルドの受付嬢に手渡して欲しい」


手紙と冒険者用の小切手用紙を渡す、金額と確認用の魔力印も押してある。


「手紙とこれが君の駄賃だ、一緒に受付嬢に渡してくれればお金が貰えるからね」


「こんなに……わかりました、すぐに届けます!」


大事に仕舞い込んだ手紙を持って人ごみに消えて行った。銀貨5枚だしちゃんと届けてくれるだろう。


「高いけど仕方ない、慈善事業の一環だしな……。っと時間が無さそうだ!」


昼の鐘が鳴る、今日はお願いしていた騎士団の治療術師に出張ってもらわないといけないからな。


騎士団が運営している救護院の方へ足を向けた。


◇◆◇◆

「さて、皆よく眠れたかい?」


眠そうに目を擦りながらクラスメイトが並ぶ、血色は良いし休憩も十分そうだ。


「さてそれじゃあ、午後一番の訓練は〝俺と戦う事だ〟」


「「「「「へっ?」」」」」


「聞いて無かったか? もう一度言うぞ、午後一番の訓練は〝俺と戦う事だ〟」


「せ、先生……それって、一人一人ですか?」


「いや、違うよ。5人一組で組んでもらう、でも二人余るから二組は6人で組んでもらう。それと、振り分けはこっちで済ませた。使う武器の得物の長さや攻撃魔法の訓練を見て振り分けた」


名前を書いた紙を見せる、こっちの言葉だけど皆しっかり読めている様だ。


「それと、ルールは俺一人対君達一組、勝敗判定は今から決める枠の外に出たり、戦闘不能になったら終了。ただ、組み付くのは禁止、魔法を使う以上組み付くと味方の魔法に巻き込まれる可能性があるからね。一応回復術師が居るから大抵の怪我はどうにかなるけど危険な事はしない様に」


皆が頷く、これで説明は終わりかな?


「それじゃあ、組に分かれて作戦会議をしてくれ。何かわからない事があれば聞いてくれ」


俺の言葉に皆、表情が硬くなりながら頷いた。


◇◆◇◆

それから準備を終えた俺達と、一番最初のグループが対峙する。


「刃は落としてあるけど、当たると痛いからね。それと、魔法組は殺す勢いで魔法を使ってね、簡単には死なないからさ!」


「「「えっ!?」」」


「それじゃあ、開始!」


開始の号令と同時にちょっぴり殺気を放つ、魔物や獣は殺す気で来るからリアル感を出さないと。その殺気に当てられたのか、二人の前衛が走って来る。


「はぁ!」「すみません!」


迷いありまくりでブレブレな二人の攻撃をナイフで弾く、すかさず二人に蹴りを入れ地面に転がす、身に着けた皮鎧の硬さが足に伝わる。


「がぁ!?」「ぎゅひぃ!?」


初めての痛みだろう、呻き声とむせる音がしている。


「後は、魔法使いだけだな」


ゆっくりと魔法使いの三人に向き直り歩んでいく。


「ひぃ!?」「たたた、助け……」「……!!」


三人が散り散りに逃げていく、腰を抜かした一人の前に立ちナイフを振り上げ……柄で頭を小突く。


「ひゃぅ……」


あ、気絶した。後の二人も枠の中か飛び出して行ってしまった。


「やり過ぎた……かな?」


とりあえず気絶しちゃった河北さんを抱え上げ回復術師の元へ行き容態を見てもらう。その間に二人の治療を終えた、もう一人の回復術師に声をかけられた。


「あ、あの……ホウショウ殿……」


「はい、何か?」


「ひっ、い、いえ、その!」


しどろもどろだ、なんだろう?


「あ、あの! 殺気をもう少し抑えていただきますと! 魔物でもそこまで恐ろしい殺気を放つ奴は滅多に居ません!!」


ん? 俺はちょっぴりしか出して無いけど……。


「待って。そんなに強かった?」


「は、はい……以前見たオーガジェネラルよりも……」


目も合わせてくれないでごにょごにょと尻すぼみになる、遠征にもついて行く程のベテラン騎士団員が震えるくらいの殺気を出してたのか……。周囲を見るとクラスメイトは当然として、訓練を見に来ていた騎士や訓練していた騎士もあり得ないものを見るような目でこちらを見ていた。


(つまり、やらかしちまった訳だ……)


「そ、そうか。すまなかった……」


殺気を納めて、申し訳ない気持ちで皆の元へ足を向かわせるのだった。


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